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私の好きな映画のシーン(47)『カサブランカ』

 齢を重ねると、好きな映画のシーンが溜まりに溜まっているのに驚きます。有名無名かかわらず、私の心に深く刻まれたシーンたちです。
 第二次大戦下、アメリカが参戦した翌年の1942年に製作された『カサブランカ』のラストシーンもまた、その一つです。
 フランス領モロッコで酒場を経営する主人公のリック(ハンフリー・ボガード)がルノー署長(クロード・レインズ)に拘束されますが、そのルノー署長はそのラストシーンでヴィシー水をゴミ箱に捨てて蹴ります。ナチスドイツによるフランスの傀儡政権ヴィシー政権がヴィシー水というミネラルウォーターの産地だったこともあり、ストーリー上はヴィシー政権におもねっているようにも思われたルノー署長の反抗心がキラリと描かれています。
 第二次世界大戦下でのある種のプロパガンダ映画だったのかもしれませんが、本作品は、戦時下という時代背景をしっかり描きつつ、単なる恋愛映画の枠を超えた、反戦のあり方を見事に描いた作品だと思っています。
 日本公開は1946年6月で、亡父も復員兵として劇場で観たようです。
 今となっては、常軌を逸した戦争に揉まれ生き残り復員兵として日本に復員した亡父が、本作品を観て何を思い感じたのかを聞いておけば良かったと思います。 中嶋雷太

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