グルダの奏でるベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」を、アナログレコードとCD両方聴いてみました。
今年に入ってから立て続けに、東京渋谷区・古賀政男音楽博物館 けやきホールで録音の機会がありました。使わせていたただいたピアノはベーゼンドルファーです。
そんな中、「ベーゼンドルファーの音を録音するなら、このアナログレコードを聞いて下さい」とフリードリヒ・グルダが1970年に録音したベートーヴェン、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」のレコードを紹介いただきました。
確かに私のベーゼンドルファー録音経験は数えるほどだったので、ぜひ勉強したいと思い、早速アナログレコードを入手しました。
ちなみに、「CDは音が悪いのでアナログのレコードで聞いて下さい」とも言われ、それならば逆にCDの音も聞いてみたくなり、同時にCDも入手しました。ちなみにこの音源は、現在サブスクリプションサービスで聞くこともできます。
アナログレコードの音は、繰り返し聴けるように(個人で楽しむ私的録音の範囲で)録音しました。
CDの音とアナログレコードの音を聴き比べて
全楽章録音したので、せっかくなのでCDの音とアナログレコードを録音した音を聴き比べします。
しかし、この比較は最近話題の「プレスによってCDの音は違うのか?」とか、「ラウドネスノーマライゼーションで音質が変化するのか?」などのデジタルとデジタルの聴き比べとは全く趣旨が違い、どちらが己の耳に心地よいかという、主観のみで味わいを語る、いわゆる “個人の感想” ということになります。
本作品のマスター音源のデータは以下のとおり。
録音は1970年ですが、アナログレコード盤は1974年にキングレコードから日本で発売されたもの。CDは1996年に同じくキングレコードから発売されたもの。
CDの方が新しいですが、新しいと言っても今が2024年ですので、28年前のCDということになります。(私たちも歳を取ったものです…)
クラシック作品だからというのもありますが、「海苔波形」と言われるような、音圧高めの音源とは全く違い、ダイナミクス豊かで伸びやかな演奏が楽しめます。
波形を見る限り、CDは恐らくアナログと同じマスター音源で、音圧上げを伴うリマスタリングは行われていないと思われます。
(21世紀になってから、AMSI方式でリマスタリングされたCDも存在します)
録音は実に見事なもので、立体的に大きく深々と広がるウィーン・フィルの豊麗なサウンドと、グルダの弾くベーゼンドルファーの低域から高音域までワイドレンジかつ鮮やかな粒立ちの魅力がダイレクトに伝わってきます。
CDの音もアナログレコードの音も甲乙つけがたいですが、しいて言うならば、CDは一聴して「あの頃のCDの音だな」というのは感じました。ニュアンス伝わりますでしょうか。
CDとアナログレコードの音の違いを私なりに無理やり紡ぎ出しますと、アナログレコードの方が開放的な鳴りっぷり、CDの方が規定の箱の中に音を収めているような整えられた質感を感じました。
アナログレコードの音に、「抜けが悪いけどあったかい音」みたいなイメージは全くなく、総じてアナログレコードの方がハイファイに感じました。(※個人の感想です)
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