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映画『男はつらいよ』

若い時はこの映画、観ても全然面白くなかった。

なぜこのおじさんは、いつも女性にふられてしまうのだろうかとか、なぜ、全然働かずに妹のさくらやおじちゃんたちに迷惑ばかりかけているのに許されるんだろうとか、考えていました。

でも、10年くらい前から、その印象はがらりと変わりました。
毎回、観るたびに泣いちゃうんです。

なぜか?

年齢を重ねると、人は完全ではないことや、どうしても変えられないこと、努力しても報われないことがたくさんあるってことがわかってきて、それを寅さんが代わりに見せてくれているのではなんて思うのです。

人間、欠点だらけでいいんだとか、だからこそ愛されるんだ、他人に許してもらえるんだ、いや、人を自分を許してあげようってね。

寅さんは自分はダメダメなのに、悩み苦しんでいる赤の他人をほっておけなくって奮闘しちゃう。それが、好きになった女性だと、力が数倍はいっちゃうのも毎度のこと。
ほとんどピエロな寅さんで、最後は、涙と笑いで終わるのが常なんだけど、もうもう胸にしみるんですよねー。彼の悲しさとかおかしさとか苦しさとか。

幼いころ、母に捨てられて愛されずに育った寅さん。
だから彼は、弱い人の気持ちがわかるんだろなって思う。

私も同じような家庭環境だったから、彼の苦しみが痛いほどわかっちゃう。

渥美清さんが亡くなったから新作は観られない。
でも、時々、寂しくなったり落ち込んだりすると彼に逢いたくなるんですよね。
もうすっかりセリフもストーリーも覚えてしまったけれど、また、観なおしちゃう今日この頃。

戦争がおきたり、コロナ禍だったり、無差別殺戮が増えている今の世界を観て、寅さんが生きていたらなんて言うんでしょう。
さくら、俺はな、バカだけど、これくらいはわかるぞ。
戦ったり憎み合ったりしちゃいけねー。助け合うんだよ、愛し合うんだよ人間は。

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