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【ショートエッセイ】小さい息子と天井のお友達

息子がまだ一歳か二歳の頃だったかなぁ。
天井を見上げてぶつぶつしゃべっていたのは。
不思議な光景だった。

それはいつもぼくたちの寝室で見かけた。
ダイニングやお風呂では話さない。
うにゃうにゃと何を言っているのかはさっぱりわからない。
でも誰かと会話をしているようだった。

ある日のこと、また息子が天井に向かって話し出した。
「何を話しているの」と妻が息子に聞いた。
「お友達がいるの」と息子が答える。
「お友達?」天井には何も見えない。
ぼくと妻は首をひねる。

あれは何だったのだろう。
「この世界の片隅に」に出てくるリンちゃんみたいな子が、天井から顔を出していたのかな?
でもぼくらには何も見えなかった。

友達の顔を思い浮かべていたのかな?
それなら天井を見上げなくてもよかったはず。
それに友達と呼べる仲のいい子はまだいなかった。

ひょっとして小さな子供にしか見えない妖精がいたのかな?
妖精っておしゃべりするのだろうか。
それにぼろアパートに妖精が来てくれるだろうか。
息子はずいぶん楽しそうに話していたけど・・・。

もし妖精と話をしていたのなら、どんな話しをしていたのだろうか。
"今日、どこかに行って来たの?"
"今日はおかあさんに公園へ連れていってもらったの"
"そう、それはよかったね。公園で何をしたの?"
"ブランコに乗ってお母さんが背中を押してくれたの"
"そう、それはよかったね。次は何で遊んだの?"
"滑り台。ちょっとお尻が痛かったけど10回滑ったよ"
"そう、それはよかったね。楽しかったねえ"

妖精は聞き上手なんだね。



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