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美術館ノ仕事ハ。

 朝の通勤電車は嫌い。
夜の満員電車は面白いけど、朝の満員電車の中に面白さを感じたことはない。

美術館の監視員のアルバイトをしている。

ロン毛の自分がスーツを着て社会人のフリをして揺られる京阪線は、仕事が出来そうな人が多くて、朝メイクしながら電車乗ってる人や朝から爆睡してる様なちょっとファニーな人間らしい人間はいない。

美術館に着くと点呼されるまで外で待たされる。この時間嫌いじゃない。
点呼されるまで待つ時間には決まって中之島の空を見上げる。
都会の喧噪が大きな風の音を立てて朝なのにせわしなくて、「そんな焦るなよ、バカ。」と声を上げたくなる。

美術館の仕事は至ってシンプルだ。
作品保護の為である。張られている結界に入られないように声掛けしたり、動画撮影、その他の見張りで置かれている。

美術館の監視員の仕事はきっと僕には向いていて、
ぼーっとする時間が多かったり、作品を見たりしながらあれやこれやを考える時間に使えるからだ。やることがないわけではないが、マルチタスクが苦手な僕にとっては都合の良いお仕事である。
館内は作品保護のため、水、虫を排除した20度の空気の無菌空間の中に8時間拘束される。アクションが極端に少ないので、キツい人にはキツい仕事なのかなあと思ったりする。

美術館に来る人は様々だ。年配の方が多いが、子連れの方も、海外から来た人も、、若い子も増えてきているのかなと思う。なにかを携帯にメモしている人もいるし、写真ばかりとって10秒も見ない人もいたりする。友達とキャッキャ叫びながら
「この絵、めっちゃエロくね?」とか言ってるヤツもいておもろい。

まあどんな感想やどんな見方があるにしろ、美術館は何か日常にアクセントを加えられるような、そんな場所を提供してあげてる美術館は素敵だ。
普段考えないこと、毎日繰り返すような生活の当り前をもう一度再定義、再構築させてくれるようなそんな場所でもあるのだろう。

仕事してる中で一番面白い作品はリリアン・レインの「液体と反射」だ。

リリアン・レイン 「液体の反射」

こんなん。

暗室で見ることができるインスタレーション作品というものらしい。(細かいのは調べてね。)
ボールには水が入っていて、回転するターンテーブル上で、大きい方が中心部で少しだけ動き、小さい方がそれを太陽として周回するような軌道で動いている。

これの面白いところは1時間毎に電気が明滅する所だ。
電気の付かない1時間はスタンドライトを代わりに置いて室内には入れないようになっている。僕はそのライトをセットする作品のお手伝いをさせて貰っている事になる。
「へっへーん他の人は入れないからな」とイビり散らかすことができる面白いポジションである。(電気付いてるときは勿論誘導してます。)

今やってる展示は2024.1.14までだから時間があるときに遊びに来てね。
案内してあげたいくらい。無理だけど。

今僕が行う生活で一番まともなことがこれ。
後は音楽しかねえ。かすみたいな生活を送ってるよ。

じゃあねん。待ってるねん。


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