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読書メモ29「累犯障害者」

善と悪というものは
抽象的な概念である。

というのを前提に考えてないと
ちょっと躓くかも。

私が知的障害のある人たちと接して分かったのが
彼らは抽象的な概念を理解するのが非常に難しいということ。
なので、算数で言えば
分数あたりから概念になるので躓くのだ。
時間も多分、健常の人が分かるほどには分かっていないようだ。
だから、約束の時間の「3時間」早く来たりする。
乗り換えサイトをプリントアウトしていてもだ。

コミュニケーションの問題は
言語の獲得にもよるのだが、
オウム返ししかできないこともあるし
会話が成立しても具体的な話(目の前にあるものなど)に
偏りがち。
でも人が嫌いなわけではない。
ので、コミュニケーションと言っても、これもまた
健常の考えるコミュニケーションとは違う。
コミュ障とかのレベルの話ではなく、
「意思の疎通」だね。

「障害者は障害者が嫌い」
支援関係の人なら聞いたことあるだろうし
納得するかもしれない。

事物の判断とかも、
判断って結構脳みそのリソース食うんだよね。
普段は意識しないけど、脳にある知識を総動員して
そこから自分にとっての最良を導き出す。
経営計画でも最良と最悪を考えるけど
いろんな要素が絡んでくると数値出すのも一苦労でしょ?
私はやったことなくて見てただけだけど笑
そういうイメージを持ってると
知的障害がある場合、事物の判断が難しいというのが分かると思う。

前提としてそこらへんの知識の有無で
この本を読んでの感想が危ない方に行くかもしれないなー
などと思った。

最近やっと矯正とか教育なんかが進んでるなあと思ってたら
こんな本があったのね。
たまたま出会った本。
話題になったりしたのかな。
相変わらず世間に疎いから分からないけど・・・。

私は聴覚障害の方はあんまり知らなかったので
そんなやくざな団体があるなんてびっくりした。
ただ、別にみんな品行方正じゃないことは知ってた。
人間だもんね。

福祉を糾弾するようなテンションだけど
軽度知的障害の人がグループホームとかに暮らして
支援を受けながら仕事も続けてるってのを見ている私としては
問題は、もちっと手前にあるのをうっすら感じてる。
「手帳を所持していてもプラスはない」みたいに書いてたけど
そうでもないよね。
障害者雇用は手帳があってなんぼだし。
上記のような福祉サービスも手帳があってなんぼ。

同時に私はうっかり長く親をやってきたのと
界隈にいたのとで
「うちの子に限って」
で、診断不要!障害なんてもってのほか!という
親がたくさんいるのを見てきた。
小学校入学で引っ掛かる程度ではなく
中学入るかどうかくらいでもう一度引掛けて
適切な療育や福祉につなげることが
絶対に必要だと思うんだよ、私は。

圧倒的に生活スキルないのに
学校をなんとなく卒業させられて(何なら大学も出る)
仕事も生活も破綻する軽度知的障害者は少なくないと思う。

そういう女性が診断を受けて
「ああやっぱりってホッとした」
と言ったのを聞いたけど、しかもそれは複数名。
ちなみに親は号泣。
そう、受けさせないし認めない、受け入れないのは
社会でなく、その前の保護者なんだと思うんだ。

あと、「有害な男らしさ」も福祉を受けるというのを
施しを受ける側=弱い男
と考えてしまうのか、邪魔をする。
男性が、上記のように知的障害があるという話をされると
「検査方法が悪い」
「検査者が悪い」
「俺が障害なんて絶対おかしい」
と激高する方もいないわけではない。

ついでに言うと、「曖昧に笑う」という技術で
結構生き抜いていける。
普段の会話なんて
「どこどこの誰誰があーしたこーした」
「近所のお店がオープン」
「なんとかのアレおいしいよね」
とかでしょ。
だから親も気付かない。
気付きたくもないだろうけど。

親をやってるとたまに聞こえる
「障害のある子を産んで婚家にいびられて追い出された」
的な話は、多分具体的にいっぱいあるんだと思う。
地方に行けば行くほど。

「わが子のために」と福祉から遠ざけて囲い込む。
そして中年どころか高齢者になった生活スキルのない
「わが子」が放り出されるのだ。
だけど、囲い込まざるを得なかったご両親の気持ちも
やはり分かるのだ。

さて、そんでもってある日、
犯罪も犯すような「いっぱし」の大人が
「あんた障害者だよ」
と言われて前述の男性のように激高することの方が
多いような気がする。

昔は私宅監置、今は刑務所、なのかもしれないね。
私宅監置があったから、刑務所に障害者への処遇の法とかなかったのかな。
悪く言われがちな私宅監置ではあるけど
「村がみんなで農作業してる時に付け火をされると困るから」
という理由(のひとつ)を聞いた時に、なるほど!と。
ずっと出さないとか、ご飯あげないとか、そんな風には扱わなかったというところもあるんだと聞いた。
家に置いておくと野口英世のように灰に手を突っ込みかねないわけだしね。

「あなたのお子さんは障害があるから福祉を」
と、しかも目に見えない知能の障害をお子さんのためにと
親をこんこんと説得する面倒なことなんて誰ができるよ?
それまで福祉の仕事、にするのは無理だよね。
じゃあ誰が?

これをクリアしたら自分の居場所を見つけられずに
犯罪に巻き込まれたり、犯罪を犯して捕まる人は
減るかもしれない。

矯正施設ではなく
福祉施設での生活訓練。

そんな福祉施設だって人員不足だ。
そこに出所した人を受け入れるのは
実際に「もーむりー」だろうと想像がつく。
予防の方で自分らは頑張ってるから
そっちはそっちで頑張ってくれよぅ・・・と。

が、そこに、子どものうちからつながるには
やはり親が、自分亡き後を考えて行動するのが
何よりも大切なんじゃないかな。

おしまい。




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