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ウィーンが燃えている

 来年の全豪オープン2022までテニスの記事は書かないだろうと思っていたのですが、インディアン・ウェルスに続き、ウィーンとサンクト・ペテルスブルクがあまりにも熱かったので書きたくなったのでした。

音楽の都で

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 言わずと知れた音楽の都ウィーンです。オーストリアの首都。しかし音楽はさておき、オーストリアのスポーツと言えばもちろんアルペンスキーです。オーストリアはアルペンスキー発祥の地ですから国技です。日本でいう相撲や柔道と同じですね。来年冬のオリンピックが北京でありますが、例えばオーストリアがアルペンスキーで一つも金メダルが取れないとなるとオーストリア国内では大問題になります。国技ですから。日本が柔道で金が出ないとざわつくのと一緒です。銀では許されません。それとわざわざ「アルペン」とつけたのは、スキーには「ノルディック」もあるからです。ではノルディックスキーの発祥は… このままいくとスキーの話で終わりそうなのでここでやめておきます。

 全米オープンが終わり、異例の10月開催のインディアン・ウェルスも終わり、あとはパリがあってその後すぐATPファイナルが、今年はトリノかぁなんて思ってたらウィーンが大変なことになっていました。

 ウィーンは「ATP500」という格付けの大会です。男子のATPツアーは下から「ATP250」「ATP500」「ATP1000」「ATP FINAL」「Grand Slam」とあり、獲得できるポイント数により格付けされています。今回ウィーンで行われたエアステバンクオープンは「ATP500」の大会なので優勝すれば500ポイントもらえます。Grand Slam つまり4大大会ならば優勝で2000ポイントです。直近52週の合計獲得ポイントで世界ランキングが決まります。

 ちなみにこれらATPツアーに予選なしで本戦に入れる日本人男子は西岡選手、錦織選手くらいです。しかし彼らも大会によっては予選からです。

 熱かったウィーン

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 びっくりしました。なぜウィーンがここまで盛り上がったのか?まずは観客動員がすごかったです。ビッグ3が一人も出ていないのに、です。ただビッグ3以外の選手は、サンクトペテルブルクに出たルブレフと、ビッグイベントに照準を絞っているメドヴェーデフ以外はほとんど出ていたでしょう。そしてその出場選手たちの発奮が客席を盛り上げ、客席の盛り上がりがまた選手たちを押し上げる、そんな好循環が生まれていたように感じました。ファンも、選手もこのリアルな興奮と一体感を待ち望んでいたんですよね!きっと。

 さよならビッグ3

 言いにくいことを敢えて言いますが、ビッグ3がいなくてもテニスはこんだけ面白いんだ、ということをファンも気付いた大会になったと私は思います。つまりタレントが育ってきたのです。どんな若手が活躍したのでしょう。でもまずはベテランからです。

 普通なら1回戦ではあり得ない好カードで元世界1位が盛り上げてくれました。アンディ・マリーが64、67、63でフーベルト・フルカッチに勝利しました。このところアンディがいるコートは必ず拍手喝采です。大手術から復活し、まだランキングは100位代ながらワイルドカードで出場し、往年のプレイが戻ってきたベテランに惜しみない拍手が送られています。

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写真がでかくてびっくりしました。フルカッチ(👇)は2018年の京都チャレンジャー(下部ツアー)で私が見出した(?)ポーランド人で第5シードでしたが、股関節の手術をしてもなお驚異のディフェンスを見せるアンディに根負けしました。

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そのアンディを2回戦で葬り、ベレッティーニをも破りベスト4に勝ち上がったのが、カルロス・アルカラス(👇)この18歳のスペイン人は今ぐんぐんレベルを上げています。「右利きのナダル」といってもいいくらいで、この若者のフォアハンドは弾丸のように相手コートをえぐっていました。

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ここまでボールをしっかり見ている選手はフェデラー、ナダルくらいじゃないでしょうか。そして20歳ながら今や安定の強さを見せているのがヤニク・シナー(👇)です。以前ガッツリ紹介しましたが、北イタリア出身で小学生の時にアルペンスキーのジュニアチャンピオンにもなっています。今大会は1セットも落とさずベスト4です。白い、細い!

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さて今回台風の目となったのはアメリカの23歳、フランセス・ティアフォー(👇)です。予選2試合ともフルセットで勝ち、本戦ではチチパス、シュヴァルツマン、そして前述のシナーをも破って決勝まできました。いやもう、まさに神がかってました。こういう状態を「無双」っていうんですかね?そしてスーパーショットを決めるたびこうして観客とタッチタッチ。逆に相手のスーパーショットに対する反応も可笑しくて見ものですよ。しかし誰もマスクなんぞしてませんね。

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前述のアルカラスを非常に競った内容の、しかしストレートで下し、この無双状態のティアフォーと決勝を戦ったのがサッシャことアレクサンダー・ツヴェーレフ(写真👇)です。

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腰が低い!身長198cmですが、彼のバックハンドは常にこれです。旧ソ連時代にプロテニス選手だったという両親、特に母親から叩き込まれたのがこのバックハンドだったそうです。

 元恋人からDVで訴えられたり、私生活は何かとにぎやかなサッシャですが、テニスはひたむきで地味です。今回の決勝もハイライトを見る限り、見せ場は全部ティアフォーに持ってかれてます。ティアフォーが勝ったようにしか見えないビデオでしたが、トロフィーはサッシャに、貫禄です。

サンクトペテルスブルク

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 クロアチアのマリン・チリッチと言えば、日本人なら2014年の全米オープン決勝を思い出すでしょう。あの時の優勝スピーチの一節を私はいまだに覚えています。「あきらめずに厳しい練習を続けている選手たちに希望をもたらすことができた。僕たちでもGSで勝てるんだってね。」GS(4大大会)の優勝をビッグ4(当時)でほぼ独占していた時代だからこそのこの言葉です。

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一時は世界ランク3位までいった彼ですが、肩の故障などもありその後はGSの優勝には手が届いていません。しかし負けても負けてもチリッチはいつも黙々と、懸命に試合をしています。33歳、なんといつのまにやら20個目のツアータイトルで、この大会は2011年以来の優勝です。いつも惜しいところで負けている印象でしたが、こんだけ勝っているとは。でもそろそろキャリアの最後にもう一度ビッグタイトルをあげたい気がします。今回は久しぶりに好調な彼のテニスを観られて嬉しかったので、少し書きました。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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