整った日の話

春の匂いに包まれた土曜日、桜は咲いていないものの、季節を感じるには十分だった。

自然光も彩度の高い景色も苦手な私が、隣駅のラーメン屋まで歩いてしまうという異例の快挙を成し遂げた正午。


心の休息を求め、海を眺めるためにお台場へ向かう夜。


ご飯を決める時の候補はファミレスかフードコート、どちらも捨てがたいものだったが、営業時間と距離を考慮し後者に決定。数年ぶりのフードコートは懐かしさを感じ無性にわくわくした。

空腹を満たしたところで海に行くかと思いきや、ゲームセンターで人生初のメダルゲーム。これが衝撃だった。


軽い気持ちで始めたマリオのメダルゲーム、フィーバータイムやらなんやら、なにか当たるたびに壮大な演出が繰り広げられるし、メダルが湧き出てくる。とにかくメダルが止まらない。
メダルが飛び交う音、大きなBGMを流し光り続ける演出、隣に座るパチンコ依存症くんが「パチンコはディズニーランドだ」と語っていた理由がなんとなく理解できてしまった。


22時頃始めたメダルゲーム、突然閉店15分前のアナウンスが流れふと我に返る。
なんと恐ろしい、2時間メダルゲームに白熱していたのだ。

閉店時間に追われ使いきれないメダルを溶かすため、フィーバータイムが止まらないマリオを一旦放置。よくわからない釣りのゲームへ全て投げ込んだが、なんとびっくり、すっごい魚が何匹も釣れてしまった。
全消費を目標としていたメダルは1000枚となり、惜しくも消費しきれず退店したが「メダルゲームはディズニーランドだ」という新たな知見を得ることができた。



お台場に到着して3時間、ようやく海へ向かう。


できる限り人の少ない場所を探し、お酒を飲みただただ海を眺める。





ここで既視感、まさにサウナだった。
ディズニーランドのような空間で白熱した後、夜景と海で心を浄化させる温度差。
サウナで整った経験はないけれど、メダルゲームという寄り道を経て、別ルートで「ととのう」ことに成功した。


心を許せる相手とフードコートでご飯を食べ、ゲームセンターで遊び海を眺める、どこに行くかより誰と行くか、この言葉が気持ちよく当てはまった。

仕事や生活に追われ精神が削られていくこと、劣等感や嫌悪感、不信感で壊れてしまいそうになる日々があるからこその娯楽なのかな、そう思えてしまうほど、たった数時間の中に今必要としていたものが詰まっていたように感じる。



ひと夏に何度も家族と行ったお台場合衆国、欅坂を知らない当時の恋人を連れて行った2016年のめざましライブ、どうしようもなくしんどくなった時に1人で見た海、好きな人がラーメン屋さんで香水をプレゼントしてくれた22歳の誕生日、車の中から見える景色、お台場横丁の駄菓子屋とへっぽこなボウリング。

そして「メダルゲームと海で整った体感サウナ」

大好きな場所の大事にしたい思い出が増えた土曜日でした。

あっという間に4月、季節に置いていかれてしまわないようにまたもがいてみようと思います。




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