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風の谷のナウシカ/久石譲 Nausica A Of The Valley Of The Wind / Joe Hisaishi

U村さんと初めて一緒に銭湯へ行った帰りにK崎君のアパートに寄った。
K崎君は地元の友人で上京してからも近所のアパートに住んでいた。
K崎君はF原さんと幼馴染なので共通の友人だったのだが、U村さんを見せびらかしたい思いもあり、わざわざK崎君のアパートの近くの銭湯に二人で行ったのだった。
K崎君は俺がF原さんではない女性と一緒で、なおかつ銭湯帰りということで少し驚いたようだが、「あ、そういうことね」みたいな感じで察してナチュラルに対応してくれた。

彼は寿司屋だからか手先が器用で、手品の腕がかなりのものだった。
二人に新しく仕入れた手品を見せてくれ、U村さんは「すごーい」と感心していた。
K崎君も受けたので満更でもなさそう。
U村さんのことも気に入ってくれたようだ。

K崎君は地元でも有名な面食いで、高校時代は1学年下の学校のマドンナを彼女にしていたし、可愛い子は自分の勤めている寿司屋に呼んで寿司をご馳走するという飛び道具を持っていたのでモテていた。
時には握っている寿司の卵焼きを得意の手品で手の平から消したりしていた。
そりゃ女の子にはウケるわ。

ズルいね。

さて、そろそろ帰ろうかとなったところでU村さんが目を留めた。
「K崎君、これナウシカのビデオ?」
「そうだよ、面白いよ」
「見たい見たい」
「いいよ、持って行って」
「やったー、見たかったの」

前にも言ったけどK崎君は情報誌をよく読んでいて、いろんな最新情報に詳しい。
U村さんは感度高いニューウエーブ少女なのでこういうことには目ざとい。

俺一人だけポカーン。
え?アニメ?
そんなの見たいの?

そんなことより早くアパートに帰ってU村さんとイイコトしたい俺は生返事で
「ありがとな、借りてくよ」
とは言ったものの(これ今から見るのかな、何分あるんだろ)と気が気じゃない。

アパートに戻って色々話などして、さてそろそろ・・・、と思ったのだが、肝心のU村さんがナウシカのビデオを夢中になって見ていて全然こちらに来てくれない。
(はあー、こんなアニメなんか借りて来なけりゃ良かった。おい、ナウシカよ、余計なことしてくれたな!)と心の中でナウシカに悪態をついたのだった。

なんやかんやで翌日U村さんが帰った後、一人で何気にナウシカを見始めたのだが、これが面白くて止まらなくなった。

えええええええええええ!
何これ?
めちゃくちゃ面白いじゃん。

結局内容もさることながら、テーマ曲、BGMなど、無国籍な旋律やライブな音の響きのピアノなどもかなり気に入り、ビデオからカセットテープに無理やりダビングして、一時期ヘビーローテーションになった。
ビデオからのダビングなのでセリフも丸々覚えてしまった。

今でもこのアニメを見るとU村さんと行った銭湯の帰り道を思い出して少し泣ける。


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