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今思い出しても

年末のある朝
下の子が電車が遅延しているから
バイト先まで送って欲しい
と言ってきた

バイト先は隣市のテーマパーク
電車で通うと車で行くのの倍以上かかるが
自分でやると言ったバイトなので
よっぽどのことが無い限り現地までの送迎はしない

今回は電車の遅延ということで
送っていくことにした

テーマパークと言っても
こじんまりしたもので
隣接してプールやマーケットなどがある複合施設になっている
周囲にリゾートホテルやヨットハーバーもある

そのヨットハーバーの駐車場に車を止めて
下の子をおろした
その後私も帰ろうと思い
ヨットハーバーから出るところで信号待ち
向かい側にはリゾートホテル

ぼんやり前を見て赤信号を待っていると
リゾートホテルの自動ドアが開き
2〜3歳くらいの男の子が出てきた
かわいいな、と思って見ていたけど
後から大人が出てくるわけでもない

男の子1人笑顔で真っ直ぐ信号の方へ向かって
小走りにやってくる

え…

不安な気持ちで男の子を見ていたら
止まることなくホテルの門辺りまで来た
付き添う大人の姿は無い
前の道路は信号が青なので
そこそこのスピードで車の往来がある

まじか

男の子が門を出て歩道に出かけた時
私はギアをパーキングにしサイドブレーキを引いた
車から降りようとドアを開け
男の子をもう一度確認する

歩道に出た男の子は少し速度を落とした
後ろからおじいちゃんらしき人の声が聞こえて
駆け寄ってくる

もう少しで車道に出てしまうというところで
おじいちゃんが無事キャッチ

心臓が止まるかと思った

頼むからやめてくれと思った


子どもから手を離してはいけない
ほんの一瞬でも、だ
振り返ったらいない
なんてザラにある

でもそれは親の責任とは言い難い
どうしようもできないことがたくさんある
私もほんの一瞬目を離し
振り返ったら姿形も無く
下の子をあっという間に迷子にしてしまったことがある

子どもは本当にまさか、と思うことをする生き物なのだ

とにかく無事で良かった


信号が青になり
男の子はおじいちゃんに抱かれ
お父さんとお母さんと抱っこされた赤ちゃんと
いるのを見ながら
車を出した

あの子がこっちに向かって走ってくる姿を今思い出しても
胸が押し潰されそうな感覚になる
ほんとうに怖かった

何事も無かったのに
強烈に怖かった年末年始の思い出
あの子と家族が楽しく笑って年が越せていたら
いいなと思った

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