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【ショートエッセイ】白い塔が見える

20年以上乗り続けた電車なのに、あの白い塔が窓から見えることを初めて知った。
一瞬だけ小さく、小さく見える。
あの塔のすぐ近くに25年前に死んだ兄貴が住んでいた。

仲は良くなかった。
思い出すことはいじめられたことばかり。
自由奔放な人だったが、41歳の若さで死んでいった。

25年も経てば、もう彼の命日も誕生日も思い出すことがなくなっていた。
でもあの白い塔を見た途端に彼のことを思い出していた。
不思議というか、ぼくに敬意の念が足りないと言うか、褒められた話ではないな。

悲しいとか、また会いたいなんて気持ちは毛頭ない。
もし会って話すことがあれば、どんな話しをするのだろう。
生きながらえても人生は辛いことばかり、だから生きる甲斐があるんだぜ、とか自慢げに言っているのかな。
ぼくの方が、ずいぶん人生の先輩になってしまったからね。

話し相手の兄貴は、ぼくよりずっと若いんだろうな。
少し羨ましい。


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