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映画じゃないし終わらない

先日大好きなバンドが解散した。赤い公園という名前のバンド。

解散が決まってから、いやそれよりずっと前から気持ちを文字に起こしたいと思っていたけれど、気持ちがまとまらなくて書けなかった。書くべきかすら迷った。そして今もまとまっていない。

赤い公園に出会ったのは2014年のSWEET LOVE SHOWER。
アコースティック編成でのライブを見て、ライブ後すぐアルバムを聴いて、あっという間に好きになってしまった。

90〜00年代のJ-POPを感じる丁寧でキャッチーなメロディ、一筋縄ではいかない構成と演奏、自分が大好きなものが詰まっていた。
佐藤千明さんの歌唱力、ベースの藤本ひかりさん、ドラムの歌川菜穂さんの演奏力に度肝を抜かれた。

そして、何よりもギターの津野米咲さんが書く歌詞が大好きだった。どんなに明るくても、礎として苦しみや憂いがあるような、どんなに悲しくても、負けん気があるような。そして一貫して優しくてチャーミングだった。あくまで推測でしかないが、どの曲の歌詞も津野米咲さんの人柄が滲み出ている気がした。

その歌詞達に僕は本当に何度も何度も救われた。
心が切羽詰まって、思ったほど自暴自棄にもなれず、中途半端な自我をゴミ箱に投げ捨てたくなるような時期や、あまりにも辛すぎて大好きな音楽すら裏にあるものとかを考えすぎて聞けなくなってしまった時期も、余計なことを何も構えず聴けたのは赤い公園だったし、そこから引き摺り出してくれた。

大事なシーンがたくさんある。
「猛烈リトミック」を引っ提げたライブに初参戦したこと。新木場スタジオコーストで初披露された「KOIKI」を聴いた時の衝撃。ボーカルの佐藤千明さんが脱退する最後のライブに行けたこと。新ボーカルとして石野理子さんが入った時のワクワク。新体制で発表された楽曲達の凄まじさと、これからまだまだ赤い公園を追いかけられるという喜び。

誇張表現なしに、多分、僕にとって赤い公園は、津野米咲さんはヒーローだった。

だから、その人がいなくなってしまった事実はあまりにも残酷だった。
素晴らしい音楽をたくさん届けてくれた赤い公園が、音楽以外のことで話題になっていることが悲しかったし、すごくすごく悔しかった。
本人の本当の苦しみは本人にしかわからないし、どんな憶測も邪推に過ぎないけど、こんなに聡明で優しい人柄が歌詞に滲み出ているような人がいなくなってしまう現実は、本気で地獄だと思った。

結果的に最後のアルバムとなった「THE PARK」の最後の曲「yumeutsutsu」の冒頭

期間限定の夢の結末を
騒ぎ立てたって何もならないね
映画じゃないし終わらない
続きを生きているんだ

この一節が残酷で優しくて、それ以来ずっと離れない。

その後のメンバーがどんな答えを出しても、応援したいし見届けたいと思った。結果的に赤い公園は解散を選んだ。

ラストライブは変わらず楽しくてカッコよくてユニークでチャーミングないつもと変わらない赤い公園、いつもと変わらない最高のライブだった。石野理子さんも、藤本ひかりさんも、歌川菜穂さんも、サポートの方々も本当に素晴らしかった。少しだけ音楽を通して津野米咲さんとも交信している気がした。

正直、これからをもっともっと見続けたかったし、絶望感みたいなものも抜け切ってないけど、赤い公園が教えてくれたことはきっとこういう現実を小粋に生き抜いていくことだと思うから、残してくれた曲達に救われながら続きを生きていきたい。

たくさんの人にたくさんのエネルギーを与えてくれたメンバーのこれからが楽しく幸せなものになることを本当に願っています。
きっとこれからもたくさん聴いて、たくさん助けられます。ありがとう。

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