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ナマズの軌跡〈前編〉ーなぜ私の旦那はナマズなのか

noteを始めて2ヶ月が経過しました。数多くのスキやコメントを本当にありがとうございます。とても嬉しいです。

夫婦エッセイも何本か書いてきましたが、毎度登場する旦那を、わたしはナマズと呼んでいます。

なぜ「ナマズ」なのか。ずっと触れないままエッセイを書き続けることもできますが、ここらでナマズの軌跡を語ってもいいかもしれないと思った次第です。

”語る”と言いつつも「なぜナマズなのか」の解は「旦那の泣き顔がナマズに似ているから」以外にありません。

あっという間に答え合わせが終了してしまいました。

ここからは、私が彼をナマズと認識するまでの軌跡と、アフターザトークを前後編に分けてお話したいと思います。

🐟

彼と私は、大学時代に教育系のボランティア団体で知り合いました。インターン生の彼とただのスタッフである私。説明会で意気投合し、出会って1ヶ月ちょっとで交際に発展します。

大学4年生の3月、ついにボランティア団体を卒業する日がやってきました。”卒業式”と題されたセレモニーでは、毎年他のメンバーに投票されて決まる、各部門の頑張ったで賞が贈られます。

Mr.の称号がつくある賞は、彼がもらえたらいいなぁと呟いていたものでした。

いよいよ、表彰者の発表です。あたりが暗くなり、スライドショーが開始されます。今年度のMr.は誰だろう。会場の全員がスライドに注目し、バックミュージックに耳を澄ませます。

人は騙す 人は隠す 人はそれでも それでも笑える

SUPER BEAVERの「人として」が流れてきました。スライドショーには、彼も含む卒業生の写真が次々に映っていきます。

信じ続けるしかないじゃないか
愛し続けるしかないじゃないか
身に覚えのある失敗を どうして指させる?

サビが流れた瞬間、隣にいた彼が肩を震わせ鼻を啜り始めます。徐々にスライドに映る男性が絞られてきているけれど、その前に私たちは気づいていました。

人として 人として かっこよく生きていたいじゃないか

この曲は、彼が大好きだと言っていた曲。最後のスライドには、満面の笑みの彼が映っていました。笑顔溢れる写真とは対照的に、隣の彼は涙でボロボロ。見事、今年度Mrに表彰されたのです。

これには、私ももらい泣きをしてしまいました。インターン生としてずっと頑張ってきていた姿を近く見ていたので、Mrの称号を得られたことに心から感動したのです。

彼は、全員の前でコメントをするために立ち上がります。マイクを握っても、涙が止まらない。その表情を見て、ふと思ってしまいました。


「ナマズに似てる」


もらい泣きをしてた気持ちがスーッと遠のき、あれ、私の彼ってナマズなの?と考えてしまいました。

そんなことを彼女が思っているなどつゆも知らずに、彼は表彰コメントをぐちゃぐちゃになりながら伝えています。

そう、この日からです。ボランティア団体を卒業したこの日に、わたしの彼そして旦那は”ナマズ”となりました。

自分の中だけでナマズを抱えきれなくなった私は、卒業式に参加していた友人に「泣き顔がナマズに似てなかった?」と聞いてまわります。

その度に、なんと言っていいのかわからない、というような苦笑を返されました。ナマズにとって相当失礼なことを聞いてただろうことは、今になってわかります。ですが当時の私は、彼がナマズであることを誰かと共感したくてたまりませんでした。

本人にも「あなたはナマズに似ている」と伝えたら「馬鹿にしているの?」と言われました。

「とんでもない!馬鹿にはしていないよ、ただ、ナマズに似ているからそう伝えたの」「それが馬鹿にしているんだよ」とすれ違いが生まれました。

私の頭の中で描いているナマズは、眉毛が下がっていて、目が点となっていて、唇がボテっと下がっているイメージです。

本物の生き物のナマズをイメージしているわけではないのです。絵に書いた感じだと可愛いじゃないですか。

それに、旦那はナマズ界のNo1のプリンスだと思っています。だから、決して気持ち悪いとかブサイクとかそういうニュアンスは一切含んでいません。心に誓って。

そんなナマズ論争をした我々は、3年後に結婚しました。結婚を機に、ナマズがどんどん生活に馴染んでいきますが、その話は次回のお楽しみということにいたしましょう。





ナマズの軌跡、後編はこちら。

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