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【映画】ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズはホラーとしてではなくヒューマンドラマとして見てほしい

プレイヤーである警備員が襲い掛かる動物の着ぐるみ型ロボットを監視しながら警備室への侵入を防ぐ大人気ホラーゲーム『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』(通称FNaF)が映画化されました。
製作したのは低予算ホラー『パラノーマル・アクティビティ』で知名度を上げ、最近では『ミーガン』を手掛けたブラムハウスです。ホラー映画業界を牽引しているホットな映画会社が大人気ホラーゲームの映像化をしました。

私は怖くてホラー映画はあまり見ないですが、このゲームが好きだったこともあり映像化がとても楽しみで、ホラー映画の公開を心待ちするという人生はじめての感情が芽生えました。

ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズのゲームについて

そうゲームをやっていた風に話していますが、私は未プレイです。
でもこのゲームが大好きなんです。
ゲームとの出会いは十何年前にニコニコ動画でガッチマンさんというホラゲー実況者がこのゲーム実況を投稿していて、ドはまりしてからは新シリーズが投稿されるたびに楽しんで見ていました。
ニコニコ動画とかゲーム実況者、なんて懐かしい響きなのでしょう。
YouTubeでも活動されていて、FNaFシリーズも上がっているので良ければ見て欲しいです。

映画感想の前にこのゲームの魅力を話したいです。それは手に汗握るゲームシステムと着ぐるみ型ロボット(アニマトロニクス)のデザインです。

ゲームシステムは一言で表すとだるまさんが転んだ、なんですがイカゲームのそれのようにミスしたらゲームオーバーで即死を意味します。
舞台は廃墟で、かつてその場所は着ぐるみロボットがスタッフとして働いていたアミューズメント施設付きのピザ屋でした。
プレイヤーは夜勤警備員として警備室で廃墟に異常なことが起きていないかを見張ります、そのため警備室でのほぼ固定視点でゲームが進みます。

警備室に襲い掛かるのは動物がモチーフの着ぐるみ型ロボット、かつてピザ屋だったころはAIが搭載された自律式ロボットで自由に動き回ってお客さんを喜ばせていましたが、廃墟になってしまったことでロボットの見た目も廃れて管理者がいないせいで好き勝手するようになり、警備員に悪戯(=拷問器具が内蔵された着ぐるみを被らせようとすること)しようとします。

警備員は警備室に籠ってアニマトロニクスの侵入を防ぐために動きを監視して、侵入を図るアニマトロニクスには警備室に設置してあるライトやシャッターを駆使して夜を乗り切ります。

しかし、警備室はバッテリーで運用しているためゲームクリアとなる朝になる前にバッテリーが切れたらライトもシャッターも使えず無防備になり、ほぼゲームオーバー。
そのため、いかにバッテリーを節約しながら侵入を防ぐかというプレイヤーとアニマトロニクスの駆け引きがこのゲーム最大の魅力です。

アニマトロニクスは可愛らしく、ピザ屋だった頃は人気があったような見た目ですが洋ホラゲー独特の不気味さもある秀逸なデザインです。クマやウサギと様々な種類がありそれぞれ特徴が違うのも魅力でFNaFを紹介しているWikiを読むだけでも面白いです。

私はフォクシーがダントツで好き。

このゲームシステムを活用してうまく映像化しているのかなと思っていましたが、残念ながらゲームシステムの要素はほぼありません。
正直もっとゲームシステムを継承して欲しかった。
ホラー映画としても怖い部類ではなく、ゾクゾク感を楽しみたい人にとっては不満続出だったでしょう。

アニマトロニクスがゲームのデザインとほぼ同じで、等身大で再現されていたのは評価します。

ホラー映画として×ですが主人公の精神的な成長を描いたヒューマンドラマとしてはかなり良い映画だと思っています。

また、ゲームで軽く触れられているアニマトロニクスが何者で何故人を襲うのかという設定が映画では深く掘り下げられたり、舞台となるピザ屋の世界観は忠実に再現されていることは評価しており、また警備員である主人公が持っているトラウマを上手に物語の中に組み込んでいました。
フィルマークス等では評価は低いですが、何故そんなに低いのか分からないのでヒューマンドラマという面で紹介したいです。

映画感想

主人公はマイクという青年で警備員のバイトを始めます。
きっかけはアビーという小学生くらいの妹と2人暮らしをしていますが、彼は精神が不安定で問題を起こすことが多く生活に困窮していて、なんとか職にありつけたのが廃墟を警備する仕事だったからです。

マイクは警備の中で、不気味なアニマトロニクスに対しては注意しているものの、事情があってアビーが仕事についてきた際、アニマトロニクスが動き出しアビーと仲良くなってしまいます。
ゲームではアニマトロニクスは完全な敵で話も通じない相手なので、妹がアニマトロニクスと仲良くなる展開は完全な映画オリジナルのためかなり困惑しました。

ですが、物語が進むうちにマイクとアビーが背負っているとあるトラウマとアニマトロニクスの物語が密接に絡みついてきて、それが面白いのです。

マイクには弟がいて(アビーにとっては兄)家族でキャンプをしている時に弟が誘拐されてしまいました。
マイクは完全な被害者で悪くありませんが、車で連れ去られる弟を目撃していたため、自分があの時目を離さなかったら、犯人の顔を見ていれば助けられたと精神的なトラウマを抱えて生きています。

それだけでなく、自責の念に囚われ今でもキャンプをしていた森の写真の前で、森林の音のラジカセを聞きながら寝ることで事件の日を夢で思い出して犯人の顔や解決のヒントをかき集めようとしており、寝ても疲れがとれないのでそれが精神が不安定なっている要因の一つになっています。

マイクが警備室で居眠りをしながら事件を追っていた時、いつもと違う展開を見せます。夢の中で謎の少年少女が現れるのです。
ずっと夢の中で事件を繰り返していたマイクはいつもと違う展開を千載一遇のチャンスだと思い、事件の手がかりを知っていないか少年少女に尋ねますが話は聞けずに逃げられてしまい、またしても壁にぶつかります。

一方、アビーは絵を描くのが好きな少女で友達が出来ず一人ぼっち。
マイクとだいぶ年が離れていて、弟が誘拐された時は生まれているのかいないのか曖昧な感じ。
アビーはアニマトロニクスを友達として接し、一緒に秘密基地を作ったり踊ったりして仲を深めます。

何故アニマトロニクスとアビーが仲良くなったのか、それはアニマトロニクスは単純にシステムで動いているだけではありませんでした。
アニマトロニクスが動いている原因はマイクの弟が被害に遭った誘拐事件と関係しています。マイクが住んでいる町では誘拐事件が多発しており、弟は大勢の被害者の一人だったのです。

誘拐事件の被害者である子ども達は誘拐犯にピザ屋まで連れ去られ、アニマトロニクスの中に囚われていました。
そのため、アニマトロニクスの思考回路には無意識下で誘拐された子どもの神経もリンクしています。
マイクの夢の中に入り込んだ少年少女の正体は今はアニマトロニクスとなっている誘拐された子ども達で、歳が近いアビーとは仲が良いという訳。

マイクとアビーはアニマトロニクスが誘拐事件と関係があることに気が付きアニマトロニクスと仲の良いアビーが、潜在意識下にある誘拐された子どもから話を聞いて誘拐事件の真実を探り犯人を割り出そうとします。

しかし、アニマトロニクスの目的はアビーを連れ去り、彼女もアニマトロニクスにしてしまおうとしているのです。
ちなみに、悪意でアビーを連れ去ろうとしている訳ではなく、純粋な子ども心でずっと遊んでいたいという気持ちで独占しようとします。

そして、マイクはアビーを守るためにアニマトロニクスを戦うストーリーに発展するというだいぶ原作とは違うストーリーになっています。

弟の誘拐事件が町で多発した誘拐事件の一部であり、さらにはアニマトロニクスの秘密にも関係していると分かり物語のスケールが広がっていく感じはとても好き。

そして、子どもを誘拐している犯人とアニマトロニクスを作り出しピザ屋の運営を始めた男が物語の黒幕としてマイクとアビーの前に現れます。

黒幕の倒し方が見事で物語の序盤でアビーが絵を沢山描いていることに呆れているマイクが学校の指導員から「子どもにとって絵は文字よりも馴染みやすく、理解することが出来る大切な表現である」的なことを言うのですが、それが見事な伏線になっていて、話としては綺麗にまとまっています。

また、マイクは弟が誘拐された過去をずっと引きずって生きていましたが、アニマトロニクスに立ち向かうことで過去に囚われるのではなく、今を一緒に生きている妹を大切にして生きていこうと前向きになる精神的成長が描かれていて被害者の心の救済に焦点を当てた物語として観れば素晴らしい作品になっています。

この映画ではFNaFシリーズ1を基に制作されていますがシリーズ2作品目に繋がる終わり方にもなっており、再びアニマトロニクスと戦う物語も期待できるので是非楽しみに待ちたいので、日本での興行収入も良い結果を残してほしい作品です。

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