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過去を知ることについて

僕は今日、歴史博物館に来ている。
特に歴史に興味があるわけでもないが、暇をもて余していたのと近々ある期末テストの参考にでもなればと思ってここに来ることにした。
中へ入ると歴史的価値があるという品が、解説と共にガラスケースに飾られている。
僕には、薄汚れたただのガラクタにしか見えない。
何の興味も沸いてこない。解説を読んだところでイマイチよくわからない。
ここに来たことを早々に後悔した。
やっぱり歴史なんて嫌いだ。
過去を学んで何になるというのか。
大事なのは今現在、未来の方だろう。
過去ばかり見ているだけじゃつまらない。
一定の間隔で並んだ展示品を横目に歩いていると傘が目に入った。
今この世界では急速に文明が発達しているというのに、傘だけは形を変えていないらしい。
…昔の人も足元をぐちゃぐちゃにしながら大雨の中を傘差して歩いていたのだろうか。
そう思うと全く面識もない、関わりも何もかも知らない、時代も違う大昔の人たちに少しだけ親近感のようなものを抱いた。
傘の形が昔から変わっていないなんてことを知ったところで来週のテストの一点にすらならないわけだけれども。
…やっぱり過去のことなんて役に立たない。
飾られている展示品にはやはり興味が出ず、早々と出口に足を進めた。
博物館から出ると、雨が降っていた。
僕はいつも天気予報を見ずに外出する。そして出先で雨に降られて天気予報を見なかったことについて後悔する。
仕方ないのでこのまま歩いて帰ることにしよう。
降る雨はなんだか薄汚れた自分を洗い流してくれるようだった。
街行く傘の群れはずっと昔から変わらない。
僕が過去を知ろうと思った日の思い出である。

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