この本が図書館で借りられますように
『本当の貧困の話をしよう 未来を変える方程式』 石井光太
読了レビューです。
文字数:約1,300文字
ネタバレ:一部あり
これから日本は少子高齢化がさらに進み、人口が減少していくことが確実とされている。
政府は少子化対策をしているように見えるけれど、私にはそもそも「対策」と称しているのが疑問だ。
子供が増えない理由は本書にある貧困も無関係ではないし、価値観の変化や教育費の増大など、複合的な要因が絡んでいる。
将来に希望を持てない10代が「死にたい」とSNSでつぶやいたら、それに悪い大人が寄ってくる社会もまた、要員の1つに違いない。
死にたいと願う理由も複数あれど、両親の不和のちに離婚、1人親への偏見、虐待、家出などといったすべてに貧困は関わっている。
本書は渦中の10代向けに書かれたもので、叶うなら私のような斜陽の人ではなく、未来ある中高生あたりに読んで欲しい。
◇
本書の副題にある「未来を変える方程式」には、残念ながら本人だけの努力では足りないことを示しており、周囲からのサポートが必須とされている。
それを「運の良い人しか救われない」とするのは早計で、そもそも世界の仕組みが運任せなのだと思う。
著者は冒頭で次のように書いている。
こうしてnoteにレビューを書く、あるいは読むためにPCやスマートフォンといった電子機器が必要だ。
そうしたものを持っていない10代は少ないかもしれないけれど、もしも本書に興味を持った場合、書籍であれば図書館で借りることもできる。
本書の価格、税込1,650円は人により高い安いが変わる。ただ、すくなくとも気軽に出せる金額ではないと思う。
仮に図書館がなければ本書を手に取れる機会は失われ、何かしらの糸口を掴めたかもしれない誰かは、そのまま沈んでいくかもしれない。
そうしたものも周囲からのサポートと同じく、心を蝕み、再生産されていく貧困を取り除くことができるかもしれない。
◇
本書の中で特筆すべき、というかキツい部分として、貧困に陥った10代の男女がどのようになるかを示した部分だ。
端的に書いてしまうなら、男が暴力によって脱しようとする中で、女は食い物にされる場合が多いとしている。
私は以前、家に帰りたくないと話す女性と出会った。
帰りたくない理由はともかく、そうした女性が善意の人に会うとは限らない。
また、川崎で起きた中1男子生徒殺害事件について書かれた部分には、近隣地区に住む人間として、溜め息をつくしかなかった。
そうした国内の話以外にも、外国のストリートチルドレンについて取り上げていたりして、読み終えたときには世界がすこし嫌いになっているかもしれない。
でも、どうか気にしないで欲しい。
たいがいの人は好き嫌い両方の感情を持っているから、あなたはきっと1人じゃない。
目を背け、耳をふさぎ、口を閉ざす人がいるのは、ここに書いておかねばならないけれど。
なかまに なりたそうに こちらをみている! なかまにしますか?