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夏の道  ~閑話 独り言

湿度の高い道は好きじゃない
アスファルトが昼も夕方も真っ黒で
そこから熱い空気が体にまとわりついてくる

前を歩く女性が
まとめていた黒髪のシニヨンをほどく
肩よりも長い髪で
蒸し暑いだろうに

これが初夏の爽やかで
新緑の美しい小径であれば
髪が踊るようになびくのに

建物の窓にうつる丸い月
「まさか」と思って振り返り
空を見るが月はなし
そう、ただ電灯が窓にうつっていただけ

彼女は髪に手をやる
器用に手早く纏めて
彼氏だろう、鞄を持ち
電車がくると知らせ
鳴り始めた線路を
2人で急いで駆けていく

線路の向こう側から
彼女たちの笑い声
遮断機に間に合ったと

彼女のシニヨンは
崩れてはいないよう
手をつなぐ恋人たち

まるで風が吹いたかのような
爽やかな一瞬

読んでいただき、ありがとうございました。 心理職以外の仕事の1つとして、DV被害で困ってる方々に情報提供をしています。そちらへの支援に使わせて戴きますね。