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アリストテレス〜現代社会哲学編⑤〜

今回はプラトンの弟子アリストテレスについて学びます。

1、アリストテレスの人物像

マケドニア王の侍医の子として生ました。学園リュケイオンを開き、研究領域は数学、天文学など多岐にわたり、万学の祖とされました。現実主義的な思想を持っています。

2、魂

今回は『ニコマコス倫理学』を使っていきたいと思います。

魂については外部の所論においても、ある点では満足な仕方で論ぜられているがゆえに、われわれがこれを用いるべきである。すなわち、魂のある部分は無理的な(理屈を欠いた)部分であり、ある部分は有理的な(理屈で説明できる)部分である。卓越性も、魂以上のような区分に基づいて区別される。すなわち、われわれは、卓越性のうち若干のものを「知性的な卓越性」と呼び、若干のものを「倫理的な卓越性」と呼ぶ。知恵とか思慮とかは知性的な卓越性に、寛容とか節制とかは倫理的な卓越性に属すのである。

プラトンがイデア論による理想主義を唱えたのに対して、アリストテレスは現実主義を唱えます。

アリストテレスは、現実の存在には、「形相(エイドス)」と「質料(ヒュレー)」があり、実現されるべき「形相」は「質料」に内在すると主張しました。「形相」というのは、概念・本質のことで、「質料」というのは、素材、材料のことです。

そして、倫理的な卓越性は中庸、つまり過不足のない状態で形成されるとして、徳を以下の2つに分類しました。

知性的徳
教育で身につく。
習慣的徳
正しい行為の繰り返しで身につく。

3、正義と友愛

かくして卓越性には二通りが区別され、知性的卓越性と知性的卓越性とがすなわちそれであるが、知性的卓越性はその発生も成長も大部分は教示に負うものであり、まさしくこのゆえに経験と歳月とに期待する必要があるのである。これに対して、倫理的卓越性は習慣づけに基づいて生ずる。習慣・習慣づけという言葉から少し転化した倫理的という名称を得ている所以である。

アリストテレスはとくに、正義と友愛を重視しました。基本的に、アリストテレスは正義より友愛のほうが重要だと考えていました。正義と友愛について以下にまとめます。

友愛(フィリア)…市民同士の結びつき(同胞意識、愛国心など)
正義
❶全体的正義…法を守る。
❷部分的正義
・配分的正義…働きに応じた報酬。
・調整的正義…利害や得失の均一化。

そして、アリストテレスは「人間はポリス的生活を営む動物」つまり政治を行う動物だと考えました。

4、人間の生活

アリストテレスは人間の生活を以下の3つに分けました。

享楽的生活
快楽を求める生活。(遊びたい)
政治的生活
名誉を求める生活。(偉くなりたい)
観想的生活
知恵を求める生活。(知りたい)

❸の「観想」をテオーリアといい、漢字を当てると「哲」になります。そして、この観想的生活こそ、人間にとっての幸福な、最高善の生活としたのです。

そして、これにより実現されるのが知性的徳、そこから導かれるのが倫理的徳です。

まとめ

ソクラテス、プラトンらは知行合一、つまり良い行為は知恵によると考え、理想主義を主張したのに対して、アリストテレスは良い行為は習慣によると考え、現実主義を主張しました。

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記事の内容を簡潔にまとめています。


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