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定期的に勃発する値下げシール論争。


漠然と思い描いた資産8桁円の生活と現実。

 先日、過激な見出しで値下げシール論争が勃発したのが話題となったが、過去に別の掲示板で類似の文章が投稿されているため、単なる愉快犯の可能性すらある。

 私が真っ先に気になった部分は、商売の基本である簿記を学んだ人間であれば「値引き」と「値下げ」の違いが分かるはずで、「値引き」シールと書き込んだ時点で、どれ位の解像度を持ちながらスーパーマーケットで働いているのかは察しがつく。

 そのため、匿名掲示板で画面の向こう側で書き込んだ、見知らぬ誰かに標的を定めて、袋叩きにしたところで何も生まないどころか、投稿者の思うツボだろうと思いながら、スルーするのが正解だろう。

 とはいえ、値下げをハイエナの如く狙う客vs粘着されたくないが故に嫌悪する店員といった構図の論争は定期的に勃発する。

 私は見出しの画像(人生史上最大の91%オフ)や、上記の関連記事にもあるように、値下げシールは大好物で、スーパーごとの、値下げされる時間帯を、生活圏内は一通り把握している。

 高卒で社会に出て、手取り13万で絶句していた頃は、保有資産が8桁円くらいあれば、成○石井とか紀○国屋で、値段なんて気にすることなく、好きなものを好きなだけ買える生活をイメージしていた。

 しかし、いざ20代で保有資産がその域に達してみると、相変わらずディスカウントストア通いで、買い物カゴも値下げシールにまみれている。

 高級路線スーパーマーケットはおろか、コンビニですら、まるでボッタクリのデパートや〜!と心の中で嘆いているのだから、手前味噌ではあるが、しみったれ具合は天下一品である。

日本人の察しと思いやり精神はどこへ?

 とはいえ、私も社会に出てある意味、接客業とも言える駅係員を経験しており、エッセンシャルワーカー全般にありがちな、相手にさせられる客層を鑑みると、低賃金で報われない無念さに同情する慈悲深さは、否応なしに養われた。

 そのため最低限、迷惑客だと相手に思われないような振る舞いをしつつ、エッセンシャルワーカーに対して、ロボット的な何かではなく、ひとりの人間として受け答えをする、善良な人格者感を醸し出せるよう努めているが、度が過ぎると胡散臭くなるので塩梅が難しい。

 待つのが嫌いな性分も幸いしているが、シール待ちをしたり、従業員に粘着することはなく、ハイエナが群がっているような、ピークを過ぎた頃合いを見計らって入店して、すまし顔でささっとカゴに入れる。

 間違いなく、取り合いになるような弁当や惣菜は残っておらず、売れ残り中の売れ残りだとは思うが、そもそも人気商品なら値下げ前に売り切っており、値下げされる時点で売れ残りである。

 だから、その中で少しでも自分が欲しいものを買おうとして、自分さえ良ければと傍若無人な行動を取り続ければ、店側が何かしら対策を考えるようになり、長期的には自分の首を絞めるだけではないだろうか。

 エヴァはロボットじゃない(設定が人造人間)厨が蔓延る中、監督がロボットアニメと公言し、信者を爆死させたことで有名なエヴァンゲリオンの作中で、個人的に印象的なシーンがある。

 アスカが、セキュリティガバガバな和室を見て、日本人は危機感が足りていないと酷評したのに対して、ミサトさんは「日本人の信条は、察しと思いやりだからよ。」と返した。

 昨今の無敵の人事件や、強盗事件が起きるたびに、一部のコメンテーターが日本のセキュリティは性善説に基づいていて、本気で犯罪する人を止められる設計ではないと指摘している。

 欧米の個人主義が浸透したことで、良くも悪くもムラ社会的な察しと思いやり精神が、日本人から失われている現状が、まわりまわって値下げシール論争に発展している側面があるのかも知れない。

自慢のモノ、性質が東西で異なる?

 もうひとつ、別の視点を加えると、値下げシールが貼られるのを待つ行為を「卑しい」と考えるのは、ステレオタイプの域を出ないが、関東寄りの考え方のように思える。

 私はかつてエセ都民だったから、これでも一応、東京がどんな場所かを分かっている気でいるが、関東人は大枚叩いて買ったモノを自慢しがちである。

 首都圏では出来るだけ高くて良いモノを所有することで、こんな高いモノを買えるのは、それだけの経済力がある証。すなわち購入金額の高さこそ、ステータスの指標なのだろう。

 それに対して、商人の街、大阪を中心とする関西人は、高くて良いは当たり前。良いものをいかに安く買うかが、ウデの見せ所とでも言わんばかりに、買い物でいくらトクをした自慢が多いように感じる。

 ブランドものなどで高そうに見えるけど、実は半値で買っているとか、良いモノを安く買えたのは、それだけ買い物上手である証。つまり、値下げ額の大きさこそ、ステータスの指標なのだろう。

 関東人からすれば、セール品だなんて恥ずかしくて、口が裂けても言えない感覚の人が未だに根強く、多数派のように思う。これが定価で買うことが美徳である風潮を生み出す元凶であり、商人気質で買い物上手自慢をしがちな私は、エセ都民時代に肩身が狭かった。

 このiPhone、中古品で3割くらい安く買うてんねんけど、購入時に保証期間が半年残ってたんや。ほんで、運良く壊れて交換になって、自分でSIMロック解除したから、実質SIMフリーのサラピンやねん。バックマーケットおすすめやで。

 m1チップのMacBook Airも、為替がブワー上がる前に学割で買うてるから、4万ちょっと得してんねん。しかもキャンペーンで1.8万のギフトまで付いて来よったから、実質6万円引きみたいなもんや。

 この手の話を「ええやん」と思うか、「卑しい」と思うか。価値観は人それぞれあって良いと思うが、どちらの方が世界が平和になりそうかを考えれば、自ずと値下げに対するマインドがどうあるべきか、答えが出るのではないだろうか。


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