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足部のバイメカからみた方向転換

方向転換とは、歩行をしている方であれば日常生活でも頻繁に行われる動作です。

ですが動作の難易度や身体への負荷は意外と高く、スポーツ場面では非接触型の膝前十字靭帯損傷が起きやすかったり、高齢者での転倒事例も多い動作となります。

方向転換とは大きく分けると下記の2種類で、
①進行方向を変える(何かを追いかける、障害物を避ける)
②体の向きを変える(着座の前に向きを変える)
と分けられます。

今回は文献を参考に、①の進行方向を変える動き(=前方に対しての方向転換)にフォーカスを当てて解説していきます。


方向転換の戦略は2つ

理学療法学 方向転換におけるバランスをどう見るか より引用

Aクロスステップ

名の通り、方向転換をする際の脚が軸足を交差して進む方法です。
クロスステップは支持基底面が小さくなる動作のためバランスを崩しやすいです。ですが不思議なことに高齢者はクロスステップを選択しやすいそうです。

*高齢者は下肢筋力が低下しやすく減速が困難なことにより動きの中で咄嗟に出来るクロスステップを選択しやすいのではないかと私は考えます。(方向転換には下肢や体幹の力を使って減速することが重要となります。)

Bサイドステップ

クロスステップとは異なり、軸足と進行する脚が交差しない方法です。

+α ピボット要素が加わるかどうか

ピボットとは、軸足の前足部(または踵部)を中心に回転する動作のことを言います。

瞬時に進行方向を変えることができるためバスケットボールやテニス、サッカーなどで多用されますが、同時に関節負荷も大きい動作となります。

ここでは方向転換の1要素として、クロスステップ+ピボットといった感じで考えます。
ピボットを含まない場合でも大きく方向転換をすることはできますが、その場合は前足部や股関節、体幹の回旋要素を大きく必要とします。

方向転換のバイオメカニクス

方向転換では、頭部から尾側へ順番に回転していくほどエネルギー効率が良いとされています。

転倒歴のあるものではこの時の体幹の回旋角度が少ないと報告があります。

足部の動きについて

進行方向を変えるためには接地の際の足部の向きが重要です。

足関節(距腿関節)は1軸ですので、向きを変えることができません。
ですが前足部は母趾と小趾の屈伸軸が異なるため、前足部の柔軟性を駆使することで身体の向きを変えることができます。

そのため前足部の回転機能が方向転換に重要となります。

理学療法学 方向転換におけるバランスをどう見るか より引用

またこの時に股関節との連動性を発揮し、体幹の垂直性をいかに保てるかが方向転換の安定性に大きく関わります。

簡易的な評価では爪先立ち+左右の重心移動などが見やすいです。

重心移動した際の①動揺②肩の力の入り具合③骨盤の高さなどを見ておくと左右差を確認できると思います。

エクササイズに活かす

ここまでの知識をエクササイズに活かしていきます。

開始姿勢(軸足側の上肢挙上)
①爪先立ちで止まる。
②軸足の小趾側へ重心を移動
この時に、手を天井に伸ばすように伝え、ラテラルラインの連結を促進
③身体がブレないようにクロスステップを踏む


方向転換での不安定性がある方や怪我された後のリハビリテーションでも活用できると思います。

難易度を下げる場合には壁に両手(指先)をつきながら行いましょう。

難易度を上げたい場合はスピードを上げる、歩幅を広くするなどの調整をしましょう。

今回は以上となります。


参考文献)
磯あすか.方向転換におけるバランスをどう見るか.理学療法学.2021.


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