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インドワインの可能性

こんばんは!

本日は昨日投稿したチャイブレイクの続きだ。

インド建国の父と呼ばれるマハトマ・ガンディーは「酒は人々を堕落させ犯罪を生む」という言葉を残しており、

彼の故郷であるグジャラート州は禁酒法が敷かれている州のひとつである。

そんな一般的にお酒には厳しいというイメージのあるインドのワイン産業の現状と、どのように発展を遂げていったのかを紹介する。

他のメディアでは取り上げられないようなインドの「深い」ニュース記事を取り上げ、「リアルなインド」を皆さんに紹介していく。

皆さんの意見があったら、ぜひコメントで教えてほしい。


憲法による禁止

まずいきなりワイン業界に行くのではなく、インドのお酒を取り巻く環境を確認する。

インド憲法では、「酩酊を招く飲み物や麻薬の禁止」を求める「指令原則」がある。

ただし、決定権限は州政府に委ねられており、酒類の規制は州ごとに異なる。

当初インド中央政府は禁酒による物品税の減少額の50パーセントを州政府に補償することを約束し、

1961年になるとマハーラーシュトラ、グジャラート、マドラス(現在のタミルナドゥ州)、アーンドラ・プラデーシュの4州が全面禁酒に踏み切った。

他の州では酒類を販売しないドライ・デイ(禁酒日)を設けたり、一部地域を禁酒に指定したりした。しかし、税収増加の目的で禁酒政策を放棄する州がでてきた。

現在、ドライ・ステイトと呼ばれる禁酒州は、グジャラート州、ビハール州、ミゾラム州、ナガランド州、ラクシャディープ諸島のみである。


様々な規制

酒は禁止にしてない州でもさまざまな規制が存在し、酒を入手できる場所が州政府からライセンスを交付された酒販店と飲食店に限られる。

酒類取扱店は約7万5000店舗。この点では全国に5万店舗以上のコンビニでいつでも酒が買える日本とは大きく状況が異なる。

州ごとに酒税の税率も異なっており、連邦直轄領であるデリーと最高税率をかけているコルナータカ州では同じお酒でも1.5倍から2倍ぐらい違うこともある。

酒の広告も禁止されており、各社あの手この手でこの規制を搔い潜ろうと工夫を凝らしている。

たとえば、極めて類似したロゴのミネラルウォーターを出し、その商品の広告をしたりしている。


インドワインの歴史

実はインドではブドウ栽培は伝統的に何世紀にもわたって続いていた。

特にポルトガルとイギリスによる植民地時代には特に奨励されていた。

しかし、19世紀にヨーロッパのワイン生産にも大きな影響を与えた害虫、フィロキセラが多くのブドウ園を荒廃させてから、宗教と世論が禁止に向かった。

ただ1980年代から1990年代にかけて、規制の緩和や国際的な影響を受けて、インドのワイン産業が復活し、インド人は輸入ワインを楽しむようになる。

ただ当時は国産ワインメーカーは1社も存在しなかった。

Sulaワインの誕生

インドでワインの人気が徐々に出てきた1990年代、スタンフォード大学卒業後に、シリコンバレーのオラクルで働いていたRajeev Samantは、一勝負を打つため故郷のインドに帰国する。

彼の父親の故郷であるNashikにはブドウ畑が多くあり、彼の父親も20エーカーほどの土地を持っていて、そこで生食用ブドウの栽培を行っていた。

これだけブドウがあるのに、だれもワインを作っていない、そこにビジネスの可能性を感じたRajeevは、カリフォルニアに戻り、著名なワインメーカーであるケリー・ダムスキーの助けにより、

1999年にインド初の国産ワイナリーとなるSula Vineyardsを設立した。

2000年に新しいブドウ品種を導入したワインが、インドの消費者の人気を呼び、Sula Vineyardsはインド最大のワイン生産者であり、60%の市場シェアを占めている。


インドのワイン市場

世界で3番目に大きいインドのアルコール市場は、半分(51%)が蒸留酒、ビールが46%を占め、ワインの割合は1%程度であるが、インドのワイン市場は成長している

例えば、ワインの消費量は先進国で高く、食事とワインを組み合わせる一部のヨーロッパ諸国では30%にも達す。

消費者が成熟し、ただ酔いたいだけでは無く、社交的な飲酒を楽しみたいというニーズの増加や、食文化の国際化などによって、ワイン市場は今後5年間は10%程の年間成長率が見込まれている。

現時点では、ムンバイ、バンガロール、デリー NCR、プネー、ハイデラバードなどの一部の都市中心部が売上の 70% 以上に貢献しているため、

今後は大都市圏でのワインの販売増加に加えて、地方都市の需要が高まりが重要となる。


Sulaのパフォーマンス

2022年にIPOを実施したSulaの直近のパフォーマンスを23年年末の証券会社のコタック・セキュリティーズのレポートから見ると、

国内の 100% ブドウ ワイン市場においてエリート/プレミアムワインの市場シェア 60% 以上を占めている。

エリート/プレミアムワインの価値が2桁の力強い成長を予想し、近~中期的にはワインツーリズムの収益が拡大する。

9 月四半期の総収益は前年同期比 11.8%増の14億ルピーとなり、販売量は前年比3%増加し、ホスピタリティ収入は前年比26%増加。

粗利益率は 170 bps上昇して 78.1%となった。

同銘柄の格付けを「追加」とし、目標株価は530ルピーとなっている。目標株価は、現在の水準から12%を超える上昇の可能性を示唆している。

なお本日時点で株価は637.3ルピーとなっており、これは1/8に発表したマハラシュトラ州政府の同社へ補助金制度を延長する決定を受け、ストップ高となったことに影響し、すでに目標株価は超えている。

さいごに

実際にNashikで見たツアー参加客の客層、工場で確認した熱気、それからデータから読み取れる確かな成長。

帰れ際にPuneに寄った際に、レストランでワイン片手に、パスタを食べ、BTSを熱唱する若者を見て、インドの食文化の変化は確実に現在進行形で起きており、

そこにワインは必ず大きな役割をすると感じた。

まだまだ規制が多く日本ほど手軽にお酒は変えないが、今後の変化を期待したい。


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