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身体の開きが肩や肘の痛みにつながる理由

こんにちは。
Re-Viveの平山です。

前回は野球における「肘下がり」について記事を書きました。

今回は、肘下がりと同じくらい野球をしていると耳にすることが多い、
「身体の開きが早い」という現象について書いていきたいと思います。

Youtubeで見たい方はこちらからどうぞ。

一般的に「身体の開きが早い投球動作」が良くない、とされている理由の1つは、身体の開きが早くなってしまうと、上腕を肩甲骨に対して後方に引きすぎてしまう現象が生じやすくなるからです。


上腕と肩甲骨の関係について、まずはゼロポジションから簡単に説明します。

肩甲骨の関節面が向いている方向(肩甲骨軸)と上腕骨軸の方向が一致しているポジションを、ゼロポジションといいます。(図1)

図1

                 図1

肩甲骨は、安静立位において両肩を結んだライン(図1、青の点線)よりもやや前方を向いており、肩甲骨が動けば、ゼロポジションの向きも変わってきます。

投球動作で行われるような肩関節の外転外旋運動時(ボールリリース前のトップポジションのフェーズ)にゼロポジションが取れていないと(図2)、肩の前方では回旋・伸張ストレスが、後方では圧縮ストレスがかかり、軟部組織が関節内に挟み込まれることで炎症や組織損傷が起こるとされています(spiegl, 2014)

図2

                 図2

実際、肩や肘に痛みのないプロ野球選手の投球フォームを解析した研究では、肩の最大外旋時に上腕骨はゼロポジションに位置していたと報告されています。
(Konda, 2015)


難しい言葉が並んでしまいましたが、身体の開きが早くなると腕だけが後ろに残されるような形になり、肩にかかる負担が大きくなってしまうということです。


それを踏まえて、ダルビッシュ投手の最大外旋時の画像を見てみましょう。

ダルビッシュ

https://www.daily.co.jp/mlb/2020/09/04/0013664920.shtml から引用

たしかにゼロポジションは保たれているようです。
このように、最大外旋時に肩甲骨と上腕骨が直線上に並んでいると肩にかかるストレスも小さくなります。

ここまでは肩甲骨と上腕骨の位置関係について考えてきましたが、
続いては身体の開きのタイミングについて考えてみましょう。

身体の開きに関する研究では、体幹の回旋が始まるタイミングについて検討しているものがありますのでいくつか紹介します。

体幹の回旋開始が遅いほど肘にかかる外反ストレスが減少する(Aguinaldo, 2009)、競技レベルが上がるほど体幹の回旋が始まるタイミングは遅くなる(Aguinaldo, 2007)などの報告があり、身体の開きのタイミングは怪我とパフォーマンスの両方に関係していることが示唆されています。


身体の開きという動作は胸をねじる、胸椎の回旋という運動が必要になります。

この胸椎の回旋が始まるタイミングが遅いほど肘にかかるストレスが小さくなることは前述しました。

投球動作は選手によって多様ですが、脚の踏み出しから始まることは共通し、その後骨盤、体幹の順で加速していくパターンが最も多いと言われています。(Scarborough et al, 2020)

つまり身体の開きを抑えるためには、脚を踏み出していくときに骨盤が回旋しないようにするための股関節の可動域(外転外旋)と、骨盤が回旋し始めてから胸椎の回旋が開始するまでのタイムラグを作るための、胸椎の回旋可動域が必要になります。

そこで今回は胸のねじりと股関節のストレッチを1つずつ紹介します。

まずは胸をねじるストレッチです。
四つ這いから両手を前に出し、右手を左の脇の下から通して、顔も左を向きます。(図3)

図3

                  図3

そこから左肘を曲げて手をついて地面を押していきます。(図4)

図4

                 図4

その状態でゆっくりと深呼吸を3回行いましょう。

その後、反対も同様に行います。


続いて、股関節のストレッチです。
今回は股関節の滑らかな動きを作るために重要な、おしりのストレッチを紹介します。


まずは膝を曲げて、脚を7の字のようにして前に出します。(図5)

図5

                 図5

その状態から背骨はまっすぐにしたまま少しずつ倒れていきます。(図6)

図6

                 図6

そこで前脚の外側からおしりが伸びている感覚があればうまくできています。(図7斜線部)

図7

                 図7

こちらも、おしりが伸びていることを感じながら深呼吸を3回ずつ、
左右ともに行ってください。

この2つはピッチャーにとって基礎となる重要なストレッチですので、
ぜひ習慣的に取り組んでいただければと思います。


2回にわたって投球障害の中でも問題になりやすい、
「肘下がり」と「身体の開き」について解説してきました。

どうしても「肘下がり」や「身体の開き」といった見た目でわかりやすい現象だけが目立ってしまいますが、そのような現象を誘発する原因に適切にアプローチすることで、問題となる投球フォームの修正につなげていきたいところです。


投球障害は野球をしている多くの選手が悩んでいる問題であり、
野球を辞めてしまう原因の1つでもあります。

このような障害が原因で、
好きで始めたはずの野球をやめてしまう選手が1人でも少なくなるように、
これからも発信を続けていきたいと思います。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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