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肝試し

公園の盛り塩の話で出てきた生徒のお母さんから聞いた話。知り合いのTさんは霊感が有るらしい。例えば、一緒に山道をドライブしていたりすると何も無いところで急にハンドルをキュッと切るので「どうしたの?」と聞くと「いや、今おじさんが立ってたから」という具合に、当たり前に幽霊が見えるそうだ(Tさん曰く、街中の幽霊は普通に生きてる人間と同じように見えるので判別しづらいが、心霊スポットなどに近づくにつれ、腕や足など体が欠損した個体が増えるらしい)。

そんなTさん(男性)が女2と男3人で、とある霊園に車で肝試しに行った。ここには、なんとかちゃん像とかいう名前で呼ばれている子供の像が有り、ありがちだが深夜に像の周りを何周かするとお化けが追いかけてくるみたいな都市伝説があったそうだ。その像まで肝試しをしようとなったのだが、5人のうちのカップルが怖がり「私達は車で待ってるから、あんた達だけで行きなよ」というので仕方なく3人だけで像を目指した。結果を言うと3人の方は何も異変が起こらなかったので、やや興醒めで車へと戻っていった。すると居残り組の2人が車内でガタガタ震えていたかと思うと「早く…!早く車出して!!」と大声で喚く。理由を聞いても「早く!早く!」としか言わないので只事ではないと思い霊園をあとにした。

しばらくして2人が落ち着いてから何が起こったか聞くと、どうやら3人が像に向かった後、しばらく2人で雑談していたのだが、急に車の周りに気配が降ったような気がしたので車外に目をやると、深夜にも関わらずどこから現れたのか大勢の子供が車を取り囲んでいる。その異様な光景に戦慄し固唾を飲んで見ていると、一斉に子供達は両手を車にペタペタと付けて車をユサユサと揺すり始めた。およそ子供とは思えない程の力で、車が壊れるくらいガッタンガッタンと揺すぶられたのだという。「そんな馬鹿な」と3人は2人の話に取り合わなかったが、車を降りて全員は総毛だった。車の外側の低い位置に無数の小さな手形がこびりついていたのだという。

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