軽やかな風吹き抜けて少女らのパフスリーブに夏が来ている

園庭で戦ってきたヒーローが眠りに落ちる午後の保育室

雨あがりの陽射しにまぶしく染められて雲はひかりの王国になる

さらさらと短冊揺らし夏風は数多の願い見届けている

夏告げる道標のようにすっきりと薄紅の蓮（はす）咲く通学路

課題図書あかるく並び図書館も夏休みへと急加速する

水色のタオルケットがはためいて空へと帰りたがっています

物干し台登りつめたる雨蛙おまえそこから何が見えるの

陶器市そぞろ歩いてぽってりと厚い飯茶碗買う夏の朝

百万の小さな太陽咲き競いどこまでもどこまでも向日葵

皆どこへ行ったのだろうくすくすと陽射しが笑う午後の公園

モナ王をさくりと割ればサンダルの小さな手と手に夏があふれる

うまい棒ぐしゃりと潰す野蛮さで少年たちは夏を越えてく

長い長い散歩のような午睡からゆらゆら目覚めていく夏の午後

風鈴が遠く響いてびっしりとノートを埋める微分積分

解きかけの連立二次方程式に夏の終わりの風吹き抜ける

さりさりと光りかがやき一日に別れを告げる西の雲たち

夕暮れは青を深めて涼やかに光り始める銀の三日月

ネット歌会「うたの日」に投稿したものの中から、夏の歌と空の歌を集めました。夏をテーマにした歌が思っていたよりも多かったです。もっと平凡な歌もあったのですが、今回は削りました。

「うたの日」は題詠（テーマ詠）なので、その題に合った歌をどうやってひねり出すかが毎回悩みどころでした。「うまい棒」や「王」など、無理矢理作った歌も多いですが、その分、自分でも思いがけない歌ができて面白かったです。

「うたの日」投稿の日とお題は下記の通りです。

軽やかな風吹き抜けて少女らのパフスリーブに夏が来ている
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2016年6月10日「自由詠」

園庭で戦ってきたヒーローが眠りに落ちる午後の保育室
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2015年1月6日「ヒーロー」

雨あがりの陽射しにまぶしく染められて雲はひかりの王国になる
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2017年1月29日「染」

さらさらと短冊揺らし夏風は数多の願い見届けている
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2015年7月7日「願」

夏告げる道標のようにすっきりと薄紅の蓮（はす）咲く通学路
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2015年7月16日「標」

課題図書あかるく並び図書館も夏休みへと急加速する
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2015年7月13日「題」

水色のタオルケットがはためいて空へと帰りたがっています
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2016年8月14日「タオル」

物干し台登りつめたる雨蛙おまえそこから何が見えるの
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2015年10月17日「見」

陶器市そぞろ歩いてぽってりと厚い飯茶碗買う夏の朝
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2015年1月18日「市」

百万の小さな太陽咲き競いどこまでもどこまでも向日葵
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2015年3月21日「太陽」

皆どこへ行ったのだろうくすくすと陽射しが笑う午後の公園
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2017年9月27日「けいとさんの写真」

モナ王をさくりと割ればサンダルの小さな手と手に夏があふれる
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2016年3月13日「王」

うまい棒ぐしゃりと潰す野蛮さで少年たちは夏を越えてく
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2015年9月23日「うまい棒」

長い長い散歩のような午睡からゆらゆら目覚めていく夏の午後
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2016年7月24日「散歩」

風鈴が遠く響いてびっしりとノートを埋める微分積分
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2018年8月27日「微」

解きかけの連立二次方程式に夏の終わりの風吹き抜ける
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2015年3月20日「連」

さりさりと光りかがやき一日に別れを告げる西の雲たち
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2016年8月16日「空」

夕暮れは青を深めて涼やかに光り始める銀の三日月
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2014年12月30日「暮」