私は小学生の頃、先生という立場の人から理由なく物を貰ったことが２回ある。

先生から理由なく物を貰うの巻１

１回目は小学校３年生か４年生の頃。

その当時、週３回そろばん学校へ通っていた。

そろばん学校では男の校長先生と、女の先生がいた。

ある日、いつものようにそろばん学校の教室でそろばんをやっていると、女の先生が私と友人に声をかけてきた。

「校長室へ来て。」

校長室に呼ばれるって何だろう…と友人と２人で少し怯えながら校長室へ行った。

「そこへ座って。」

大きいテーブルの向こう側に校長先生が座っている。
その向かいに座るよう促された。
女の先生は、90度こちらへ向く席…いわゆる「お誕生日席」の位置に座った。

少し話をした後、
「はい、これあげる。」
と校長先生から、リボンのついた透明な袋に入った缶ペンケースが、私と友人それぞれに差し出された。

？？？
プレゼント？

なぜ私たちにくれるのかわからないが、
「ありがとうございます。」
と言って受け取った。

「もう行っていいよ。」
と言われ校長室を後にした。

なんだったのかよくわからず、怖かった。

友人と
「なんでだろうね。」
と話したかどうか覚えていないが、そう思いながら教室に戻り、そろばんの続きをやった。

私も友人も気軽に「先生、先生！」と寄っていくタイプの子ではなかった。
むしろ逆で、大人に対してはきちんとした態度でいないと、と構えているような子だった。
だからそれまで校長先生と個人的に話をしたことなどなかった。
大勢いる教室で席に座ってそろばんをやっていただけだ。

なぜわざわざ呼ばれて、そのために用意していたような物を貰ったのか。

わからない。

家に帰って母に話したが、
「あ、そう。」
という感じで、特に何も思っていないようだった。

怖かったのでその缶ペンケースは使わず、家に置いておいた。

先生から理由なく物を貰うの巻２

２回目は小学校６年生の頃。

ある日の放課後、担任の先生（女性）から、
「あとで職員室に来て。」
と言われた。

職員室へ呼び出されるなんて、何だろう。
何か注意でもされるのか。

当時私は学校ではおとなしい子で、特に問題など起こすようなこともなく過ごしていた。
しかし、昭和だったので子どもは元気な子が子どもらしくていいとされ、おとなしいことがよくないみたいに言われていた。

なので、おとなしいことを怒られるのか、嫌だなあと思いながら職員室へ行った。

職員室へ入り先生の席のところへ行った。
先生は、
「はい、これあげる。」
と言いながら、包装された何かを差し出した。

研修旅行で行った先のお土産だと言う。

？？？
何で？

「ありがとうございます。」
と言って受け取ると、
「もう帰っていいよ。」
と言われたので、
「失礼します。」
と、そそくさと職員室を出た。

怖かった。

廊下で待っていた友人が見ていたようで、
「何か貰ったよね？」
と言われたが、何かいけないことをしたような気持ちになり、
「うん。」
とだけ答えた。

なぜ。
なぜ、私だけにお土産を？

怖い。

家に帰り、怖かったので自分で持っていたくなくて母に渡した。

包みを開けてみると、「ひろしま」と筆文字で書かれているしゃもじ形の壁飾りだった。
吊るして飾るように紐が通されていた。

本当に、ただお土産。
先生、研修旅行で広島へ行ったのか、いいなぁ。
と思った。

でも、やっぱり怖かった。

母は特に何も思っていないようで、それを飾っていた。

なので実家にいる間はそれを見る度に、何だか怖かった気持ちを思い出していた。

なぜ理由なく物を貰うと怖いのか

これらのことを子どもたちに話したら、
「怖い〜。」

やっぱり怖いよね。

なぜ怖かったのだろうか。

物を貰うときはどんなときか。
必ず理由があるのか。
考えてみよう。

学校で先生から何かを貰う場面を考えてみる。

・提出物やテストの点に応じて「賞」シールを貰っていた。

…もう思い浮かばない。

それぐらいしか学校で先生から何かを貰うことはなかった。

「先生から」という条件を外して考えてみる。

・誕生会でその月の誕生日の人が、プレゼントを貰った。

小学校２年生の頃にクラスで誕生会をやっていた記憶がある。
誕生月でない児童が手作りのプレゼントを渡していた。

・６年生を送る会で、６年生が下の学年児童から手作りのプレゼントを貰った。

・転校する子の親からクラス全員に鉛筆やハンカチをいただいたことがある。

…もう思い浮かばない。

どの場面でも、なぜ貰うのか理由がわかっている。
みんな同じ条件の下で貰うものだ。
それに公になっている。
皆が知っていることだ。

特定の人だけ、他の人に知られないように物を貰う、ということはないのだ。

だから、怖かったのだ。

普通、そういうことはないのに。
自分たちだけ、自分だけ。
他の子どもがいないところで。
理由を告げられずに。

そのように貰ったから、怖かったのだ。

そのように貰ったから、人に知られてはいけないことのような気がして、だから怖かったのだ。

理由を添えてくれれば怖くなかったんじゃないか、と思う。

…いや、どうだろう…。
却って怖いかも…？