RNRLL / ロックンロール・ラブレター

ロックンロールおじさん、ロックンロールおばさんに捧ぐ。自分が経験してきた田舎の音楽事情…

RNRLL / ロックンロール・ラブレター

ロックンロールおじさん、ロックンロールおばさんに捧ぐ。自分が経験してきた田舎の音楽事情をつらつらと書き連ねます。難しいことは書けません。うろ覚えの部分もあるのでご容赦を。こんなものに何の価値があるのかわかりませんが、自分の音楽遍歴確認と妻へのラブレター、家族への遺書も兼ねてます。

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はじめに

ロックンロールおじさん、ロックンロールおばさんに捧ぐ。 S県の田舎町で育った。町には1軒だけレコード店があり、川を渡った隣町にも1軒レコード店があったがこのレコード店は半分が時計店だった。 そんな田舎町だったので入ってくる音楽情報も2~3年ぐらい遅れていた。 電車に乗って一番近い「K市」に行くと、大きなレコード店が3軒ほどあり、そこでは音楽情報の遅れは1〜2年だった。 昭和の50〜60年代はこういう地方の田舎町が日本中至る所にあって、見てきた物、聴いてきた物、経験してきた事

    • ティアーズ・イン・ヘヴン/エリック・クラプトン Tears In Heaven / Eric Clapton

      F原さん(俺の名字になったので今後は「妻」と表記)と結婚してアパートを借りて、一緒に住んでしばらくすると子供ができた。 二人で大喜びして産まれてくるのを今か今かと待っていたが、ある時病院に呼び出された。 どうも気になる影があるという。 地元の大学病院で検査を勧められた。 検査の結果、お腹の赤ちゃんの腎臓に水が溜まっていることが分かった。 医者が言うことにはちゃんとお腹の中で育たないかもしれない。 もし育っても産まれてこれないかもしれない。 産まれてきても重度の障害が残る可能性

      • ランニング・アウェイ/カラーフィード Running Away / The Colorfield

        実家に戻って生活して3カ月ほど経った頃、新聞広告の求人欄を見て広告代理店の面接を受けてみることにした。 全く未知の仕事だったが、応募資格に大卒の記述が無かったので、とにかく受けてみようと思った。 業界のことは全く知らなかったが、名古屋本社でそこそこ大きな中堅どころの代理店だと後から知った。 現地採用なので希望しない限り転勤は無く、H市の駅前に事務所があって始業時間が9:30だった。 普通の会社は9:00だったから朝が遅いのは助かる。 あとで聞いた話だが、採用1名に対して応募し

        • 終わりなき旅/U2 I Still Haven't Found What I'm Looking for / U2

          故郷に帰るのを前提に東京のPA会社に勤めていたが、当時の音響業界はとても立場が低かった。 コンサートの全体予算からまず出演者のギャラが支払われる。当然だ。 次に会場、舞台関係が優先的に予算を取る。 そのあと照明が予算取りして、最後に残った予算で音響関係をなんとかやり繰りする。 その結果、労働環境は最悪なものとなる。 正直ある程度覚悟はしていたものの、あまりの給料の安さに音を上げた。 ここまで酷いのかと。 まだ何もできないのだから安くて当たり前と言えば当たり前だが、暮らして行く

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        • 1990年代(会社員)
          1本
        • 1980年代(高校生以降)
          25本
        • 1970年代(小学生~中学生~高校生)
          5本
        • 雑感
          3本
        • 1960年代(幼少期)
          1本

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          時そば/古今亭志ん朝 Tokisoba / Kokontei Shinchou

          80年代前半、東京に住んでいた時、時間とお金があると通っていたところが3ヶ所ある。 新宿ロフトと新宿末広亭と六本木WAVEだ。 G大駅の駅前レコード店に通っていた時、長兄さんに勧められて落語を見るようになった。 高校時代に読んでいたロッキンオンの松村雄策さんの影響もあったかもしれない。 もともと漫才ブームを経由していて、お笑い演芸は好きだったので試しにと聞いてみたらずっぽりハマってしまった。 新宿の末広亭という寄席によく行っていた。 昼の部12時から4時半まで、または夜の

          時そば/古今亭志ん朝 Tokisoba / Kokontei Shinchou

          ベートーヴェン弦楽四重奏15番 Beethoven: String Quartet No. 15

          80年代前半、東京に住んでいた時、時間とお金があると通っていたところが3ヶ所ある。 新宿ロフトと新宿末広亭と六本木WAVEだ。 80年代の一時期、六本木のシネヴィヴァン(CINE VIVANT)に通っていたことがある。ちょっと難解な雰囲気のアート系の映画にあこがれていた時期だったのだ。 それがナウかったのだ。 映画や音楽やアートなど薄っぺらく広く浅く見て廻っていたのだ。 意味不明なシーン、細切れの音楽、美しい風景のつぎはぎ、そんなものをひどくカッコよく感じていた。 だから

          ベートーヴェン弦楽四重奏15番 Beethoven: String Quartet No. 15

          恋のダイヤル6700/フィンガー5 Koi No Dial 6700 / Finger 5

          もうじき16歳の誕生日を迎えるという高校1年生の2月の寒い日、 俺は親戚のおじさんからもらった銀色のポルシェのジャンパーを着込んで、 家の近所の駅前の公衆電話からF原さんに電話して付き合ってほしいと告白した。 すでにバンドを一緒にやっていて仲良くしていたとはいえ、付き合うとなれば話は別だ。 指の震えを抑えつつ、俺はダイヤル回したよ。 君のテレホンナンバー〇〇〇〇 うわぉー! まさにこの曲の気分。 「はい、F原です」 ヤバい。 お父さんじゃん! 怖い。 「あ、あの、えーと

          恋のダイヤル6700/フィンガー5 Koi No Dial 6700 / Finger 5

          ダンス・ダンス/ザ・シェイクス Dance Dance / The Shakes 

          80年代、東京に住んでいた時、時間とお金があると通っていたところが3ヶ所ある。 新宿ロフトと新宿末広亭と六本木WAVEだ。 俺はややメジャー寄りのポップな音が好きだったので、そういう音を聴きたいときには渋谷エッグマン、テイクオフセブン、原宿クロコダイルなどのライブハウス巡りを楽しんでいた。 T本君などは屋根裏あたりのハードコアを観に行っていて、今日は客同士の喧嘩に巻き込まれたとか、楽し気に話してくれた。 当時のライブハウスはとにかく汚いところが多かったし怖かった。 それをま

          ダンス・ダンス/ザ・シェイクス Dance Dance / The Shakes 

          ホエン・ラヴ・ブレイクス・ダウン/プリファブ・スプラウト When Love Breaks Down / Prefab Sprout

          PA会社で仕事をしていた時は、勤務時間がとても不規則になった。 土日はイベントやコンサートがあり、朝早く家を出て、帰りは夜12時近くなった。 銭湯はもう終わってしまっていたので2〜3日風呂に入らないこともしばしばだった。 事務所は渋谷にあったが、機材などの倉庫はK県K市にあって、週の前半は土日に使用した機材のメンテナンス、後半は週末に向けての機材の準備をしていた。 他の会社と同様に先輩たちがまだ仕事をしているのに先に俺が帰るのは憚られた。 ある日どうしても新宿でコンサートを見

          ホエン・ラヴ・ブレイクス・ダウン/プリファブ・スプラウト When Love Breaks Down / Prefab Sprout

          テンプテッド/スクイーズ Tempted / The Sqeeze

          焼肉店でバイトをしていたある日、故郷の広告代理店に勤めるS藤先輩から電話がかかってきた。 「俺君、音響の学校は卒業したんでしょ?」 「はい」 「田舎に帰ってきて音響の仕事する気ない?東京に本社があるんだけど、こっちに支社があってさ、人手が足りなくて困ってる会社があるんだ。よかったら東京本社に1〜2年勤めて、ゆくゆくはこっちに帰ってくるっていうのはどう?」 悪くない話だった。 F原さんと一緒に楽しく暮らしていたのでどうかとも思ったが、 相談してみたらF原さんはそろそろ故郷に

          テンプテッド/スクイーズ Tempted / The Sqeeze

          ガールフレンド・イズ・ベター/トーキング・ヘッズ Girlfriend Is Better / Talking Heads

          1984年、TEACというメーカーからPORTA ONEというマルチトラックレコーダーが発売された。 マルチトラックレコーダーとは音を重ねて多重録音できる音響機器で、レコーディング用のプロ機器は存在していたが、趣味レベルの物は無かった。 録音する媒体はカセットテープだった。 この後、MDやCD、ハードディスクへと録音媒体が進化し、パソコンでの録音に変遷していく。 この製品の前にPORTA STUDIO244という名機が発売されていて欲しくてたまらなかったが、値段が198000

          ガールフレンド・イズ・ベター/トーキング・ヘッズ Girlfriend Is Better / Talking Heads

          ビールス・カプセル/シーナ&ザ・ロケッツ Virus Capsule / Sheena And The Rokkets

          2回目のバンドの練習中、T野さんは何を思ってか俺に向かって 「俺君はギター弾いてみてよ。僕がベース弾くから」 と自分が持っていたナショナルのギターを俺によこした。 ベースとしてバンドに加入したけど、そもそもギターが弾けるからと言ってバンドに入ったから俺がどんなギター弾くのか知りたかったみたいだ。 T野さん 「曲は何がいい?」 俺 「う~ん、3コードの簡単なやつがいいですね」 T野さん 「じゃ、シナロケのビールス・カプセル知ってる?」 俺 「はい、知ってます(得意です)」 T

          ビールス・カプセル/シーナ&ザ・ロケッツ Virus Capsule / Sheena And The Rokkets

          デイ・トリッパー/ザ・ビートルズ Day Tripper / The Beatles

          初めてのバンド練習の日が来た。 俺は他のメンバーたちみたいな奇天烈な衣装は持ってないので、父親からもらった一張羅のダークグレイのIVYスーツのパンツを細く詰めたやつ(服飾専門学校に行った人に縫製をやってもらったら、カッコいいスーツだと褒めてくれた)の襟のところにSTIFFレコードのバッジを付けて行った。 「お、渋いね、三つボタンスーツにSTIFFか」 Hさんは目ざとくバッジを見つけて話しかけてきた。 やっぱり分かるんだな。 当時はまだ三つボタンはポピュラーではなくて、

          デイ・トリッパー/ザ・ビートルズ Day Tripper / The Beatles

          グロウ・オールド・ウィズ・ミー/ジョン・レノン Grow Old With Me / John Lennon

          不肖私、RNRLLは本日をもちまして還暦を迎えました。 高校3年生の時、学校帰りの本屋で立ち読みした週刊プレイボーイには、「俺たちは55歳までしか生きられない!」と言う特集が組まれていた。 食べ物や病気や気候変動などで日本の環境が厳しくなり、日本人の寿命はどんどん短くなるという記事だった。 たしかに子供の頃から発がん性物質ガンガンに入ってる毒々しいお菓子いっぱい食べてきたからな。 なぜかその特集がずっと心のどこかに引っかかっていて、無意識に俺は55歳までしか生きられないんだ

          グロウ・オールド・ウィズ・ミー/ジョン・レノン Grow Old With Me / John Lennon

          トンネル天国/ザ・ダイナマイツ Tonneru Tengoku / The Dynamites

          駅前のレコード店に出入りしているうちに、いつも来る常連さんたちと少しづつ仲良くなってきていた。 ある日、いつものようにレコード店内でいろいろレコードを試聴させてもらっていると、常連のお客さんのT野さんがお店に入ってきてお店の長兄さんにこう言った。 「ねえ、誰かベース弾ける人知らない?」 「う~ん、ちょっと聞いてみないと分かんないな~」 そこでT野さんは振り向きざまに俺に向かって言った。 「お兄さん、ベース弾ける?」 「あ、ギターなら弾けるんですけど」 「おお、いいよいいよ、ギ

          トンネル天国/ザ・ダイナマイツ Tonneru Tengoku / The Dynamites

          売り物ブギ/ダウンタウンブギウギバンド Urimono Boogie / Downtown Boogie Woogie Band

          小学校5年から6年になる春休みに家族でスキーに行った。 N県M市の親戚の家から車で出かけてO町のスキー場に着いた。 父親がN県の出身だったこともあって毎年スキーをしていたが、 当時S県の自分の周りにはスキーをやる人はもちろんいなかった。 少し自慢もあって俺はスキーが好きだった。 その日も調子良く滑っていたのだが、 「もう日も傾いてきたのでそろそろ帰るぞ」と父親が言うのを遮って 「もう一本だけ滑っていい?」 「もう帰らないと」 「いいじゃん、もう一回だけ」 「もうしょうがないな

          売り物ブギ/ダウンタウンブギウギバンド Urimono Boogie / Downtown Boogie Woogie Band