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本に愛される人になりたい(23) レイ・ブラッドベリ「火星年代記」

 本書を読む前に、テレビ・ミニ・シリーズ版を観ていました。本書の著作権発効年は1946年ですが、発行は1950年となっていて、ハヤカワ文庫による翻訳版は1976年となっています。
 テレビ・ミニ・シリーズは、アメリカのNBCと英国のBBCの共同製作で1979年放送され、日本ではTBS系列で、4時間を超えるミニ・シリーズを、3つのエピソードに分け、スペシャル・ドラマとして放送されたようです。1975年の高校入学前後からハヤカワ文庫にはまり、SF作品を怒涛のごとく読み漁っていましたが、本作品は何故か手に取ることなく、ハヤカワ文庫版が発行された1976年から3年後の1979年の放送版を見たわけです。
 監督は『八十日間世界一周』のマイケル・アンダーソン。主演はロック・ハドソン。西部劇や『ジャイアンツ』のイメージが濃かったロック・ハドソンだったので、SF作品にその姿があると、どこか不思議な気がしたのを覚えています。
 さて、本書ですが、人間の物質文明の狂気が描かれながらも、火星という砂漠のような乾燥感(ドライ感)と空気の希薄感が相まって目眩しそうになりました。1999年1月「ロケットの夏」から2026年10月「百万年ピクニック」までの全26編に渡る、人間(地球人)の物悲しさは、初版発行1950年から半世紀を超え、心深くに訴えてきます。ストーリーについては、ぜひお読みください。
 この狂気は、本書の前に読み、映画版も観ていた、レイ・ブラッドベリの「華氏451度」から連なっています。情報はテレビやラジオだけの画像や音声の感覚的なものばかりで、漫画以外の書物はファイアマンにより焼却され逮捕されます。すべての意味をプラスチックで覆われたような息苦しさを「華氏451度」に感じたものです。1966年公開のフランソワ・トリュフォー監督の映画版もぜひ。
 地球ではなく火星を舞台にすることで、人間の狂気が結晶化されるのかもしれませんが、この結晶はかなり危険で何十年も経過したいまでも、私はその狂気を、益々身近に感じています。中嶋雷太

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