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運動会後、主任の語りで雷に打たれた話

20年ほど前、新任3年目

今から20年ほど前。新任から3年目、4・5・6年と持ち上がった年のことです。その年は、20歳ほど年上のちょっと強面の尊敬できる主任と学年を組んでいました。

当時は5・6年生がまだ組み立て体操をするのが一般的だった頃です。

主任は「リッケンくん今年は、俺が組立やる所を見せるから、しっかり覚えておけよ。来年は君がやるんだからな」と、「音楽の選曲のポイント」「拍のカウントの仕方」「技の発展のさせ方」「練習内容の学年の先生への指導の周知の仕方」「集中力の持続する練習方法や子どもたちへの心配り」など、文字通り手取り足取り、そして「やって見せ」「言って聞かせ」てくれました。「させてみて」「誉めてもくれました」が「盛大にダメ出しされた」のは翌年のことです。

運動会が終わった翌週の火曜日。運動会の総まとめとして、学年集会で主任が語って見せてくれたのが次の語りです。当時の私は、子どもと一緒に雷に打たれたのでした。

運動会後の主任の語り

T:運動会お疲れさん。みんなよくがんばったね。
ところでみんな、『器(うつわ)』って分かる?

S:お皿とか、茶碗ってこと?

T:そう。そういう入れものを器っていう。
     人それぞれ、色や形や大きさは違うんだけど、実は、みんなの心の中にも、器がある。

T:心が大きくて、度量のある人、立派な人のことを、昔から日本では『器の大きな人だ』といってきたんだ。みんなにもそういう人になって欲しいと思っている。

じゃあ、どうしたら、器の大きな人になれるのか。自分のために一生懸命がんばったり、誰かのために働いたり、人の話をしっかり聞いたりすることが大切になる。

今回の運動会で、一生懸命全力で走った人、係の仕事をがんばった人、組み立て体操で膝が痛いのに上の人が安心できるように耐えた人、高いところに登って怖いけれど支えてくれている人のために堂々と胸を張って演技した人、指導する先生の話をしっかり聞いて練習した人・・・。

そういうことを、自分の器から溢れそうになるまでがんばった人。そういう人の器は、がんばった分だけ、溢れないように少しだけ大きくなっていく。

みんな、ドラゴンボール知ってる?ドラゴンボールって、みんな、ギリギリの限界まで戦って、倒れても、仙豆を食べて復活すると、前より強くなっているでしょ。そんなイメージかな。

この運動会を通して、すごく器の大きくなった人、ちょっとだけ大きくなった人、人それぞれだと思うけど、みんな成長したと思う。

だけど、今から器に入っているものは全部捨てなさい。

S:!??????(今めちゃくちゃほめてくれたのにどういうこと?)

(少し間をとる)

T:いつまでも運動会でがんばったっていう気持ちに浸ってちゃだめだ。運動会のがんばった思い出がパンパンに入った状態で、新しいものを学ぼうとしたって器には入らない。

今週一週間は待とう。1週間以内に運動会の思い出は捨てて切り替えよう。運動会の思い出を捨てたあと、みんなの大きくなった器には、今まで以上にたくさん新しいものが入るようになっている。もっともっとみんなは成長できるよ。

※当時はドラゴンボールがまだアニメでやっていました。懐かしいですね。仙豆の例えがよくわからないと言う若い方は、面白いのでぜひ漫画喫茶で読んでみてくださいね。

雷に打たれ語りに目覚める私

「今から器に入っているものを全部捨てなさい」と言う言葉を聞いて、当時の私は、子どもたちと一緒に、「!??????」となりました。続く、主任の言葉を聞いて、運動会の余韻に浸っていた私も雷に打たれたように目が覚めました。そして、「よし、次の学びに向かってがんばっていこう!」と前向きな気持ちになれました。

子どもたちも、一週間を待たずして気持ちを切り替え、次の学びに向かうことができました。

このことは、若かった私に「教師の語りの大切さ」を意識させることになりました。そこから私は、さまざまな先生方の語りに聞き耳を立てたり、子どもたちの指導に悩むと尊敬できる先輩方をつかまえては、「先輩ならどう語りますか?」と質問しまくることになりました。

先生方は、運動会の後、どんな語りをされますか?よい語りがあったら教えてください。職場の先生方に質問すると、きっと素敵な語りが聞けるはずです。ぜひ、尋ねてみてくださいね。

今まで、さまざまな場面で子どもたちへの語りをしてきました。下のマガジンへ少しずつまとめていきたいと思います。よろしければフォローをお願いします。


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