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『テッド・ラッソ』 自分自身が好きになる物語。

『テッド・ラッソ 破天荒コーチがゆく』

この作品を知ったきっかけは、『星野源のオールナイトニッポン』だった。その日の放送は語り出しがとても印象的だったので、鮮明に覚えている。

「一生の作品っていうのが、きっと人それぞれあると思うんですよ。一生自分から離れないだろうなっていう大事な作品。」

「自分の一生大事にしたい作品として、心の取っ手みたいなところに、キーホルダーみたいにカシャッとかかって、きっと外れないだろうな、みたいなものとして、ずっと身に着けてる作品があるんですよ。」

『星野源のオールナイトニッポン』2023年6月13日放送分

源さんの少年時代、祖父の家に向かう途中のバスの中で、パニック障害を起こした話に。おなかが痛くないのに焦る感覚。その時の”感覚”は成長するにつれて消えていき、話に出ることも少なくなった。その感覚を持っている人にしばらく会わなかった。でも、とある人が同じ状態だった。

それが、『テッド・ラッソ』というドラマの主人公、テッドだった。

それでとても気になってはいたものの、この作品はappleTV+限定。新たにサブスク契約するのもきついのよなぁなんて思い、心に引っかかってはいたものの、一時撤退していた。
しかしiPhoneを機種変更したタイミングで、『appleTV+、初回なら3か月無料』というキャンペーンがあることに気づき、早速登録。

念願の『テッド・ラッソ』鑑賞がスタートした。

※ネタバレというほどネタバレはしませんが、登場人物の紹介やセリフの引用などがあるため、これから観ようと思っている方はご注意ください。

※※※※※※※

物語の舞台はイギリス・リッチモンド。そこに本拠地を構えるプレミアリーグ所属のサッカーチーム「AFCリッチモンド」はオーナーが代わり新体制でシーズンがスタートした。新たな監督として迎え入れられたのは、アメリカで学生アメフトの監督をしていたテッド・ラッソだった。
サッカーに関しては経験も知識もない素人監督であるテッド。
彼にオファーが来たのはなぜか。そして彼がそのオファーを受けイギリスにやってきたのはなぜか。
3年にわたるテッドとAFCリッチモンドの日々が始まる。

『テッド・ラッソ』というドラマのことを、星野源さんの言葉から拝借してまとめると、以下のようになる。

サッカーチームの物語だけど、その中身は人間ドラマであり人間関係の話。
登場人物は皆、生まれた環境、社会という環境に対して、バランスが取れていない人たち。そしてそのバランスの悪さを自分の欠点として認識している(されている)人たち。
その人たちが、テッドの言動によってちょっとずつ変化していって、「最高の自分」になっていく物語。
(星野源さんの、作品に対する要約が完璧すぎるので、是非2023年6月13日の放送を聞いてほしい。こういう言語化能力が本当に凄いなと思う。)

そして星野さんは、全3シーズンを通して、登場人物全員のことが好きになると言った。
最初は、本当にそうか?と疑問だった。
でも、見ていて絶対にこいつのことは好きにならない、そう思っていた人ですら(例えばルパートね)、本当に、確かに最終回を見終わった時、少しだけ好きになっていた。
悪い人なんていない。
皆、自分の中の欠点と闘いながら生きている。
(あ、やっぱりいたわ。アクフーだけはダメ。笑)

そしてテッドは「信じる」人であり、「認める」人であり、「許す」人なのだ。

彼の言葉には大きな力があり、少しずつ少しずつ、その言葉を受け取る人々のことを解きほぐしていく。
確かにサッカーに対する考え方は「破天荒」かもしれないけれど、彼が言うように「勝敗は関係なくて」、その人が「輝いているかどうか」「幸せかどうか」をフォーカスしているので、結果的にサッカーの常識からは離れた言動になっていくのだと思う。

主力選手が抜け、自信を失ったボロボロのチームに対して。
裏切った仲間のことが許せないメンバーに対して。

どうせ考え込むなら、希望を信じていたい。
状況は良くなる。
俺たちは強くなる。
そう信じていたい。
自分を信じること、互いに信じあうこと。
それは、生きることの基本だ。
お前たちが本気で信じるなら、その信念は破られない。

シーズン3 エピソード5『お告げ』

どん底の時に起こした行動で人は評価されるべきじゃない。
やり直す機会を得た時に、どれだけ強さを見せるかで判断すべきだ。

シーズン3 エピソード11『マム・シティ』

テッドは彼らをことごとく信じ、認め、許した。

テッドによって輝いていくAFCリッチモンドと、AFCリッチモンドでの日々によって自分を見つめ直し、大切なことに気づくテッド。

3シーズンを通して、AFCリッチモンドのメンバー全員のことが大好きになった。
彼らをもっともっと見ていたかった。ずっと応援していたかった。
シーズン3の最終回は、ずっと泣いていた。あまりにも”完璧”すぎる1時間だったから。
彼らとお別れしたくなかった。
でも、シーズン3でしっかりと完結したこのボリューム感は完璧だったと思う。
そう、本当に”完璧”な作品だった。

本当は自分の好きなキャラクターのことも掘り下げたかったけど、文字数が多くなってしまうので割愛。でもきっと皆さんにも”推しキャラ”ができると思う。自分に似た誰かが、必ずいるはずだから。自分と同じ悩みを抱え必死に生きる”仲間”がいるはずだから。
でも一応書いておくと、私が一番好きなのはロイ・ケントとジェイミー・タートの最高の師弟コンビです。(シーズン1だけ見たら信じられないと思うけど。)

ということで、多くの人に観てほしい。appleTV+に契約して観てほしい。
心からそう思う作品、『テッド・ラッソ 破天荒コーチがゆく』
きっとあなたも、登場人物全員のことが好きになるし、自分自身のことも好きになる。

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