理学療法メモ

理学療法に関する情報を発信していきます。

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最近の記事

腰椎ヘルニア 原因の鑑別評価

腰部疾患において腰部のみに問題があることは非常に少ない。 腰椎椎間板ヘルニアにおける胸郭や骨盤帯のマルアライメント、生じやすい機能低下などを再確認したため、記事にて自身の知識整理をする。 今回は腰椎屈曲・側屈ストレスの要因となっている腰椎周囲の環境の評価を主に取り扱う。神経の障害領域やその評価については別の機会に共有したい。 腰椎ヘルニアとは 体幹屈曲または側屈によって椎間板組織に圧縮ストレスが加わり、その動作の反復によって発症する腰部疾患である。 腰椎ヘルニアの症例の

    • 足部のバイメカからみた方向転換

      方向転換とは、歩行をしている方であれば日常生活でも頻繁に行われる動作です。 ですが動作の難易度や身体への負荷は意外と高く、スポーツ場面では非接触型の膝前十字靭帯損傷が起きやすかったり、高齢者での転倒事例も多い動作となります。 方向転換とは大きく分けると下記の2種類で、 ①進行方向を変える(何かを追いかける、障害物を避ける) ②体の向きを変える(着座の前に向きを変える) と分けられます。 今回は文献を参考に、①の進行方向を変える動き(=前方に対しての方向転換)にフォーカス

      • 肩関節の苦手を一つずつ紐解く

        肩関節疾患の治療に難渋するセラピストは多いのではないだろうか? 筆者も肩関節の治療に対して苦手意識があり、今も模索中だが思考整理の一助となった肩関節の特徴と筋力についての考え方をまとめた。 肩関節の解剖学的特徴肩は他の関節と異なり、構造的に安定した関節ではない。 小さな関節窩に対して骨頭が大きく、骨性の連結が乏しい浮遊関節である。 肩甲骨が胸郭上を浮遊しているため、肩以外の関節から多くの影響を受ける。 そのため肩関節で重要なのは安定させるための機能であり、それらを筋力評価

        • PTができる腰痛への介入方法とその効果

          こんにちは、理学療法メモです。 回復期病棟を辞めて訪問看護ステーションで働くようになった私は、腰痛を持つ患者・利用者の数に驚きました。 もちろん、全員が腰痛に悩んでいるわけではありませんが PTの介入を希望されるかたで腰痛を持っている割合が非常に多いなと感じたのです。 しかし、ひとことで腰痛とは言っても原因が人により異なるため同じ介入方法では当然良くなりません。 今回は腰痛診療ガイドライン2019改定第2版を参考に、腰痛に対してできる介入方法をその効果についてまとめて

        腰椎ヘルニア 原因の鑑別評価

          方向転換を解剖する

          動きにキレがない 相手の動きについていけない 動き出しが遅い こういったものは対人スポーツでよく挙げられる課題だと思います。 今回帯同チームから方向転換時の身体の使い方の指導を依頼され、改めて自身でまとめたので、共有できればと思います。 今回はスポーツを行っている学生やスポーツ選手への指導を想定した内容となっています。 無駄のない方向転換は上記のような課題をクリアするためのヒントになると思うので、ぜひ最後まで見ていってください。 また今回は方向転換に伴う知覚・意思決定

          方向転換を解剖する

          今更ながら自己紹介をさせてください。

          こんにちは、私たちはノート上で理学療法メモという名前で活動させてただいております。 名前の通り私たちの仕事は理学療法士なのですが、このアカウント実は2人で運用しています。 そこで今回は少しでも私たちのことを知ってもらおうと2人の自己紹介を簡単にしていきます。 ①1号こんにちは、1号です。 略歴・活動内容 私は5年目の理学療法士で元々は回復期リハビリテーション病棟で勤務しておりました。 そこでは脳血管疾患を中心として、他にも下肢骨折、脊髄損傷、交通事故外傷後の方を担

          今更ながら自己紹介をさせてください。

          パーキンソン病のすくみ足に対する理学療法

          今回はパーキンソン病の4大症状の一つでもあるすくみ足に対する理学療法についてまとめていきたいと思います。 以前パーキンソン病患者のための環境設定についてまとめたのでこちらの記事もご覧ください。 パーキンソン病は多系統疾患として捉える必要があり、振戦、固縮、無動、姿勢反射障害などの運動症状だけでなく、認知機能障害、記憶障害、自律神経障害、睡眠障害などの非運動症状も引き起こされます。 パーキンソン病では①疾患による障害(振戦、固縮、無動、姿勢反射障害、遂行機能障害)②長期投

          パーキンソン病のすくみ足に対する理学療法

          腰椎後弯にどうアプローチするか

          加齢による変形(前屈作業など)や腰椎圧迫骨折、腰椎すべり症などによって生じる腰椎後弯変形は、高齢者にみられる代表的なアライメントの一つである。 今回は腰椎後弯変形によって生じる周囲の状態とその治療戦略を復習したので、まとめていく。 腰椎・骨・関節腰椎圧迫骨折例では骨の癒合が得られるまで椎体前方が徐々に潰れていく。腰椎すべり症では後方へのすべりによって腰椎前弯が徐々に減少していく。 脊椎全体のアライメントは腰椎前弯の減少によって平背(flat back)となり、最終的には

          腰椎後弯にどうアプローチするか

          パーキンソン病の住環境整備について

          今回は在宅生活をされているパーキンソン病の方と関わる機会をいただいたため、その方の為になれるように住環境整備の注意点などをまとめてみた。 パーキンソン病の概要公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センターにはこう記載されている。 1年間の症状増悪を追跡した研究ではADLで3.3%。運動機能で2.1%の低下を認めたと報告されている。 症状 症状の多くは安静時振戦から出始まり、動作の拙劣さへと繋がっていく。初発の症状には左右差があることが多い。 表情は硬く(仮面様顔貌

          パーキンソン病の住環境整備について

          骨盤帯のアライメント評価

          骨盤帯は仙骨と左右の寛骨によって構成され、単に前傾・後傾だけでなく内外旋や傾斜・下方回旋などさまざまなアライメントを見せる。 今回は骨盤帯のアライメント評価とその周囲の筋や関節の振る舞いについてまとめていく。 骨盤帯寛骨 寛前傾・後傾 対象者を背臥位にしてASISの頭尾側方向の高さを比較する。頭側にあれば後傾、尾側にあれば前傾である。腹臥位でPSISをみてもOK。 動的な寛骨アライメントを見たい場合はジレットテスト等を用いる。立位で片脚立位+対側股関節屈曲を行う場合、股

          骨盤帯のアライメント評価

          頚椎症についてまとめてみました。

          前がき在宅でリハビリテーションを行っていると様々な症例に出会う。 今回は頚椎症の症例と携わることがあったが、自分の知識が不足していることに気づいたため頚椎症の基本的な知識から初回介入に向けた評価についてまとめて行きたい。 頚椎症の基礎知識疫学 好発は50代で、女性よりも男性の方が2倍症例が多い。 自然経過としては上肢症状から始まり、徐々に下肢痙性麻痺、温痛覚障害へとつながっていく。 生命予後は正常群と比較すると平均9年縮まっているとの報告もある。 初期症状は両手手指の痺

          頚椎症についてまとめてみました。

          膝外側の解剖と機能

          膝外側に張りや痛みなどの症状がある場合、なんの組織が原因なのだろうか? 膝関節は関節自由度が低く、過剰な動きをコントロールするための靭帯・軟骨・軟部組織が多数存在する。 股関節と足関節の中間関節でもあるため、常に上下からの影響を受け、本来の動きから逸脱“させられて“しまうことが多い。 習慣的に本来の動きから逸脱させられ続けた結果、動きを制動している組織に損傷が生じ痛みや張り感となる。 今回は膝外側にある組織の解剖と、それらがどういった役割があるかまとめていく。 組織の場

          膝外側の解剖と機能

          坐位の座り直しについて考察【後編】

          前回では座り直しについて考察していく上で前提となる言葉の説明をしてきた。 是非お時間のある方は前編を参考にしていただきたい。 脳卒中患者の座り直しで臨床上よくあるパターン①前傾する時に非麻痺側へ大きく偏るため座り直した後も麻痺側殿部が十分に後方へ移動できていない こういった場合には起立着座練習の中で坐骨⇨足底の重心移動や、下肢(足底)を接地する感覚を訓練すると改善できる可能性がある。 ②下肢が伸展するのみで場所が変わらない シーティング見直しを検討する。 (フットレス

          坐位の座り直しについて考察【後編】

          運動器エコーの初歩

          皆さんの病院ではエコーによる画像検査を活用していますか? 近年はPTがエコーを使って評価・治療を展開していくことが選択肢の一つとなりつつあります。 今回は、 ①簡単なエコーの仕組み ②長軸像・短軸像の違い ③各組織がどう見えるか についてまとめていこうと思います。 筆者も初めは何が見えているのか、どの方向から見ているのかすら分からず、苦戦した覚えがあります。 エコー画像をみる最初の一歩を手助けできるような記事にできればと思います。 エコーの仕組みつまり、解剖学の知識

          運動器エコーの初歩

          坐位の座り直しについて考察【前編】

          人間の基本的活動はほとんど座位姿勢で行われる。 以前回復期病棟に勤務していた時は脳卒中患者を多く受け持つことが多かったが、あまり良い姿勢といえない状態の方が多いと感じていた。 そこで今回は今まであまり取り上げられてこなかった脳卒中患者における「座り直し」について運動学的側面や神経的側面から考察していこうと思う。 記事が長くなるため2回に分けて執筆していく。 坐位の役割直立立位はヒト特有の姿勢であることは学校で習ったことがある人が多いだろう。 犬も猿も座ることはできる。

          坐位の座り直しについて考察【前編】

          歩行分析 機能的課題と印象 後編

          歩行分析シリーズの後編となります。 前編では ①そもそも歩行とはなにか ②重要な機能的課題と3つの相 ③観察の手がかりとなる歩行の印象 などの事前知識を中心にまとめました。 まだ見ていない方はぜひ、こちらをふまえて後編を読んでいただけると嬉しいです。 後編ではより具体的に、3つの相における ①観察の着眼点 ②治療的評価 ③解釈の一例 をまとめていきたいと思います。 ぜひ最後までお付き合いください。 前編のおさらい前編のポイントを振り返ると、歩行には大きく3つ

          歩行分析 機能的課題と印象 後編