連作3つ(27首)

今年発表した連作3つをテキストでも載せておこうと思い投稿します(これを機に僅かに訂正した部分もありますが)。改めて感想などお待ちしています…!


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snow bullet

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雪だるまが朝には死んでいることを思うよ はつなつの駐車場

恩着せがましくずるずる落ちてくる雪の銃弾によく似た温度感

狭い部屋の中で二人分の呼吸がプラズマになるなら こ    わ   れ  そ   う

降る雪がぜんぶ愛ならいいのにな 座敷牢の高すぎる窓

炒飯を温めていた右手にも責任は生じるあきらかに

それまでの全てが洋服になるから泣く必要はない おわかり?

川の音か雪の叫びかわからない わからないならそれなりにするべきことがあるとは思う

散文的な恋の始まりに水色の燦々とした日が射せば落ちていくだけ 雪解けに影

ライフルにハニーマスタード・ジャムを塗り、最後の晩餐には粋すぎる

うまれかわったらおまえはとろ〜り桃ピューレだから死ぬなよ snow bullet


❄️

w/s    

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心臓が身体の中にあることのきもちわるさを諭す口づけ

Life vest under your thought  空の下の多くの傘の人を想った

ふわふわと息を止めれば実感が 僅かに息を止めた分だけ

清潔な指で清潔な思想であなたを壊すまではおあずけ

カップルの手の大きさがバラバラで痛みを感じるより速いから

ホラ吹きを咎めるまでの労力に詩性の蜜を散りばめておく

痛みはない すぐそばにあったはずなのにもうそこにない ただそれだけだ

高架下の心地よい音の中にいて、それまでのいくつもの逡巡

車体から / 輪 / どろどろの花が咲き/ 廻 / 転 / 生 / 故郷に雪

棺桶のような瞼をこじ開けて春風吹けば結露する蜜

⭐️

明晰夢をみるにあたって

⭐️

水声に満ちた布団に横たわり凋落するとしても目を閉じよ

地下室の響きの良さの実際に閉じ込められるまでの気持ちだ

窓から屋根が(屋根から窓が)見えるとき肌色も空色も不確か

夜の間に君が思うのは夜のこと とはいえ許すことはできない

夢の幕間のわたしが丁寧に指をなめれば氷の去勢

ストレートフラッシュ 泣きそうな顔であなたも操作した朝まだき

爪を触る それまでの多くの恋のように縛られている日と鎖


/   芒川良

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