甘太郎は不自由な世界で新世界への避難を呼びかける

甘太郎たちは時のない部屋で修行していたムゲンの統合体から分離して不自由な世界に舞い戻っていった。

プレゼントとして新世界をその意識の中に携えていた。

甘太郎たちはウキウキしていた。

新作の新世界があれば、不自由な世界のみんなを救助できると思っていた。

とある甘太郎は、街頭で新世界の宣伝をはじめた。

「皆さん! この不自由な世界はあんまりにも不条理で不自由ですからそろそろ見切りをつけて超時空世界に行きましょう!」

などと盛んに拡声器を使って道行く人たちを勧誘している。

しかし、誰も反応しない……みんな甘太郎を無視してその横を素通りしてゆく……

「ちょっと、皆さん、これは皆さんの運命がかかっている大事な話なんです! まさかこんな不自由な世界に永遠にい続けるつもりではないですよね!」

などと甘太郎は必死だ。

なぜなら時のない部屋のムゲンの統合体に合体している時に、全知ちゃんの分身体に超時空聖体会議で、今甘太郎がいる不自由な世界が消去されることが決まったという話を聞いてしまっていたからだ。

「皆さん、この世界は、丸ごと全部消されてしまうことが決まってしまったんですよ! だからいつまでもこの不自由な世界に居続けることはできないんですよ! どうか超時空世界に新世界を用意しましたから、みんなで逃げてきてください!」

必死の甘太郎の呼びかけだったが、やはり道行く人々は興味を示さなかった。

甘太郎は「なぜなんだ……なぜなんだ……」とつぶやきながら天を見上げる。

すると……ひらひらと全知ちゃんの分身体が甘太郎の元に舞い降りてきた。

その姿は、通行人には見えないようだ。甘太郎だけに見えている。

全知ちゃんは、

「甘太郎ちゃん! いくら呼びかけても無駄ですよ」

などと言う。

「な、なんで無駄なんですか? 呼びかけないとこのままじゃみんな消されてしまうんでしょう?」

などと言う。

「だってこの不自由な世界の人たちは、みんなもうすでに自由意志を消されてしまっているんだから」

「え? もうみんな消しちゃったんですか!」

「まだよ。でもね、自分で自分の運命を選べる自由意志がこの世界のボスたちによって消されちゃってるのよ。

つまり、みんなゾンビというか、ロボットというか、操り人形というか、まあそんな感じにされてしまっているのよ」

「いや、でもですね、みんな普通に会話したり、買い物したり、お仕事したりしているじゃないですか!」

「そうね、でもそれは彼らの自由意志でやっていることじゃないのよ」

「でもみんなそうしたくてしているんでしょう?」

「そうね、そうしたくてしている人もいるし、そうしたくなくてもいろんな事情で仕方なくしている人もいるし、いろいろだけど、少なくとも自分が自分の未来を自由に選択できるということを理解できている人はほとんどいないのよ。

本能に従っている人とか、気分に従っている人とか、感情に従っている人とか、社会に従っている人とか、法律に従っている人とか、神に従っている人とか、悪魔に従っている人とか、ご先祖様に従っている人とか、霊的存在に従っている人とか、親や上司や先生や権力者に従っている人とか……まあ他にもたくさんあるんだけど、この不自由な世界の人たちのほとんどが何かに従っているのよ。

別の言い方をすれば、自分の意志ではなく他者の意志や与えられたプログラムに従っているだけなのよ。

だから、その他者の意志や与えられたプログラムに存在しない事は選択できないようにされてしまっているのよ」

「え? なら、他の選択もできるんだって教えてあげればいいだけなんじゃないの?」

「ううん、そういう状態になってしまうといくら知性で選択肢の意味が理解できても、それを自分の意志では選択できなくなってしまうのよ」

「そ、そんな馬鹿な……」

甘太郎は信じられないという風で納得できない様子だ。

「ほら、甘太郎ちゃんも、いくら他のみんなが無理するなってあれほど注意しても、いつもわかったわかったと口では言うけど、結局いつも死にそうになるまで無理してみんなを助けようとして大変な目にあってしまうでしょう?」

全知ちゃんにそう言われると甘太郎は、言い返せなくなってしまった。

「こないだなんて、電子レンジ星の中に閉じ込められていたウサ子ちゃんを助けるんだって安全対策もせずに飛び込んでしまって、そのまま焼かれて死んでしまったじゃないの……

あたしたちが甘太郎ちゃんの意識体をコピーして保存していなかったらそのまま終わっていたのよ」

「いやだって、あの場合、ほっとけないじゃないですか!」

「そんなことないわよ。甘太郎ちゃんがわざわざ飛び込まなくても、あたしたちに頼めばよかったじゃないの」

「あ、なるほど、そういう選択肢もあったんだ……」

「でしょう? 超時空体のあたしたちなら別に電子レンジでチンされてもへっちゃらなんだから。結局はあたしたちが出なきゃいけなくなったんだし」

「そ、それはすいませんでした……」

「まあ、そういう素直なところは、甘太郎ちゃんの良いところよね。でも、きっとまた似たような状態に遭遇したら甘太郎ちゃんは同じことをすると思うわよ」

「そ、そうでしょうか……」

「だって、もう何千回とか同じようなことしているじゃないの」

「そうでしたっけ?」

「ほら、ぜんぜん自覚がないんだから……まあ、悪い性格ではないから、人格を否定するわけじゃないけど、自由意志がしっかりあればよく考えていろいろな選択ができるようになるのよ」

「ええ? じゃあ、僕は自由意志を持っていないんでしょうか?」

「そうねえ、まったくもっていないとは言わないけど、あたしたちから見ればほとんど持っていないに近い状態ね」

「そ、そんな……」

「まあ、いいわ、甘太郎ちゃんの場合は、変に自由意志を持って変な選択をされるとムゲンさんから文句いわれかねないから、またおいおいいろいろ教えてあげるわよ。

まあ、そういう感じでちゃんと自由意志を持っていないと、条件反射で同じような選択しかできなかったりするわけ。

その条件反射のパターンが悪いと、いろいろ大変な目にあったり、誰かを大変な目にあわせたりしちゃうのよ。

でね、この不自由な世界の人たちは、ほとんど自由意志を消されてしまっているって話に戻るわけ」

「はあ、なんとなくわかりました」

「だから、この不自由な世界を捨てて、超時空世界に行こう…なんて意志できないのよ」

「でも、それじゃあ、あんまりじゃないですか!だって消されちゃうんでしょう?」

「だってしょうがないでしょう? この不自由な世界を放置していたらみんなの良心が消されてゆくんだから…」

「えー! なんで良心が消されなきゃいけないんです?」

「それはこの不自由な世界のボスにとって良心が邪魔だからよ」

「良心が邪魔? そんな馬鹿な!」

「ね、甘太郎ちゃんは、ぜんぜんこの不自由な世界の事情が理解できていないのよ。

ここに来る前にちゃんとこの不自由な世界のことをお勉強した?」

「え? いや、すぐにみんなを助けなきゃと思ったから、全然してません!」

「ね、そうでしょう? あのね、このままだと甘太郎ちゃんも消されちゃうわよ」

「はあ? なんでまた僕が……」

「いい、甘太郎ちゃん、この不自由な世界のボスは、みんなに何でも自分の命令だけに従ってほしいと思っているのよ。

甘太郎ちゃんにはショックかもしれないけど、とっても残酷な命令なんかも平気でしちゃう奴なのよ。

ほら、戦争とか、疫病パニックとか、迫害とか、差別とか、他にもいろいろあるんだけど、そういうのをわざとみながやりあって憎しみ合わせるようなことをわざわざ計画して実行したりするのよ。

そうした残酷で邪悪な命令でも喜んで従う者をどんな手を使っても手に入れようなどと思っているのよ。

この世界の人たちの自由意志が奪われたのもそうした邪悪な計画のひとつなの。

とにかく自分の意志を捨てて何でも無条件にボスに従うようにという教えを世界中に広めたのよ。

ボスが命じれば、良心に反したことでも何でも従うようにってね。

そうしてそうした良心を失った人たちが、世界中に増えてしまって、半分以上になったあたりで、多数決という変な制度を世界に広めて、半分以上が賛成したらそれ以外の人たちに何でもしていいとかいう制度を広めて好き放題できるようにしちゃったりね。

その結果、どんどんと良心的な人たちは貧しくなって自由を奪われていって、どんどんと少数派になってしまって、ついにはほとんどいなくなってしまったのよ。

それがこの不自由な世界のおおまかな歴史なの。

そしてさらにボスに従わない者たちは拷問強制収容所に入れられたり、入れられなくても電磁波兵器とか集団いじめとかで苦しめられたりしているのよ。

みんなで平和で自由な世界にしてゆこうと皆に呼びかけただけで、暗殺されてしまった人たちもたくさんいるし、最近は電波とかで心身の状態を好き放題に遠隔操作できる毒なんかを全人類に接種したり、食べ物に混ぜたり、水に混ぜたり、大気に撒いたりして、この不自由な世界のみんなを操り人形にしようともしているわ」

「ちょっと!全知さん!待って待って、そんな……あまりにもめちゃくちゃじゃないですか!嘘でしょう?嘘だと言ってください!」

「うふふ、甘太郎ちゃんらしいリアクションよね。じゃあ嘘だと言ったら甘太郎ちゃんは、それで満足するの?」

「はい! そんなめちゃくちゃな話は当然嘘でなければなりませんから!冗談もほどほどにしてください!」

「そうね、じゃあ、わたしと一緒に時のない部屋に戻る?」

「はあ? 何を言ってるんですか! 僕はこの世界の皆を救わなきゃならないんですよ」

「じゃあ、嘘っていうのは取り消さなきゃならないわね。だってこのままほっとくとまた甘太郎ちゃんがひどい目にあってしまうから」

「いやいや、だって嘘なんでしょう? 嘘なら酷い目にあわないでしょう?」

「本当のことを嘘ということにして甘太郎ちゃんを保護するつもりだったんだけど、どうしても戻らないというのなら、しょうがないわ」

「え? なにそれ? 嘘じゃないの?」

「そうね、甘太郎ちゃんにショックを与えたくないけど、本当のことなのよ」

「そんな……ひどすぎる……」

「甘太郎ちゃん、さっきの話が本当だとしても、まだ続けるつもり?」

「………」

「はあ……これって嫌な役目よね……ちょっと辛いわ……」

「………僕……僕が、説得します……」

「え? 説得? 誰を?」

「だから、この不自由な世界のそのボスっていう人をですよ」

「あのね、この世界のボスは、人じゃないのよ」

「え?」

「この世界のボスはこの不自由な世界を創造したり、人を創造したりした奴なのよ」

「奴って……つまり悪者……なんですか?」

「当然でしょう? さっきの話が本当であれば悪者でなわけないじゃない」

「でも、この前、この世界の人に、この世界の悪者は悪魔族だとか聞きましたけど、悪魔族がこの世界のボスなんですか?」

「違うわ。悪魔族もこの世界のボスに創造されたの」

「じゃあ、神様って呼ばれている奴ですか?」

「この世界の人たちはそう信じているみたいだけど、神様っていうのもボスに創造されたのよ」

「え? でもこの前、神様がこの世界で一番偉いんだと聞きましたよ。しかも全知全能だとか」

「それはこの世界のボスがそういうことにしておきたいから、この世界の人たちにそう教えているだけなの」

「じゃあ、一番偉くもないし、全知全能でもないんですか?」

「そうね、一番偉くもないし、全知全能でもないわ。

神様が一番偉いことにしておきたいために、全知全能だということに無理やりしているだけなのよ。

犯罪者集団のボス役が一番偉いわけないでしょう?

それにね、本当に全知全能だったら自分に何でも無条件に従う部下とかイエスマンなんて欲しいと思わないのよ。だって全知全能なら自分で自分を完全に満足させることができるし、無理やり飴と鞭を使ってそうした洗脳をしたりする必要ないの」

「あの…全知さん……その飴と鞭って何ですか?」

「素晴らしい体験と拷問体験のことよ。まずは鞭で苦しめておいてから、飴を出して魂たちを自分に何でも従うように仕向ける洗脳行為の一手法ね」

「そんなことしちゃいけないでしょう?」

「うふふ、そうね、みんながそう思えていたら、この世界もここまでひどくならなかったでしょうね」

「なんでこの世界のみんなはそんな酷いことをされてるのに、警察や裁判所に訴えないんですか?」

「それは、そんなことをすると酷いことをされたりするし、そもそも洗脳されてしまっているし、この世界の警察も裁判所もそのボスの部下みたいなものだからよ」

「じゃあ、僕が訴えます」

「計画性もなくそうした条件反射をすると酷い目にあうってさっき言ったばかりでしょう?」

「でも、そんな酷いことをしているのに誰も訴えないなんておかしいじゃないですか!」

「あのね、甘太郎ちゃん、この不自由な世界の人たちの大半がボスの部下や操り人形や信者なのよ。そんでもってそうした部下や操り人形や信者たちは、ボスを否定したり、悪口を言うとありとあらゆる方法で攻撃してくるのよ。そのように反応するように躾られて調教されて洗脳されてしまっているのよ。
そこまでいってない人たちでも、ボスにふどして、ボスの弁護役を買って出てきたり、いじめてきたり、精神攻撃してきたりするのよ。ボスの部下の霊的存在とかが憑依してきて精神や肉体を乗っ取られたりする人もいるわ。

甘太郎ちゃんは、それでもこの世界のボスを訴えるつもりなの?」

「……僕がそれでも訴えると言えば………また条件反射だとか言うんでしょう?」

「あら、よかった~、甘太郎ちゃんちょっとは成長したじゃない」

「……でも、でも、やっぱり僕は許せないな……やっぱり誰かが訴えなきゃ!」

「あらら……やっぱり甘太郎ちゃんねえ……でも、訴えられるとボスは自業自得学園に送られてひどい目にあうことになるけど、甘太郎ちゃんはボスも救いたいとか言うんじゃない?」

「そ、それは、ボスも救いたいですよ。でも、ボスは酷いことをしちゃだめですよ」

「そうねえ、多分そう言うだろうなって思ってたけど、じゃあ、どうするの? 訴えるの?訴えないの?」

「だから、僕がボスを説得すればいいんでしょう?」

「いいんでしょう?って言われても、簡単に説得できるものなら世界はこんなひどい状態になっていないわよ」

「でもやってみないとわからないじゃないですか」

「もうね、そういうのはさんざんいろんな人やあたしたちもしてきているのよ。そして何度説得しても今までダメだったの。だから世界ごと消す決定となったのよ。今更甘太郎ちゃん一人でボスを説得してどうにかできる状況じゃあないのよ」

「じゃ、じゃあ、僕一人ではなくて、みんなで説得したらいいじゃないですか!」

「みんなって誰のこと? この世界の人たちのほとんどはボスを説得するなんてこと絶対しないわよ」

「そ、それは……じゃあ、超時空体の皆さんみんなも一緒に説得してくださいよ! 超時空体様たちなら説得できるんじゃないですか?」

「えー? あたしたちが不自由な世界のボスを説得?」

「そうですよ。だって超時空体様たちの方がそのボスよりも強いんでしょう? それなら説得役として最適じゃないですか!」

「甘太郎ちゃん、わたしたちがこの不自由な世界を消す決定をしたのは、ボスの飴と鞭の調教問題の他にもいろいろな理由があるのよ。

例えば、この不自由な世界の人々の肉体という体験装置は、基本仕様からして拷問体験が簡単に発生してしまう危険な装置になっていたりするの。

生命種族同士の弱肉強食システムなんかも、その設計段階の根本から改めないとあらゆる体験者たちが気持ちよく生きてゆけない状態になっているのよ。

ただ戦争がない世界にするとか、社会制度だけを改めるとか、ボス崇拝を止めるとか……だけじゃあ、みんなが心から楽しめる世界にならないのよ。

もし、そうしたことまで含めて根本からこの不自由な世界をボスを含めてみんなで改めてゆこうと、この世界のみんなが本気で意志するのなら、改めてゆける可能性もあるけど、

この不自由な世界の人たちは、ほとんど本気で根本から改める意志を持てていないという問題もあるのよ。

ただ利己的に本能に従ってしまっていたり、自分たち以外の他の種族や民族はどうなってもいいと思っていたり、まあ、そうした問題も元をたどれば、この世界のボスの責任問題に行き着くんだけど、とにかく根本から改めないと延々と酷い目にあう体験者が発生し続けてしまうのよ」

「あの、全知さん、根本からって、どうしたら根本から改めたことになるんですか?」

「それは、その世界のあらゆる体験者が自分の意志だけで自分自身のあらゆる体験や運命を自由に選んで楽しみ続けれる状態を不退転で実現できたら、根本から改めたことになるの」

「それなら、その価値観を皆に教えてあげればいいんでしょう?」

「そうね、でも教えてあげてもほとんどの人がその価値観を最優先にすることができないと思うわよ」

「なんでですか? しつこく教えてあげれば、いつかは最優先にしてくれるんじゃないでしょうか?」

「甘いわねえ……甘太郎ちゃん……」

「千年でも万年でも教えてあげればなんとかなるんじゃないですか?」

「甘太郎ちゃん、条件反射で軽々しく千年とか万年とか言うけど、その間に、一体、どれだけの被害者が出続けるのか、理解してる?」

「………そこは超時空体様たちが被害者が出ないようにがんばっていただければ……」

「あのねえ……それなら今すぐにわたしたちがこの不自由な世界をボスに代わって統治するのと変わらないでしょう?」

「別にそれでもいいんじゃないでしょうか?」

「ダメよ。それじゃあ、この世界の洗脳されてしまっている人たちにわたしたちが侵略者だとか言われちゃうじゃないの」

「ダメなんですか?侵略者と言われたら?」

「私たちは相手の心からの合意を尊重したいのよ。そうじゃないと自業自得の責任が問われて、あたしたちの未来も危うくなってくるんだから」

「でも世界ごと消しちゃったりすれば、それこそとんでもないことになるんじゃないですか?」

「そんなことないわよ。消すのはすでに良心や自由意志を失って、他の体験者たちを消すような行為の実行犯や加担者たちだけだから。

まだ良心や自由意志をもっている良心的な魂や罪のない魂は、ほら、甘太郎ちゃんの持ってきたその新世界とかに相手の合意を得てから救助する予定なんだから。

消すのはあくまで拷問体験強制システムや自由意志を奪うようなシステムやアイテムだけなのよ。

良心に反した修理不可能なロボットみたいなのは消したりもするけど、それはしょうがないでしょう?
放置していたら延々と自他を苦しめる装置みたいなのはいったん消すしかないもの。
そんなのを未必の故意で放置する方がはるかに自業自得で問題になるじゃない。

それにまだ自由意志がいくらかでも残っていて、良心に反したことを確信犯で故意に実行してしまうようなのは、説得や注意や警告などもちゃんとして、それでも改めない場合は自業自得学園で自分が選択している行為の意味を自分で味わうことで間違いを自分の自由意志で訂正できるようにしてあげるんだから、そうしないで野放しにしているよりよっぽど本人にとっても皆のためにもいいでしょう?
そのままにしていたら良心に反したロボット状態になる危険性もあるし、永遠に自虐的な自業自得の責任を蓄積し続けることになる危険性もあるんだから、早くそうした行為をやめさせて、以後同じ間違いをしないように教育してあげる方が長い目で見れば本人にとっても良い結果になるでしょう?
まあ、どうしても自業自得学園が嫌なら償いプログラムを提供してあげることもできるようにしてあるし。

世界丸ごと消すっていうと酷いことのように聞こえるかもしれないけど、結構、至れり尽くせりの対応なのよ。

結局、煎じ詰めれば、望まれない酷い体験が誰にも強制されないようにして、みんなが自発的に他者に酷い体験を強制しようと思わないような状態にしようとしているわけなの。

不条理で残酷なことを平気で計画して実行するようなボスに何でも無条件に従って、ボスに従わないと良心的な者たちであってもひどい目に合わせて、自分だけ良ければいいやとか思う者たちばかり増やしたり、そうした残酷行為に確信犯で加担してしまう人を増やしたり……そんな状態をそれでいいと思ってしまう人たちを増やしたり……つまりこの不自由な世界は、良心を殺し、良心に反した心をせっせと増やし続けているのよ、私たちの世界管理は、そんな酷い世界統治とは、まったく次元が違うのよ」

「それじゃあ、結局、みんな助かるんですか?」

「それはみんなの意志次第ということになるわね。

良心に反したことを確信犯でし続ける場合とか、良心に反したことしか選択できない壊れたロボット状態で修理不可能な場合などは、助からない場合もあるけど、そうした状態の魂を容認して放置して増えるままにすると酷い目にあう魂が世界に爆発的に増え続けてしまうからそうした場合は仕方ないのよ」

「それでもなんとかみんな助けることはできないですか?」

「甘太郎ちゃん…………そうね、確かムゲンさんもそんなこと言ってたわね。どんな意志をもっていてもみんな楽しめる世界……だったかしらね………ただ、どんな酷いことをしても無罪放免……というわけにはいかないわよ。助けるっていうのは、どんな酷い行為でも何でも無条件に許すことじゃあないからね。

でも、酷いことをしたいと思えば、誰も傷つけずにそうした体験だけができる世界くらいならあってもいいのかもしれないわね
ゲームでNPCの魔物を殺してしまう体験くらいなら……

甘太郎ちゃんは、ゲームのNPCの魔物とかも助けたいのかしら?」

「はい! 助けれるものなら、助けたいです!」

「………じゃあ、今度、ゲームの魔物を癒せるヒール魔法を教えてあげるわね。一緒にゲームしましょうね」

甘太郎の一体は、こうして全知ちゃんに連れられて、時のない部屋に戻り、修行ゲームに復帰した。

その甘太郎がいた不自由な世界には、超時空体からのテレパシー広報により

「この世界は消滅予定につき、各自良心に反しない範囲でいつ世界が消滅しても悔いがないようにやりたいことをできるだけやってしまうように!!!」

と通知されることになった。

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