見出し画像

瀧波ユカリ「わたしたちは無痛恋愛がしたい 〜鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん〜」(1)(講談社)

 「私たちは繁殖している」へのアンサー、あるいはカウンターだろうか?と気になり、手にとった。

 タイトルにもなっているキーワード「無痛」とは真逆の、あらゆる痛みがマンガのそこかしこに溢れている。小さな痛みから大きな傷み、身体的な痛みと、自分の内面に向かう痛み。あらゆる痛みがページをめくるたびに現れて、苦しい。こんなにも苦しいのは、心当たりがあるからだ。

 「鍵垢女子」「星屑男子」「フェミおじさん」というミニマムな構成で描かれるストーリーは、まるで寓話のように端的に出来事が詰め込まれている。端的にするために記号化された出来事は、自分がこれまでに体験してきた痛みを(すっかり忘れてしまっていたものまでも)少しだけ、つつく。それは必ずしも楽しいことではないが、ちゃんと読み進めることができた。

 なぜ痛みを抱えながらも、読み終えることができたのか。それは主人公のみなみの周りにいる人達の言葉が聞きたいからだ。つつかれた、過去の出来事――あのとき、わたしは、どうすればよかったのだろうか?友人に話を聞いてもらうかのように、マンガに、誰にも言いたくない自分の心を打ち明ける。きっとこれから何度も読み返し、あのときの痛みをちゃんと怒ったり、ちゃんと許さなかったりしていくのだろう。

この記事が参加している募集

マンガ感想文

今こそ読みたい神マンガ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?