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最後に生まれただけの僕

3つ上の兄が一人、2つ上の姉が一人いる。

妹や弟は、いない。



弟というものは、とかく兄の後ろを歩く。
それは物理的なものに限らず、たとえば服や学用品にも言える。

僕が中学に入る頃、兄がちょうど中学を卒業し高校へ入学したので、中学の制服やジャージはすべておさがり(兄の高校の制服はブレザーだった)。

弟の方が体が大きいとかなら違う結果になったかもしれないが、生憎チビでガリだったので話にならない。

新品を買ってもらったこともあるにはあるが、裕福ではない我が家では、末っ子のおさがり率はどうしても大きくなってしまう。


また、僕は小学3年のとき、サッカー少年団に入団した。

理由は簡単で、兄がすでに所属していたからだ。

実は、当時の僕は野球少年団に入りたがっていたらしい(全っ然覚えていない)。

しかし、母に「お兄ちゃんがやってるから、あんたもサッカーにしなさい」的なことを言われて、半強制的にサッカーの道を進むことになった。
いじめられたせいで、1年くらいで行かなくなったけれど。

当然、ソックスやシンガード(すね当て)なんかはオールおさがり。



上の二人は、学業が芳しくなかった。

一方、(自分で言うのもなんだが、)末っ子は成績優秀で、高校も市内有数の進学校に合格した。

兄は、僕の高校入学と同時に高校を卒業したわけだが、とある専門学校へ行くことを親に黙って勝手に決めてしまったらしい。

姉はと言うと、最終学歴は高校だが、事もあろうに私立である。
学業や部活に精を出すはずもなく、3年間を怠惰に遊び惚けていた。


そして、末っ子が高校卒業後の進路を決める頃。

当時、僕は獣医師を志していた。
高校3年の夏頃、三者面談で担任の先生が「現役合格は難しいが、浪人して一生懸命勉強すれば、お前なら合格できると思う」と言ってくれた。

しかし、親は違った。
「浪人は無理」とその場ではっきりと切り捨てた。

まぁ、獣医学部は無理でも、同じ大学の違う学部に入れば動物に関わる勉強ができそうだから、それでもいいかなと僕は思った。

ところが、秋頃になると、親から思いもよらないことを告げられた。

「お金ないから、大学に行かせられないわ」

そして、その続きの言葉には、さらに驚いた。

「でも、勉強は頑張ってね」



結果的に、なんとか大学には行かせてもらえた。

アパートでの一人暮らしに憧れはあったものの、激安の学生寮にぶち込まれることに。

仕送りも基本的になしだったのでバイトをしていたが、バイト代などたかが知れている。
僕は、常にお金がなく、いつもお腹を空かせている貧乏大学生だった。


苦難の多い大学生活ではあったが、なんとか4年で卒業できた。

しかし、そのために多額の借金をしたようで、社会人1年目から学費の返済が始まった。

1か月につき5万円。初任給が手取り12万円くらいだったので、4割近くを実家に入れていることになる。公務員にもかかわらず、毎日カツカツ。あまりにも生活が苦しかったので、毎月はとても払えなかった。

そんな生活が長続きするはずもなく、4年目くらいで親に直談判し、学費の返済をストップさせてもらった。


ただ、納得がいかないことがある。

学費を払った(全額ではないにしろ)のは僕だけで、上の二人はまったく返済していないことだ。

兄は専門学校、姉は私立高校。どちらも決して安くなかったはずなのに、どうして僕だけ。

勉強も部活も一生懸命頑張ってきたのに、どうして僕だけ。



当然、兄には兄の、姉には姉の苦悩があると思う。

同様に、僕には僕の、末っ子の苦悩がある。

しかし、世の中の固定観念というものは冷たい。
「末っ子だから、甘やかされて育ってきたんでしょう」
などと、揶揄されることがたくさんあった。



ふざけんな。ふざけんなよ。



ただ最後に生まれただけで、なぜこんなに苦しまなければならないのだろう。


「もしも、僕が第一子だったら」
そんなことを考えたって仕方がないのに。

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