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Re-Vive 7 〜Hollowing〜

前回は、Re-Vive7で最初に重視している「背骨のコントロール:Wave」について書きました。今回は、もう少し広い意味での「体幹機能の強化」について書いていきたいと思います。

体幹が強いって?

ここで、よく表現される「体幹が強い」という表現が何を表すのか、について考えてみたいと思います。というのも、一般的には、体幹がぶれない、動かない、といった印象が「体幹を固める能力」という印象と重なって、トレーニング場面においても「固める練習」がその中心になることが多いためです。最初にお伝えしたいこととして、運動中の「体軸がぶれない」のは、「固める能力が高い」ということとは違う、ということです。イメージとしては、レベルの高いバレリーナはバレエの活動中に体軸がまったくと言っていいほどぶれません。これは、四肢の運動と重心位置が安定する「制御」を、刻一刻と変化する動きの中で見事に成し遂げているからにほかなりません。決して体幹を固めて動いているわけではない、ということです。

Kibler(2006)の論文における「Core Stability」の定義を要約すると、次のようになります。

〜統合されたヒトの活動において、末端のセグメントに力と動きを適切な形で産生、伝達するために骨盤の上にある体幹の位置と動きを制御する能力〜

つまり、安定は「制御する能力」が達成するものです。

この制御する能力を高める重要性を、コリジョンスポーツや格闘技をやってくる中で非常に強く感じました。前回の記事にも書きましたが、ヒトが移動する、ということは、四肢を用いて頭・骨盤・体幹部といった重たいセグメントを目的の方向へ運ぶ、ということです。支えるポイント、動かすポイントは経時的に変化し、その都度体幹は違った筋肉の活動を求められるわけです。これをいかに上手に(効率よく経済的に)制御するか。こういった視点のトレーニングが欠かせないと思うわけです。

腰痛で苦しむ選手にDraw-inやHollowing、Bracingなど様々な方法で深部体幹筋群(一般的にはインナーマッスルとかローカルマッスルとか言われるやつです)に収縮を促す練習があります。それ自体は、「収縮する」ということを忘れた筋肉に、自分が働かなきゃいけない、ということを思い出させるのに有効だと思います。しかし、それだけで活動中、どのタイミングで、どの位置で、どの程度収縮すればよいのか、は思い出してもらえないのです。だから、トレーナーは「どんな場面のどの局面でどこが働いていないのか、またはどんな代償を用いているのか」を見つけ出し、その「場面」において起きている不活動・代償を消していくアプローチができる必要があると思うわけです。

丹田について

もう一つ、これは少し抽象度の高いお話で、「丹田」と表現される身体部位・操作の実現が非常に重要です。この「丹田」は何を指すのか、追い求めている途中です。少なくとも、いま現段階で私の丹田が出来上がっているか、と言われると甚だ自信はありません。ですが、これは確実にあります。武道の世界ではよく「丹田に力を込めて」という表現がなされます。事実、むかしから日本の武術・武道の書籍には「丹田」の表現が多く使われ、ここに力を込める練習がなされます。ただしこれは、「方法論」が確立しておらず、呼吸法や意識によって作り出される概念的なものを表すことが多いように感じています。

丹田の出来上がっている状況は下半身が安定して、上半身の力が抜けている状態(下実上虚)といわれますが、これはどのように評価するのでしょうか。。白鵬関の四股をみれば、下半身と下腹部がどっしりと安定していることはわかります。その白鵬関は「相撲という競技の持つ重さ(ここでは質量を表現していました)、これは他の競技にはないものです」と話していたことがあります。システマを習っていたとき、先生と胸を押し合う練習がありました。始めてから3年間、一回も先生を押すことはできませんでした。その時、なんて下腹部が重いんだ。。と感じたことがあります。あの重さ、実際なんなんだろう。これは今でも疑問です。

丹田の指す部位は「へそ下3寸」(1寸は3.03cm)

この部分には何があるのか。筋で言えば深層に大腰筋・腹横筋下部・内腹斜筋横走線維があり、表層には外腹斜筋・腹直筋が走行しています。この筋肉を鍛えれば良いの?なんかそれも違う感じがしているわけです。

ただ、骨盤や脊椎をコントロールする上でこれらの筋群の働きは大変重要なことを理学療法士として心得ています。特に、下部体幹筋群の働き。大腰筋・腹横筋・内腹斜筋を中心とした下部体幹の働きがパフォーマンスと大きく関係していることを、自身がトレーニングや格闘技をやるなかで嫌というほど自覚してきました。

だからこの記事では、理学療法士として進化・発達からみた体幹機能と、もっと抽象的な「丹田の強さ」みたいなものについて、どういう段階を踏んで、どうやって鍛えていくことができるか、そのことを伝えていきたいと思います。ここがうまく使えるようになると、確実にパフォーマンスが変わります。それは、事実です。

Re-Viveでは体幹の制御能力を挙げていくトレーニングを「Hollowing」として扱い、何層ものレイヤーでコアに対して負荷をかけています。

プログラム構築について

まず、トレーニングプログラムを構築するにあたって、難易度、トレーニングを進める順番を設定しておくと良いと思います。

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