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乗り物命の四歳男児、マイカー(自転車)を購入する

 もう一月も七日!
 今さらながら、あけましておめでとうございます。今年もぽちぽち2000文字でぼやきますのでよろしくお願いします。

 年始一発目のニュースとしては、

 我が家の小さい人、にっとが四日で四歳になった。


保育園でもらったプレゼント


 誕生日プレゼントは自転車と決めていた。
 ペダルのない、足で蹴って進むストライダーと迷ったが、ストライダーはわたしの祖母(にっとから見たひいばあちゃん)が買ったらしい。自宅から車で十五分程のわたしの実家にあるという。そっちの家で遊ぶ用に、と。
 保育園ではすでにストライダーを乗り回していると聞く。年末には帰宅時ににっと自ら、

「今日は大掃除したよ。おれはストライダーの洗車した」

 と得意気に話してくれた。
 すっかりストライダーとは友達のようだ。半月に一回くらいはわたしの実家にも行っているため、そっちでさらに友好を深めることもできる。

 それなら自宅では、思い切って補助輪つき自転車でいいのでは?
 前の保育園で三輪車にも乗り慣れているし、補助輪つき自転車なら四輪だ。ストライダーでバランス感覚も養えている。乗せてみたら案外乗れるんじゃあ?

 一月四日、近所の自転車屋さんに家族三人で赴いた。店主らしきおっちゃんは特に挨拶することもなく、あっちの書類をこっちの棚に運んでいる。
 店内にずらりと並ぶママチャリ、スポーティーなデザインのもの、電動自転車、学生向けに光る銀色、片隅に幼児向けの車体を発見。

「おれ、これにする!」

 脇目もふらずに飛び付いたのは、パステルピンクの車体に赤や水色、紫の淡いハートや星の模様が散っている。クリーム色で角の丸い前かごには黄色いリボンと、クリスタルのごとくきらめくハートのチャーム。

「すごくかわいい! このハートがとにかく最高!」

「それ女の子のやぞ」

 ハイテンションを、夫がぴしゃり。
 にっとは潤んだ瞳でその場にしゃがむ。どうにか涙を堪えていた。乗り物大好きボーイだが、実はプリキュアやリトルマーメイドも大好きなのだ。

 後ろから、もう二、三歳大きそうな女の子が、両親と共にやってきた。

「これめっちゃ夢かわ! これにする!」

 生まれた頃から「夢かわいい」の概念がある世代の子供に、人気のようだ。
 女の子も「もうちょっとお姉さんになっても似合うやつにしたら?」「やだー! 試し乗りする!」と抗議している。しかしながらおっちゃんはやはりあっちの箱をこっちに運んでいて、我関せず。
 結局この日は夢かわ自転車以外に気に入るものがなく、後日、別の店も見学に行くことで落ち着いた。

 そしてこの度、三連休。

 普段は土日祝日無関係に仕事の夫が、たまたま今日だけ、休日だった。

「自転車買いに行くぞ!」

「やったー! 一番早くて一番逮捕できる格好いい白バイ、あるかなぁ?」

 夢かわいいと対極だなあ。なんだかんだ働く乗り物が一番か。

 自宅から車を十分ちょっと走らせて、隣県隣市のイオンモールへ。育児用品からおもちゃやお菓子まで子供の夢をぎゅうぎゅうに詰めた、トイザらスを頼りにした。

 いつもはおもちゃ売場に駆け寄り張り付き決して動かないにっとも、今日は自転車と心しており、スムーズに売場に辿り着く。

「わ、ちょっと見て! これかわいい!」

 食い付きすぐさままたがったのは、クリーム色の十二インチ。男女兼用だろうか。サドルもペダルも、いま流行りのくすみカラーで固めてある。

「ちょっと小さくない?」

「サドルとハンドルの高さを変えればいいか?」

 両親が腕を組みうなる横で、さらなる「あーっ!」のときめきが店内に響く。

「これ黄色いな! ドクターイエローみたい! 道路パトロールカーみたい! すっげぇー!」

 興奮で震えながらも、慎重にクリーム色から降りていた。ちょうど母の目の前、黄色い車体に白く英字が走り抜ける自転車。十四インチだ。
 試しにまたぐ。おぼつかないつま先立ち。怖がりぐずる。抱き上げて降ろす。気付いた店員さんが、サドルを下げてくれた。

「一センチくらいしか下がりませんでしたけど……」

 再びまたぐ。安定したつま先立ち。片足だけならぺたんと床につけることができた。

「片足でもつけば大丈夫ですよ」

 店員さんの言葉に、小さなきらめきがわたしをまっすぐ見つめてきた。

「これにしようか」

 乗り物のおもちゃや本を片っ端からほしがり、愛用してきた彼が、初めて自分だけの移動手段――乗り物を手に入れた。


帰宅後さっそく近所の犬に見せに行った


 両親は思う。

「いまは自転車やけど、そのうち自分でバイク買いに行くんかな。おれ、バイクはわからんから、なんにも教えられんな」

「そのバイクも、仕事で本当に白バイに乗ってるかもしれんよ」

 これからどこまでペダルをこぐか。どこでもいい、どこでも行ける。新しい行き先が、十四インチから見つかるだろう。
 しばらく休日の過ごし方は「自転車練習」になりそうだ。

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