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おいしい温度になるまで待って

食べ時を探る

できたてあっつあつ。それをハフハフ言いながら頬張り、口をいの字におの字に動かして湯気を逃がしながら嚙み砕き目を細めて嚥下し満たされた表情で「あーおいしい」と呟く。こんな美味しさの表現方法をテレビや映画でよく目にする。これが刷り込みになったのか作り手も熱々を提供することがいいことと思ってるフシがあるし、いただく方も熱いうちに食べることが作り手への礼節のような雰囲気さえある。だが筆者は思う。一拍置いたらもっと美味しくなるのにと。

温度も味のうち

何を美味しいと思うかは人それぞれだが辛い甘いしょっぱい濃厚さっぱりなどに好みがあるように温度にも人の好みがあると思う。筆者は温度による味の違いを強く感じる。それは無視できないほどに。食べ時を見誤ると同じ時間、同じ量、同じカロリーを摂取しているのに大損した気分になる。料理にもよるが多くの料理は常温で食すのが一番美味しく感じる。

一拍置きたい親子丼

冷ご飯に熱々の具材を乗せるとお米と具は交わらずお茶漬けのような食べ物になる。食材ごとが自立していて交わらない。熱々のお米に熱々の具材を乗せると、味より熱さが先に感知される。そして嚥下した後は後味より熱刺激の残像が残る。そしてこちらも食材ごとが自立しているため交わらない。味覚以外の熱刺激が加わっている分味覚レベルは低下するかもしれない。熱々のお米に熱々の具材を乗せ常温になるまで放置する。いわゆるお弁当で食する状態にあるとき。食材と食材が一体化して個体となる。味覚より刺激の強い熱刺激もないため舌に触れた瞬間から美味しさが脳に届く。

一拍置きたいラザニア

油分が多いものは常温に置くと舌触りが気になりそう。パスタは食感が劣りそう。それがただのイメージだということが分かった。出来立てのラザニアはソースと生地が層になっている構造上横滑りしていく。それをフォークとナイフで押さえつけ個体同士を絡めて食べていく。食材同士が一つのお皿に合い盛になっている。パスタとソースの重ね焼きといったところだ。常温に冷ましたラザニアは食材が一体化して個体となる。ソースの水分量にもよるが肉々しいソースを作った場合、脂質が固形化することで生地とソースの結びつきが強くなり、ピザやパイのように手で持って歯型を付けて噛み締めることができる。この締まった食感も美味しさを押し上げる。しかしピザは断然出来立てが美味しく感じるから不思議だ。

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