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ヘッドスタート・フォー・ハピネス/ザ・スタイル・カウンシル Headstart For Happiness / The Style Council

上京した年の6月、ザ・ジャムを日本青年館に観に行った。
3人で疾走する様が最高にカッコよかった。
それからほどなくしてザ・ジャムは突然解散した。
残念に思っていたら、新しくユニットを組んだというニュースが流れてきた。
今でこそユニットという言葉は馴染みがあるが、当時は
「メンバー2人?ぜんぜん足りないじゃん。誰が何の楽器やるの?」
という感じだった。
新宿の輸入レコード屋さんでファーストシングルの7インチを買ったら普通に後期のザ・ジャムみたいだったので肩透かしを食らった。

これなら解散しなくてよかったんじゃない?

しかし2枚目の12インチシングルはびっくりした。
ファンクだ。しかもB面はネオアコだ。
そうか、こういう自由度の高い音楽をやりたかったんだな。
いろいろやるのにはユニットという形態がフレキシブルでやりやすかったんだなと妙に納得したのを覚えている。

当時俺はF原さんの部屋に入り浸っていてほぼ一緒に暮らしていたが、F原さんの高校時代の女友達もG大駅に住んでいて、I原君という男と付き合っていた。
俺とF原さん、F原さんの女友達とI原君の4人は商店街でよくばったり顔を合わせた。
このI原君と言う男がなかなか粗暴な印象のある男で、同じ地元の不良高校に通っていた。俺は進学校。
高校時代に別々のバンドで対バンライブに出たりしていたが、なるべく近くに寄らないようにしていた。まさか上京して交流することになるとは思っていなかったが、付き合ってみたら非常に優しい繊細な男だったことが分かった。
I原君から

「俺君、スタイル・カウンシルみたいなユニットやろうぜ」

と誘われていたが、まだ少しI原君が怖かったのと、仕事が忙しくなかなか取り組めなかった。
今では年に数回、K崎君とI原君とはBBQなどをしている間柄だ。
I原君は高校時代、K崎君とバンドをやっていて、ギターを弾くのだが、これが何とも評価の難しいギターで、俺はリチャード・ロイドに似ていると思っているが、K崎君はジミヘンのライブを聴いて「あ、I原君のギターに似てる」と言った。
そういうとすごく上手いと思うかもしれないが、そうではなく、なんというか自由なのだ。
何年かギターを弾いているとスケールを気にしだしたり、弾いちゃいけない音が気になったりするのだが、I原君にはそういう概念はない。

とにかくフリーなのだ。

ややもすると、ギターを持っているのに弾かなかったりもする。
究極のギターとは弾かないことだったりするんじゃないかと本気で思えてくる。
音を外さないようにビクビク弾いている俺は、そういうI原君のギタースタイルをいつも羨ましく思う。

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