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本に愛される人になりたい(75) 倉本一宏「藤原氏」

 ある物語執筆用資料として、倉本一宏さんの「藤原氏」を手に取り再読していました。藤原氏といえば、現在NHKの大河ドラマ「光る君へ」で描かれる藤原道長が有名ですが、彼の父系を遡ると藤原北家の房前がいます。この藤原北家とは、房前の父・不比等に子供たちが四人いて、武智麻呂(南家)、房前(北家)、宇合(式家)と麻呂(京家)に分かれた家の一つです。さらに、この藤原不比等の父親が藤原鎌足。つまり、あの大化改新の中臣鎌子です。
 こうして日本史の家系などを辿るのにハマったのが中学二年生のころでした。
 代々京都市中の家系で、当時は京都の太秦に住んでいたので、神社仏閣にはことかかず、さらに学校で習う日本史は、平安京から徳川時代まで、さらにその後も明治維新のドサクサもあり何かと京都が舞台になっていたので、日本史が身近にありました。つまり、教科書上の話ではなく、リアルに人が生き、騙し合いや殺し合いが行われた実感がありました。そうした実感を肌身で感じる私でしたが、学校の日本史の授業は教科書に沿って淡々と進んでいくので、どこかに違和感を感じていました。単なる情報を記憶する感じとでも言えばよいでしょうか。
 ある日のこと、時代をゆっくり遡ってみてはどうだろうと考えたきっかけが、藤原氏でした。他にも、例えば徳川家康。彼の父親は松平広忠で、父系を遡ると、徳川家康→松平広忠→松平清康→松平信忠→松平長忠→松平親忠→松平信光→松平泰親→松平親氏となり、「松平氏由緒書」では彼が徳川家の始祖とされています。さらに、この松平親氏の父が、得川 有親 / 世良田 有親と言われており、徳川家康が「徳川」と名乗る根拠にしたのが、この「得川」だったようです。
 こうやって、藤原道長や徳川家康の父系を遡ることで、その人物が属していた家の歴史がどのように歴史に揉まれてきたのか、人間味溢れる「歴史観」がそこに見えてくるようです。
 こうして有名な歴史上の人物の家という単位で遡るだけでなく、衣食住などの文化史を遡るのも良いかと思います。
 さて、藤原氏です。本書の著者・倉本一宏さんは「私は頼道の晩年までは古代で、道長・頼道が古代の集大成と考える方がいいのではないかと思っている」と語られています。
 やがて摂関政治・院政の時代も、保元の乱・平治の乱を経て、平清盛が現れ武家の時代が胎動します。
 時代を遡り、そして時間の経過に沿って始祖から時代を追ってゆくと、歴史が立体的に立ち現れてきますので、ぜひお試しください。中嶋雷太
 

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