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【2Q決算分析】フロイント産業(2023年10月)

チョイスが渋すぎる、という声が聞こえてきそうですが。そもそもフロイント産業をご存じの方はどのくらいいますでしょうか。

この会社はハードである機械事業(造粒・コーティング装置)とソフトである化成品事業(医薬品添加剤、食品品質保持剤)の両利き経営でグローバル展開している研究開発型のメーカーです。

2023年2月期の決算は売上高196億円、従業員は476名の伏島社長によるオーナー経営型の中堅企業です。

しかしながらグローバルに展開している会社で、グループ会社は様々な国に渡ります。

FREUND-VECTOR CORPORATION(米国の造粒・コーティング装置メーカー)
フロイント・ターボ株式会社(乾式微粉砕機のパイオニア「ターボミル」を開発した横須賀の粉体製造メーカー)
Parle Freund Machinery Private Limited(インドで合弁の医薬品製造機械メーカー)
Cos.Mec s.r.l.(イタリアの独立系中堅製剤機械メーカー)
Freund-Chineway Pharmaceutical Technology Center Co., Ltd.(上海の技術開発研究所かつ医薬品添加剤の販売代理店)

医薬品用のフィルムコーティングから始まり、医薬品添加剤に派生、その後粉体の取り扱いなどでノウハウが溜まり、造粒製造装置や攪拌機に拡大、その後は樹脂の受託コンパウンドなどに広がっているというところでしょうか。ペンとインクという表現をしていますね。

フロイントはドイツ語で友達を表しているとされ、会社ロゴも「友」の字が由来のようです。成り立ち当初からグローバルを意識している会社で、海外売上比率は約6割あります。


2Q決算

売上高:95.8億円
営業利益:1.7億円(1.8%)
経常利益:1.9億円(1.98%)

上半期を終えて、順調に黒字決算を出しています。化成品部門は医薬品業界ですので、地合いは堅調。前年度は赤字であった機械部門も米国の業績が回復して黒字となっています。

こちらは機械部門の概況資料ですが、利益率はあまり良くはないものの、受注が増えているおかげで黒字化となっているようです。

今後のテーマとしては、国内ジェネリックメーカーの大型設備投資のようで、こちらが受注残の増加に繋がっています。過去最高を更新中。

機械部門の地域別の売上高ですが、以下のような構成となっています。前年に比べてアメリカの比率が上がっています。それ以上に伸びているのが中南米です。

・日本:40%
・米国:18%
・中南米:26%
・欧州:6%
・アジア:7%
・その他:3%

・北米自由貿易協定(FTA)加盟国のひとつであるメキシコは、北中南米で最も確立された新興医薬品市場へのアクセスを持っている。
インドの製薬業界は莫大な投資によってメキシコでの足跡を増やし、市場の成長を促進している。
ブラジルはラテンアメリカにおける外国直接投資の主要な受入国であり、医薬品受託製造企業の世界的な製造拠点として台頭しつつある。ブラジルは、2019年に24.9%を占め、ラテンアメリカの医薬品受託製造市場で第2位の市場シェアを占めている。

注目箇所をピックアップしましたが、要するにメキシコとブラジルの受託製造が伸びていて、製薬メーカーの参入余地が大きいということです。

この流れがあってか、フロイント産業の機械部門の中南米への売上も伸びているのだと思われます。

もう1つの軸である化成品部門は引き続き堅調。

・医薬品添加剤:安定した市場
・食品品質保持剤:ネット通販向けのパン向けの需要が増加し、増収

こちらはこのまま安定的に推移する見込みです。

自己資本率は61.6%と高水準で、円安による為替差益もあって足元はそれなりに堅調模様です。通期見込みも売上高200億円の大台に乗せる数字となっています。

狙うはこの辺りの市場ですね。


医薬品製造プロセスについて

せっかく読んでいただいた方は、「GMP」というワードは覚えておくと業界知識を深めることができるでしょう。

GMPとは、「Good Manufacturing Practice」の略で、医薬品製造において非常に重要な国際基準であり、日本では「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準」または「医薬品適正製造基準」として知られています​。

GMPの主な目的は、医薬品の品質を保証し、患者の安全を確保することです​。具体的には、GMPは以下の三原則に基づいています​。

  1. 人為的な誤りを最小限にすること

  2. 医薬品の汚染及び品質低下を防止すること

  3. 高い品質を保証するシステムを設計すること

これらの原則に従って、医薬品の製造プロセスは定期的に監査され、適切な品質管理が実施されます。

GMPの導入と実施は、医療製造業界に多くの影響をもたらしています。以下はその一例です。(※以下の4点はChatGPT4に調べて執筆させています)

  1. 品質向上: GMPの導入は、医薬品等製造所における品質向上のための自主的な改善を促進する目的で行われています​。

  2. 製品リコールと供給中断の予防: 2020年以降、GMPのコンプライアンス問題と関連する品質問題が明らかにされ、大規模な製品リコールと日本の医薬品の供給中断が引き起こされました​。

  3. 法令遵守と監査体制の強化: 厚生労働省は、法令違反行為に対するGMP調査体制の強化を中心に、品質確保と安全対策のための予算を新設しています​。

  4. 国際的整合と信頼の回復: GMPの改正と実施は、医薬品品質システムの導入を通じて国際的整合を図り、医薬品業界全体に対する国民の信頼を回復することを目指しています​。

これらの変化は、医薬品の安全性と効果を確保し、患者に安心して医薬品を使用してもらうことを目的としています。また、国際的な基準に準拠することで、国際市場で競争力を持つことも可能になります。

また、モノづくりにおいては製造プロセスを覚えておくと、この会社はどのプロセスで強みがあるのかな、といったことが俯瞰的に理解できるようになりますので、是非覚えておきましょう。

今回は、フロイント産業の決算説明会資料をもとに、医薬品の製造プロセスが載っています。

・秤量
・粉砕
・分級(粒子径を整える)
・混合・練合(均一に混ぜ合わせる)
・造粒
・乾燥
・打錠
・コーティング
・包装

フロイント産業は規模こそ大きくはないですが、医薬品製造の包装以外のプロセスで関わっていることが分かります。

イメージが付かない人は以下の資料が分かりやすいかと思います。


人材について

人出不足が深刻な日本の製造業では、人材戦略も非常に重要になってきています。今回もOpenworkの口コミを参考にしてみましょう。

前回の記事のローツェと異なり、多少は社員口コミの数がありますので参考になるでしょう。

点数は2.77と低い数字になっていますが、この規模の会社だと3.0を下回ることは多いです。オーナー企業ですので、ある程度の合理性とはかけ離れた意思決定のされ方はあるものと思って入社すべきでしょう。その対価が慣れた時の異常なアットホームさ、ということになります。

企業文化としては一般的なJTCで、古き良き日本の機械メーカー。技術系の会社なので、開発に関わる積極性はあるのが救いなところでしょう。インターナショナルに展開していることもあり、開発には前向きみたいです。

ワークライフバランス自体は安定していて、有給消化6割、残業平均12時間、育休復帰率100%、時差通勤、在宅勤務など、上場企業として一定の待遇はあります。

国内では2社寡占で競合が少ないので、社員はのんびり働いているような口コミが多いです。

その他のコメントでは以下のような点が挙げられます。

・社員の士気が低い
・2代目社長のマネジメント力に不安。やる気はある。
・ファブレスの悪いところが出ている
・次の事業のビジョンが見えない
・マネジメント出来る幹部が少ないが、面子は今後も変わらなそう

取締役には田辺三菱、エーザイ、塩野義など製薬出身であったり、ライオン出身だったりとメンバーは揃えていますが、今後の成長に関しては、市場の伸びという追い風以外ではあまりクリアになっていないようです。

営業力勝負といったところでしょうか。

その点で、敢えてフロイント産業で長く働く必要はない、と考える技術者が一定いることで、点数が2.77と落ち込んでいるように思います。

住宅手当も独身のみ最高7万円/月で、独身にとっては非常に有難いと思いますが、既婚者には無いので、メーカーらしい手厚い福利厚生が自慢というわけでも無さそうです。

年収は30歳500万円くらいで、管理職になると700万円近くになると思われます。


総括

投資対象として良いかどうかは読者の皆様にお任せするとして、フロイント産業の2Q決算を確認することで、医薬品製造の市場拡大の全体像が見えたと思います。

このくらいの規模の機械メーカーも決算が上向いていることが分かりますが、アメリカ市場は世界情勢的に今後どうなるかは分かりません。

アメリカがこけると中南米への投資マネー流入も限定的になりますから、投資される方はお気をつけてください。

ただし、相対的には日本の立ち位置というのは非常に恵まれていて、インドや東南アジアにも進出することが可能です。

アメリカ大陸側が不調でも、医薬品製造で伸びることが確実視されているインドなどにシフトすることも可能です。

フロイント産業もインドに合弁会社も有していますから、世界経済の流れに合わせて柔軟に強化エリアを変えながら事業を拡大していくと良いように思われます。






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