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人間に対する「もったいない」が嫌い

とは言っても、色んな文脈があると思うので一概には言えない。

ここで自分が示しているのは例えば、「付き合ってる人居ないの?」と聞かれて居ないと答えると、「美人なのに勿体ない」とか「いい奥さんになりそうなのに勿体ない」とか人が言う時の話だ。つまり恋愛絡みの「もったいない」に対して違和感を感じる。

実際には自分はそう言われたとしても愛想笑いで流すし、その時はリアクションに困る程度だ。もちろん言った本人だって大した意味もなく社交辞令的に言っているのだろうし、あるいはそう言う事で相手を褒めているつもりなのかもしれない。決して自分が思っているような意図を持ってはいないのだと思う。

でもその言葉が何故か心に引っかかって、後になって何故か穏やかな怒りが湧いてくる自分がいる。決して言った本人にというわけでは無いけれども、なんとなく、その(恋愛をめぐる)「もったいない」というコンセプトに対しての怒り…なのだと思う。

自分だけかもしれないが、「もったいない」という表現は少し分かりにくい。自分は英語と日本語両方で物事を理解するタイプなので、「もったいない」という日本語に対応する英語である「such a waste」から、もったいないの本質を理解したと思う。

wasteはつまり「無駄」である。何かが無駄になっている時に感じる感情が「もったいない」なのである。

例えば、本当はものすごくある事において能力が高いのに、正当に評価されずにくすぶっている友人がいたら「もったいない」と思う。もしかしたらそれと大差ない感情なのかもしれない。ポテンシャルがあるのに。もしその環境にいたらいいものをたくさん生み出せるのに。周りにいい影響を与えられるのに。そういう感情だ。

しかしそれが恋愛絡みになると途端に反発心が生まれるのを感じる自分がいる。

恋人がいなければ、パートナーがいなければ自分は「無駄になっている」のだろうか?結婚できなければ自分は「無駄になっている」のだろうか?子供を産まなければ自分は「無駄になっている」のだろうか?

遺伝子を残さなければ、その人は永遠に滅びてしまうのか?

少し話がそれるかもしれないが、自分は同性のパートナーと人生を歩むつもりなので、同性婚に関する人々の見解には興味がある。

同性婚に関する議論の中で必ず目にするのは「生産性」という概念だ。

彼らの言う「生産性」はほとんど肉体的(生物的?)生産性のことであって、子供を産むことに関してのことである。世界的には人口が増えすぎて地球はもう人間を養うことができないと言われているが、日本規模で言えば子供が少ないというので産めよ増やせよの価値観がまだ根強い。

これに関しては思うことが多すぎてここで話すのはあまりに長々としてしまうので、改めて他の記事としてまとめようと思う。

簡潔に言うと、自分は遺伝子を残すことだけが生産性ではないと思っている。子孫がいなければその人は完全に滅びてしまうとは思わない。人間の一生はもっと複雑で、血のつながっていない子供にしろ、他人にしろ、深い影響を与え合って生きている人は皆誰かの中に痕跡を残している。綺麗ごとと思う人もいるかもしれないが、そもそも遺伝子を残すこと、子孫を残すことはそんなに重要なことかどうか自分にはわからない。よく動物が「子孫を残すために」こういった習性がある、とかこれは人間の子孫を残すための本能だ、といったことをよく耳にするが、そういった能力があるという事実に上乗せした「~のために」という「意図」は人間による解釈でしかない筈だ。人間は自分で自分を作ったわけではないし動物やその他の生けるものを作ったわけでもないので、それが備えている能力の「意図」は神にしかわからない。自分はそう思っている。

実際の所、人が子供を作る時は単に愛からくるのであって、なにかよほどの環境があって子孫を残さなければというプレッシャーがない限りは「人間という種を存続させるために子供を作ろう」と思っている人は相当珍しいだろう。

誰かにとっては家庭を持って子供を育てること、それが人生であり生産性なのかもしれない。誰かにとっては自分の能力を最大限に発揮できる仕事が生産性なのかもしれない。でも、ほんとうにその人が人生で何を「生産」したのか、しなかったのか、そしてその価値は誰にもわからない。

結局、人間に対する「もったいない」は全て大きなお世話なのだ。

上に書いた、キャリアや仕事、能力に関する「もったいない」だって、大きなお世話だ。もしその人がずっとそのキャリアを築けなかったらその人は「無駄になった」のかといえば、そんなことは誰も評価できない。それは本人にしかわからないし、本人にすら分からないのかもしれない。決めることはできない。


絵の勉強をしたり、文章の感性を広げるため本を読んだり、記事を書く時のカフェ代などに使わせていただきます。