山本律磨

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山本律磨

所属放作協。アマチュアイズム。オリジナル&ハンドメイドの研鑽、忘れることなく。タップノベルはこちら(https://tapnovel.com/writers/1641

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四神京詞華集/NAMIDA(1)

もともとはブログなるものをやっていた。 愚痴愚痴と10年以上。 誰に向けたものでもない、誰も見ることのない忘備録を。 それがnoteなるものを見つけてまた愚痴愚痴と数年。 やがては宣伝することもなくなって、創作物なんぞ載っけようなどと思って書き殴る作品がこれである。 さくっと説明をするとまず、小説ではない。 これは私自身が状況描写や心理の掘り下げに全く興味がなく見る方でも書く方でもサクサク話が進んでほしいタイプだからだ。 ジャンルは『ト書きがクドイ脚本と』勝手に呼んでいる。

    • クラウン(17)

      ○四条通り 腹巻腹当て入り乱れ、火花散らす。 座は馬に蹂躙される。 小屋には火が放たれる。 ○関 高札がへし折られ、踏みつぶされる。 侍たちが刃を交える。 柵が破られ流人がなだれ込む。 ○鴨川 血で血を洗う武士ども。 敗者は川に投じ清められる。 ○洛中・辻(夜) 東方と西方の乱戦。 と、鵺が如き咆哮に一瞬、戦が止まる。 月下、掲げられる牙旗。 道化に率いられた異形の兵達が闇に浮かぶ。 東方兵「牙旗じゃ」 西方兵「牙旗の兵じゃ」 東方兵「今宵はどちらか」 西方兵「西か

      • 四神京詞華集/シンプルストーリー(14)

        【悪い黄門さま】 ○人さらいのアジト(夜) 闇と同化するような濃い紫の袍(ローブ)と胞(マント)に身を包み、冠に雑面をつけた偉丈夫が現れる。 盗賊どもは幾分緊張し、だが表向きは平静を装い酒を飲み続ける。 雑面の偉丈夫「待たせたな」 盗賊1「いや」 盗賊2「お一人ですかい?」 雑面の偉丈夫「他の者には任せられん」 盗賊1「さすがは名高き悪黄門さまだ。肝が据わっとる」 雑面を取る、偉丈夫。 正体は当然、蘇我有鹿。 驚きと恐怖で声も出ない菜菜乎の代わりに、ナミダが呟く。

        • クラウン(16)

          ○斯波弟の館・寝所(夜) 白拍子を胸に抱き眠る斯波弟。 斯波弟の家来1「殿、夜襲にございます!」 斯波弟、跳ね起き太刀を掴む。 斯波弟「ようやく来たか! 兄者!」 ○同・表(夜) 武装した家来達が槍を構える。 壁を越えて、火矢が降り注ぐ。 斯波弟「うろたえるな!」 斯波弟、脚絆のまま喜々として叫ぶ。 斯波弟「武士の作法も忘れたか! 門を開けてやる! 間抜面を見せろ!」 閂が抜かれる。 家来達、開かれる門に弓を向ける。 斯波弟「我こそは斯波一門惣領治部大輔

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        四神京詞華集/NAMIDA(1)

        マガジン

        • クラウン~嘘八百応仁ノ乱~
          17本
        • SAIAKU~最後の悪代官~
          6本
        • 四神京詞華集~shishinkyo・anthologie~
          43本
        • GATE~朱雀と羅城~
          2本
        • 妖瞞の国(あやかしまやかしのくに)
          7本

        記事

          最悪(その6)

          〇白金楼・とつくにの間(夜) 謎の素浪人、世直し天狗を前に思わず後ずさりする修理。 修理「で、出た……」 サト「(ムッとして)か弱き?」 天狗、刀を抜く。 天狗「さあ娘よ! 今助けてやるぞ!」 サト「いいです。別に」 天狗「え?」 サト「私、何もされてないし」 沈黙。ししおどしが鳴る。 サト「(修理に)帰ってもいいんですよね」 修理「え? ああ」 サト「じゃあ。これで」 サト、小窓を潜って外に出てゆく。 残された修理と天狗。 修理「……何者だ?」 天狗「……世

          最悪(その6)

          shishinkyo・anthologie(DC3)

          【不比等を継ぐ男】 ○四神京・鳥瞰(朝) 青龍峰の冠から日輪が昇る。 都の碁盤をあまねく照らす。 開門の太鼓が一度、二度。 音は徐々に大きくなり、二十四度目が高らかに響くと同時に、中央政庁たる四神宮と外を繋ぐ全ての門が一斉に開く。 それを合図に紫袍の貴族から地下貴族、僧侶、学者、伎楽者、雑任まで全ての役人がおのおのの仕事場へと向かってゆく。 その数、一万。 倭の国であり、我の国であり、輪の国であり、和の国だった縄目文様の未開の部族達は、海を越えた自称世界の中心、中華大帝国の

          shishinkyo・anthologie(DC3)

          shishinkyo・anthologie(DC2)

          【怪人と説教】 ○蝮山・中腹 ハッとなる慧子。 空はうす曇りとなっている。 慧子「卑奴呼……広澄様……」 慧子、立ち上がろうとするも、膝が痛くて立てない。 慧子「二人共どこで何やってるのよ」 と、草むらから一匹の子鹿がこちらを見ている。 慧子、少し頬を緩め、手を差し伸べてみる。 だが鹿は近づこうともせず、からかうように辺りをうろつくだけ。 慧子の顔に次第に怒りが宿る。 慧子「何笑ってるのよ」 草と遊ぶように跳ねまわる子鹿。 慧子「笑うな……笑うな……笑うな!」

          shishinkyo・anthologie(DC2)

          shishinkyo・anthologie(DC1)

          【あらすじ】 このお話はドフィクションであり、恐らくは皆様の世界と時代に繋がらない過去の物語です。 超大国『唐』の影響を受けた四神相応の都、四神京では人を鬼に変える禍の呪いが伝染病の如く流行しています。貧民窟に居を構える我が主穢麻呂様は呪いを解く呪術師として、どうやら都人の間で噂になっているようです。 ある時、私と我が君は一人の鬼に変えられた呪われし姫君から救いを求められます。 「人に戻りたくば呪いをかけた者を見つけ出して殺すべし」 それもまた、ただの噂のようですが。 呪いと

          shishinkyo・anthologie(DC1)

          クラウン(15)

          ○鵺の隠れ家(夜) 草に覆われている小屋。 薪割り台に座り赤子をあやすトミ。 道化、背を丸めてトミに這いよる。 トミ「何をしておる」 道化「我は物の怪にて」 トミ「銭の集め方は覚えたか?」 トミ、道化に銭の束を放り投げる。 トミ「恐ろしい宴であった。結局お前は血の舞しか踊れぬようじゃ。されば手を貸せ」 道化、背を丸めたまま動かない。 トミ「それとも、お前も未だ、お今に取り憑かれたままなのか」 道化「申し訳ござりませぬ。かような汚らわしき所にひととせも」 トミ「わらわ

          クラウン(15)

          四神京詞華集/シンプルストーリー(13)

          【上京少女】 昔々、まだ役者紛いの真似を渋谷だの下北だのでしてた頃。 あるかなり有名な演目を行う機会に恵まれて、主役を演じた人がその後とてつもなく出世されたり作品を描かれた方も観に来られたりと我ながらおもっくそ自慢できるくらい人生イチ景気のいい時代だったのだが、今思い返すのはそんな素敵な思い出でなく、戯曲に描かれたヒロインの事ばかりである。 この年月を経てもひとことで言い表せない凄まじい物語を浅慮短慮と罵られるのを覚悟でひとことで言うと、東京を夢みて東京で暮らして東京人にな

          四神京詞華集/シンプルストーリー(13)

          最悪(その5)

          ○同・とつくにの間(夜) 和洋折衷の豪華な寝所。 身の丈ほどの漆塗りの箱を前に修理。 箱から聞こえるサトの歌声。 サト「Hänschen klein geht alleinIn die weite Welt hinein」 修理、微妙に揺れる箱に顔をしかめる。 サト「Stock und Hut steht ihm gut,Ist gar wohlgemut」 修理「おい」 サトの歌が止まる。 箱に巻かれた赤い紐をほどく修理。 箱が開くと、髪を結いドレスを纏ったサトが仏

          最悪(その5)

          クラウン(14)

          ○一休街 泥濘に立つ無数の蓆小屋。 木柵で囲まれた川辺の一角。 幣衣蓬髪の非人たちが牛馬をさばき、血に塗れている。 傍らで沢山の死体が焼かれ、老僧が念仏を唱えている。 道化と舎利、老僧の隣に立って手を合わせる。 老僧「生者も死者もここには無縁しかおらぬ。四足の街じゃ。それでもよいなら飽きるまで休んでゆくがよい」 と、遠くから蹄と雄叫びが聞こえる。 老僧「じゃが獣の上前をはねる外道もおる。早う身を隠せ」 老僧、舎利の手を引いて逃げ出す。 木柵が破られ、揃えも様相も異

          クラウン(14)

          最悪(その4)

          ○裏吉原・通り1(夜) 解体されつつある城の麓、煌々と灯のともる廓。 まさに傾城街。 和装洋装の男どもに手を伸ばす極彩色の遊女たち。 琴と三味線の優雅な音色。 ○白金楼・鳳凰の間(夜) 花魁が琴を爪弾き、禿が三味を奏でる。 と、手下達が演奏に割って入る。 怯える禿を庇う花魁。 千畳敷の間で沢山の豪農が騒いでいる。 酔って膳をひっくり返す者。 虎拳に負けて脱いでゆく者。 苦々しげに末席で酒を飲む忠蔵。 上座で欠伸をしている修理。 と、一人の豪農が叫ぶ。 豪農「黒金の鉄あっ

          最悪(その4)

          四神京詞華集/シンプルストーリー (12)

          【Search】 ○尊星宮(夜) さて毎度クッドいト書きから入るが当然話数稼ぎと思って貰って構わない。 皆様も忙しくてこんな戯言に付き合ってられないだろうし、私もそれなりに忙しいのでウインウインだな。 こちら北極星の下、枯野に鎮座する尊星宮。 古めかしいがいにしえの趣には遠く及ばない、おそらく四神京遷都と同時期に建立されたのであろう小さな社殿。 拝殿と本殿を幣殿で繋ぐ、まあどこの市町村にもあるたいして珍しくもない神社なので描写は割愛したい(面倒臭い) 次の初詣でご近所の氏神

          四神京詞華集/シンプルストーリー (12)

          最悪(その3)

          ○黒金村・村内1(夕) 見渡しても見渡しても山と畑しかない集落。 羽織陣笠の修理が黒毛を駆る。 忠蔵、長三郎、家来どもが徒歩で従う。 山塊を向こうに、闊歩する代官一行。 畑仕事を止め、土下座する百姓達。 通り過ぎる代官一行。 百姓1「ケッ、いつまでつまらん習わし続ける気じゃ」 百姓1の親「阿呆。聞こえるぞ」 百姓1、忌々し気に作業に戻る。 ○黒金村・川辺 闊歩する代官一行。 土手沿いの碑に童たちが集まっている。 忠蔵「こら! 何を悪さしておるか!」 年長の者の指示で

          最悪(その3)

          四神京詞華集/シンプルストーリー (11)

          【夢物語】 ナミダ「遣天竺使……」 菜菜乎「そう」 ナミダ「……」 菜菜乎「……なによ」 ナミダ「す、凄いじゃないですか~っ!」 菜菜乎「そ、そう?」 ナミダ「遣天竺使の話は公達や姫君達の言の葉にも上る程の噂、宮中の伝説になっていたんです。まさか本当だったなんて」 菜菜乎「ふ、ふ~ん。そ~なんだ~」 仏マニアのナミダが見せる羨望の眼差しを受け菜菜乎は完全勝利を確信し、陶酔した。 そうなると心の余裕からか、いつになく柔らかい言葉も出てきはじめる。 菜菜乎「そうだ。折を見て

          四神京詞華集/シンプルストーリー (11)