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「見えないを見る」を終えて: 哲学者 鞍田崇さん


2020年2月に、当時在学していた国際基督教大学で開催したイベント「見えないを見る〜衣・食・住・エネルギーから探る、これからの暮らし」。イベント後に参加者から寄せられた質問を中心に、4人の登壇者に事後インタビューを実施しました。
2人目は、「衣」の分野でご登壇いただいた哲学者の鞍田崇さんです。

哲学の道に進んだきっかけ

ーーそもそも、鞍田さんが哲学者になった経緯を教えてください。

鞍田:失恋かなぁ(笑)。哲学者になった経緯というより、哲学への興味がグッと深まったきっかけは。
もともと英語が好きで、高2の夏にはホームステイ行ったりもして、外大志望だったんです。でも、「言葉(言語)ってツールだよな。それで何がしたいんだ?」みたいな気持ちに次第次第になっていっての、失恋(笑)高校2年の2月のことでした。
って、これ、語り出すと、いくらでも語れるネタなので、今はこれくらいで。

――そうだったんですね(笑)普段はどのようなことについて考え、大学ではどういった内容を教えていらっしゃるのですか?

鞍田:普段は「何を食べようかな」とか「今日は何着ていこうかな」とかですよ、哲学者も。ただ、哲学のおかげかどうかはわからないけど、日常を見たり感じたりする解像度が、年々上がっている気がします。小さなこと、例えば、電車の中で、ふっと見上げたときの窓の外の光景に感動したり。そういうことは多いです。
大学では、明大は理工学部の一般教養担当で、「社会学」という授業を受けもっています。これはもともとあった科目名で、やっていることは哲学とデザインをかけあわせたような感じです。

哲学における、「見る」こと

――参加者の方からは、トークで鞍田さんが話されていた「半眼」の話にとても納得した、という声がありました。

↓トークのレポート記事はこちら↓

鞍田:ありがとうございます。哲学に引きつけても当てはまるんです、「半眼」。
20世紀の哲学は古代ギリシア以来の哲学のあり方を根本から見直そうという動きが活発だったんですが、そこで問題視された旧来の哲学のあり方に「視覚の優位」っていうのがありました。例えば、プラトンの「イデア」も、元は視覚的形象のことでもあったり、暗黙のうちに「見ること」がモデルとなって、さまざまな思想が生み出されてきたわけです。でも、その結果、リアリティからは遠のいてしまって・・・。
見ることよりも触れること、精神よりも身体を、もっと重視しようという哲学の流れが、半眼の考え方とも結びつくところだと思います。

――その「半眼」含め、トークでお話されていたようなことについて、ご自身ではどのように行動し、携わっていらっしゃるんですか?

鞍田:何を話したのか、あまり覚えていないのですが・・・。ボク自身は、大学で教えたり、研究室で読んだり書いたりだけじゃなく、研究上からも、なるべく「外」に出るように心がけています。具体的にはフィールドワークですね。
繰り返し訪ねているのは、奥会津の昭和村、新潟の燕三条、愛知の常滑市、それから山陰の鳥取・島根かな。民藝にフォーカスしていることもあって、いずれもものづくりの街・地域です。そういうところで、地元のひとと話したり、工房を見せてもらったり、そういう活動をしています。

――そうなんですね。イベントの中で「感性を磨く」ことについてお話されていましたよね。参加者の方から、もっと具体的に聞きたいという声がありました。スマートフォンについては、なぜ危機感を感じるんですか?

鞍田:ひとつはますます「見る」ことばかりになってしまうから。目以外で感じることに、もう少し意識してもいいかと思います。といって、見ることが全面的に悪いっていうんじゃないんですよ。見るとしても「全体を見る」とか意識するといいかも。
例えば、ボクの本棚の一画は、ジャンルとか著者とか関係なく、背表紙の色でまとめて配置してます。青い棚、赤い棚、黄色い棚、白や黒や、そういう感じ。書名はどうでもよくて、ぱっと全体見渡した時のまとまりが心地よくて。そういう感覚、細部認識よりも全体把握みたいな、そういうことに意識向けてみるのも、なにか感性を磨くことにつながるかもです。

――なるほど、面白いですね!

「お金」の意味

――では最後に、4名の登壇者共通の質問が来ています。鞍田さんにとって、「お金を稼ぐ」とはどんな意味がありますか?

鞍田:意味かあ・・・。ボクは貯金が苦手なんです。
お金って基本的にまわっていくものだと考えているので・・・。
もらうこともだけど、使い方が大事だと思っています(言い訳)。

ーー使い方が大事、その通りだと思います。
鞍田さん、今日はありがとうございました!

(メールインタビュー:臼井里奈)

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