川崎屋

怪談、民俗学、日本史、法律、英語 新耳袋を英訳してみたい

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和製ホラーの好きな演出

 いきなりだが、和製ホラーの素晴らしさって何だろう?と考えたことがある。それを語る上では、そもそも和製ホラーってなんやねん?という疑問を自分の中でクリアにする必要がある。ここでは日本で作られたホラー作品という広義の意味ではなく、ある種の日本人独自の精神性を色濃く反映した狭義の意味でのホラー作品にスコープを絞りたい。  一言で言語化するのは難しいが、個人的には恐怖という根源的な感情を日本人独自の感性というフィルターを通してローカライズし、描写し、演出などの付加価値を加え作品と

    • 中国の斎場

      中国の友人から聞いた話。彼女は昔から「見える」人だったのだが葬儀場で体験した不思議な話を語ってくれた。まだ彼女が幼かった頃、親戚の葬儀で中国の斎場に行ったそうだ。葬儀ホールで周りに親戚がいる中、ホールの奥のお札を燃やす場所(中国では故人の為に紙のお金を燃やす風習がある。燃やす量は多ければ多いほど良い。)に向かって歩いて行く母親を目にした。なぜ母親だと思ったかというと、その日の母親と同じ服装だったからだそうだ。その人影を追いかけて奥のスペースに行くと、そこには誰もいないことに気

      • ありし姿

        アメリカ人の友人から聞いた話。英会話の練習がてら「何か怖い話は無いか?」と彼に聞いたところ、彼の祖母が昔体験した短い話を聞いた。なんでも亡くなった姉を家の中で見たという。ある日家の中に一人で祖母がいると突然音が聞こえた。ふと目をやると女性がリビングに入って来た。ひと目でそれが亡き姉だと分かったそうだ。姉はこちらには見向きもせず化粧台の鏡の前に置いてある椅子に腰掛けると、鏡を覗き込んだまま化粧を始めたという。まるで、これから外に出かけるかのように。しかし何故かその姉の姿は亡くな

        • 肝試し

          公園の盛り塩の話で出てきた生徒のお母さんから聞いた話。知り合いのTさんは霊感が有るらしい。例えば、一緒に山道をドライブしていたりすると何も無いところで急にハンドルをキュッと切るので「どうしたの?」と聞くと「いや、今おじさんが立ってたから」という具合に、当たり前に幽霊が見えるそうだ(Tさん曰く、街中の幽霊は普通に生きてる人間と同じように見えるので判別しづらいが、心霊スポットなどに近づくにつれ、腕や足など体が欠損した個体が増えるらしい)。 そんなTさん(男性)が女2と男3人で、

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        和製ホラーの好きな演出

          気になる祟り系の場所 其の肆

          ⚪︎ 初鹿野諏訪神社 朴木(山梨県甲州市大和町初鹿野) ここも有名だが外すことは出来ないだろう。御神木の朴木(ほうのき)が祟るとされているが、実際に諏訪神社の教育委員会の案内板には、祟りを公的に認めているとも解釈できるような、以下の文言が記されている。 本殿の裏にある神木の朴の木は、二千数百年を経たといわれており、幹は幾度か枯れては根本から発芽し、現在に至っている。この朴の木は、日本武尊がこの地に憩った折り、杖にしたものが発芽したものと伝承されている。 古来からこの神木を

          気になる祟り系の場所 其の肆

          気になる祟り系の場所 其の参

          ⚪︎ 慈眼院 澤蔵司稲荷(東京都文京区小石川)  徳川家康の生母が眠る傳通院の護法神(仏法とその信者を護る神のこと)が澤蔵司稲荷で、その別当寺(専ら神仏習合が行われていた江戸時代以前に、神社を管理するために置かれた寺のこと)が慈眼院なのだという。  時は元和4年(1618年)、この傳通院の学寮に澤蔵司(たくぞうす)と名乗る僧が「浄土宗を学ばせてほしい」と入寮してきた。この澤蔵司、めちゃくちゃ優秀で浄土宗の奥義を僅か3年でマスターしてしまう。やがて傳通院の学寮長と住職の枕元に

          気になる祟り系の場所 其の参

          気になる祟り系の場所 其の弍

          ⚪︎ 斑女塚(京都府京都市下京区糸屋町)  鎌倉時代の逸話集『宇治拾遺物語』には、以下のような奇妙な話がある。 昔、長門国(山口県北西部)の国司(諸国を治めるべく設置された役人)である長門前司には2人の娘がおり、姉はすでに嫁いでいたものの、宮廷に仕えていた妹は独身のまま病で亡くなってしまう。妹の亡骸を鳥葬(死体の処理方法のひとつであり、肉食の鳥類に死体を処理させるもの)で有名な葬送地である鳥部野に運ぼうとするも、移動中に棺桶の蓋が開いており中が空っぽになっている。家に戻ると

          気になる祟り系の場所 其の弍

          気になる祟り系の場所 其の壱

          【 祟り 】 1.神仏や霊がその意に反する人間の行為に対してもたらすとがめ・災禍。 2.ある行為のむくいとして受ける災難。  日本には多くの「祟る」場所がある。到底全ては網羅出来ないものの、 自分の気になる場所を各回に分けて紹介する。これらは決して禁忌を犯すことを推奨するものではなく、あくまで個人的な趣味の一環として集めたものある。順番はランダム。随時アップデートは気まぐれ。記念すべき第1回目は比較的マイナーな武将の首塚をフィーチャーした。 ⚪︎ 笠原新三郎首塚(長野県佐

          気になる祟り系の場所 其の壱

          遮蔽物

          中学時代、国語のF先生から聞いた話。F先生はよく国語の授業をすっぽかして昔経験した面白い話、母親との思い出話、不思議な話などを聞かせてくれる人だった。ヤンキーの喧嘩を止めに入ったら鎖で前歯をへし折られたり、自分が電車の中でパニック障害で呼吸困難になった話など、話題に事欠かない。 中でも不思議系の話は、結構聞き応えが有るものばかりで、自分はいつも食いつくようにして聞き入っていた。例えば、F先生は大学時代、方言の研究活動の一環で、地方にフィールドワークに行ったことが有ったそうだ

          背中合わせの人形

          友人のTから聞いた話。Tの母親は東北出身で、実家には一対の女の子の人形が置いてある。片方は立っており、もう片方は座っている。Tが子供の頃は、いつ見てもこの人形達は背中を合わせる様にして、互いにそっぽを向く形で置かれていたそうだ。一度も同じ方向を向いている姿を見たことがない。母親や祖母に理由を聞いてみると、何度も同じ方向を向くように置いても、いつの間にか背中合わせになってしまうのだという。実はこの一対の人形、立っている方を姉、座っている方を妹というように、子供の頃のTの母親と母

          背中合わせの人形

          京都の怖い話

           割と昔から京都が好きで5回くらいは通っているのだが、2つほどネタが有ったので書き連ねていく。 1、伏見稲荷  小学生の頃、冬の雪が降る寒い日に平等院鳳凰堂に行ったことが有った。帰りに宇治のとある喫茶店に入りココアを頼んだ。そこのマスターから聞いた短い話。マスターは子供の頃によくカブトムシを採りに伏見稲荷へ友達と行っていたそうだ。夜の方がクヌギの木などに群がっているため都合が良いそうだ。その日も夜遅くに友達と2人でカブトムシが沢山取れるスポットまで鳥居を抜けて山を登ってい

          京都の怖い話

          虫の知らせ3本詰め合わせ

          虫の知らせに関するうろ覚えの短い話を3本詰め合わせで書く。 1、母の場合  ある時、飲食店かどこかで店員に対して割と態度が粗暴なおじさんと知り合った。ただ話してみると良い人だったので文通で数年やりとりする仲になった。いつしか疎遠になり2年ほど経ったある時、ふと何故か「あのおじさんどうしてるかな?」と気になり教えてもらった番号に電話すると奥さんが出た。母は自分の素性を明かし電話を代わってもらえないか聞くと、 「実は…」とその女性は口ごもった。丁度おじさんの葬式が終わり「今か

          虫の知らせ3本詰め合わせ

          助手席(心霊ではない)

           note用に人から聞いたネタを書き出してる最中に思い出した「あれは一体何だったのだろう」という話。春か秋か忘れたが中学3年生の部活の帰り道、いつも通る先輩の家の前を通った時にタクシーが目の前からやって来たので、何気なく運転席を見て凍りついた。隣の男性ドライバーに寄りかかるようにして身を預け虚な目で何処かを見る中年女性が助手席に座っていた。ただそのボサボサの髪を含め風貌や表情が物凄く怖かったのだ(以下の幽霊画はかなり似ていたので貼った)。服装などは顔のインパクトがとにかく強過

          助手席(心霊ではない)

          朝の炊事

           大学生の時に父方の祖父が亡くなった。自分は訳あってその祖父の持ち家に大学入学後に引っ越してきたのだが、その頃にはもう祖父はボケており93歳で亡くなるまで一度も病院から出ることの無い最期だった。葬式を終えた後も暫くは自分が住んでいる祖父の家に、父親とその兄(以降、叔父と表記)が出入りしていた。自分は2階の部屋を使っているのだが、ある日朝起きてスマホを見ながらゆっくりと階段を使って1階に降りていくと、1階の居間から父と叔父が少し慌てたそぶりで顔を出し、降りてきた自分を見上げた。

          朝の炊事

          斎場

           霊感0の川崎屋が体験した数少ない不思議な話。まだ5歳の時に祖母が亡くなった。お葬式をするべく斎場に行き、念仏が済んでご遺体を焼くフェーズに入った。お骨になるまで時間がかかるので一族それぞれが割り当てられた控室で一時待機することになった。両親と自分が割り当てられたのは、狭い4畳半くらいの和室だった。地下なので窓も無く真ん中にチャブ台が置かれていたことを覚えている。押入れも有ったかも知れない。  入って間もなく用が有ったのか知らんが、両親が「外に行ってくるから、ここで待ってて

          大原入道

           自分は行ったことがないが祖母は新潟の大原出身で、今は残っているか分からないが女の人の髪をお供えする神社があり、夜に行くと髪が沢山ぶら下がっていて、とても怖かったと言っていたことを思い出した(今回の話とは関係ない)。これは、新潟出身の祖母の両親が何十年も前に体験した話。  祖母の両親は大原で米屋を営んでいた。ある日の朝早くに市場に米を卸すため、沢山米を載せた大八車を二人で押していた。暁の薄明の中、田舎の畦道に差し掛かった時だ。まっすぐ伸びる道の向こう側の左脇に何か立っている

          大原入道