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Chants of Sennaar 架空言語謎解きのリアリティとシームレスさ

Chants of Sennaar 全クリしたので感想を。

いやー、いいゲームだった!極上!濃密な謎解き体験だった!
こんなにもゲームシステムと世界観が融合するものかね!
一応、未プレイの人の楽しみを奪うようなネタバレはしないつもりなんですが、世界観の説明だとかも厳密にはネタバレを含むと思いますので、気になる人は全クリしてきてください。それまで僕は、ここで待っていますから。


Chants of Sennaar のテーマを解説しますね。
言葉のわからない土地で目覚めた主人公は、人の話と身振り手振り、看板などの情報から解読したり類推して、文字(単語)と文法を特定しながら物語を進めて行く架空言語謎解きゲームです。

架空言語謎解きはリアリティがある

どうして図書館で手に入れた本を、警察署内の謎解きで使って赤い宝石を得ることがあるの?

・・・謎解きと世界観とのミスマッチは深刻です。
これは、ゲームクリエイターはみんな困ってることだと思う。プレイヤーは謎解き大好きだからゲームには入れたいんだけど、養殖でない謎解きって都市にはいないんですよね。

古代の謎解きって現実には存在しないよね?

じゃあ古代遺跡に野生の謎解きは生息しているかっていうと、実はそれも嘘なんです。謎を解かないと開かない扉や宝箱って出土してないはず。出土してたら教えて下さい。

その点では、都市も遺跡も一緒なのだけど、インディージョンズとかで繰り返されたことで、古代遺跡には謎解きがあることになっていて、幾分、古代遺跡ものの方がリアリティがあります。

でもね、もっとリアリティのある謎解きがあります。
それは古代遺跡の文字の解読自体です。読めないから謎なのであって、言葉を理解すること自体が謎解きなんです!
(ジョージ・ルーカスやスピルバーグが、解読からイマジネーションを膨らませて古代遺跡自体に謎解きがあることになったんだと思う)

CoSはこの辺、踏まえてると思う。なのでパズル寄りの謎解きがある場合でも言語の解読が進んでいなければ、パズルを解くのは困難で、解読ができれば謎解きは9割解けている、というゲームバランスになっています。

言語解読に謎解きのコアを据えた CoSは、他の遺跡系の謎解きと比べても一弾リアルな謎解きになってるように思います。



架空言語謎解きはシームレスになる

この言葉がわからないところから始めるゲームの何がいいかって、謎解きパートがシームレスになることです。というよりゲーム全体が謎解きとして機能するようになるんすわ。

ゲーム開始直後は、ほとんど言葉がわからないから、基本的には「?」を頭に抱えて探検をすることになるし、いくつか単語が特定できている条件下では、欠けてる言葉がなんなのかを類推しながら人々の話を聞くことになるし、新しい場所に出向いたら、どこかに文字はないか?話せる人はいないか?と常に情報収集と推理を働かせることになり、全編謎解きになります。

もちろん、いくつかのチェックポイント的な場所で、他のゲームのように、特にパズル要素の強いものもありますが、前提として言語理解を求められます。それがまた世界観に沿ってて秀逸なんだわ。(それはもっと下の方で詳しく)

でね、これってこのゲームのコンセプトそのものなのですよね。ゲームのシステムであり、世界観なんです。言葉のそれ自体が持つ記号性ってそもそもパズル的で、それを理解することがソリューションなんですよね。

世界観

言語学者のフィールドワークってこんな感じなのかな?という感があって、非常に楽しい。未知の言語を理解するということは、このゲームの1000倍難しいのだろう※とは想像つくんだけど、それでもその1/1000でも特殊な頭の使い方を体験させてくれる楽しいゲームです。

ゲームやってからでも、ゲームやる前でもこの辺の書籍を読むと楽しさが倍増すると思います。

※ 実際の未知の言語だったら、人々はそれぞれ決まった話し方をしないし、同じように繰り返してもらうのも限度があるし、発話から単語の区切り目を見つける必要すらあってパズルの状態までもっていくのすらままならなさそうだし、ゲームはゲームではあるんだけど、という意味。

余談: これがゲームを良くしてると思う

以下、軽微なネタバレあり

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