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【エッセイ】トリップメーター

長渕剛の『JEEP』を探しに秋田市内中のBOOKOFFを車で回った休日の帰り道(結局、アルバムはどこにも売ってなかった)

母校の高校の近くの交差点をたまたま車で通りかかって赤信号でつかまった

僕は思いついたように車のトリップメーターを0.0kmにリセットして合わせる

高校1年生の晩秋の日

放課後の補習の授業を終え、いつも通り、最寄り駅まで自転車で帰ろうとして学校の昇降口を出たら、もう外は、すっかり真っ暗だった

何故だがその時、言葉にできないセンチメンタルな気持ちでいっぱいになり、どこまでも歩いて帰りたい気持ちになった

ここから乗り換えの秋田駅まで、どのぐらいの距離なんだろうか
全く見当もつかない

しかし、何かに連れ去られるかのように、華やかな街の電飾と行き交うラッシュアワーのヘッドライトに照らされながら、凍えた手を息で温め、ずっとずっと一人で歩いた

ウォークマンで徳永英明の『Ballad of Ballad』を何度もリピートして、思うようにならない高校生活の切なさと歯がゆさを抱えながら、どこまでもどこまでも、真っ直ぐに歩いた

山王十字路で曲がり
竿燈大通りを抜けて、駅前に向かう中央通りをひたすら目指す

実を言うと、あの日の帰り道の事を未だに思い出すことがよくあって、一体、通ってた高校から秋田駅まで、何kmぐらいの道のりを歩いたのだろう?とふと考えることがあった

そして、今日、トリップメーターの数字がその答えを教えてくれた

6.0km…
たったの6.0kmだった

僕の感じてた心のメーターの針では20kmぐらいはあったと思ってた

あの日の帰り道
あんなに長い時間、何を考えながら歩いていたかは覚えていない

だけど、16歳の少年だった僕が、思春期から大人になるために通らなければならない、大切な通過点を歩いたような気がする

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