見出し画像

アンゾフの成長ベクトルを活用して新規事業を立ち上げたガソリンスタンドの成功事例

1.はじめに


 現代の競争が激しいビジネス環境において、企業が持続的な成長を遂げるためには、戦略的な思考が不可欠です。ロシア系アメリカ人の応用数学者であり、「経営戦略の父」と称されるイゴール・アンゾフが提唱した「アンゾフの成長ベクトル」は、その指針となる重要な考え方です。

 本記事では、アンゾフの成長ベクトルの「新製品開発戦略」に焦点を当て、ガソリンスタンドの果物販売という事例を通じて、新規事業立上げの留意点をご紹介します。

2.4つの戦略とその特徴

 アンゾフの成長ベクトルは、市場(顧客層)と製品・サービスという2つの軸を組み合わせることで、以下に示した4つの戦略を導き出します。

 以下で4つの戦略の特徴を述べていきます。

(1)市場浸透戦略

 既存の顧客へ既存の製品・サービスをより多く販売することで、事業を成長させる戦略です。例えば、 X市に立地するガソリンスタンドが、X市の住民という既存顧客へ、現在取り扱っている油外商品をさらに販売するケースが挙げられます。

(2)新市場開拓戦略

 新規の顧客へ既存の製品・サービスを販売することで、事業を成長させる戦略です。例えば、 X市に立地するガソリンスタンドが、隣のY市に新店舗を開設し、Y市の住民という新規顧客に、現在取り扱っている油外商品を販売するケースが挙げられます。

(3)新製品開発戦略

 既存の顧客へ新規の製品・サービスを販売することで、事業を成長させる戦略です。例えば、 X市に立地するガソリンスタンドが、X市の住民という既存顧客へ、これまで扱っていなかった電気自動車用の充電サービスを販売するケースが挙げられます。

(4)多角化戦略

 新規の顧客へ新規の製品・サービスを販売することで、事業を成長させる戦略です。例えば、X市に立地するガソリンスタンドが、隣のY市に新店舗を開設し、 Y市の住民という新規顧客に、これまで扱っていなかった電気自動車用の充電サービスを販売するケースが挙げられます。

 ここからは、上記(3)新製品開発戦略を展開したガソリンスタンドの事例を見ていきます。

3.ガソリンスタンドにおける新製品開発戦略の事例

 ある地方都市に立地するガソリンスタンドは、経営者の実家が果物農家であることを活かし、既存の顧客へ新規に果物を販売することで事業を成長させることにしました。これは、店頭やネットで予約を受付けて、果物が収穫できたら、その旨を連絡し、店頭で商品を手渡しするという仕組みです。これには、以下のようなメリットがあります。

「店頭で渡すことがポイントだど『わだす』は思う」

 まず、車両に関連する収益の拡大が期待できます。予約した人の多くは、同店に車で訪れて、果物を受け取ります。そのため、ついでに給油や洗車をしたり、タイヤ、車検、保険などの他の商品やサービスにも興味を持ってもらえる可能性があります。

 次に、車両に関連しない収益の確保が期待できます。果物は、車両とは関係のない商品であり、収益の多様化や安定化に寄与します。また、果物は季節性が高く、毎年新鮮な魅力を発信できます。

 さらに、このような新規事業のテーマは、行政の中小企業支援制度のひとつである「経営革新計画」のテーマに該当することが多いです。

4.経営革新計画を活用した事業展開

「新規事業を展開する場合は、経営革新計画の承認をとるといいんだっきゃ」

 経営革新計画とは、中小企業が「新事業活動」に取り組み「経営の相当程度の向上」を目的に策定する、中長期的な経営計画書です。

 経営革新計画を策定する際には、商工会や商工会議所、市区町村役場を通じて計画策定の専門家を無料で活用することが可能です。

 この経営革新計画が、都道府県の審査を通過すると、都道府県知事の署名入りの承認書がもらえます。これによって、融資条件が優遇されたり、投資や補助金の支援を受けたりすることができるなどのメリットがあります。

 そして「■■知事が承認した計画に基づくフルーツの予約受付中!」という告知も可能になり、顧客の信頼度が高まると言えます。

 なお、このように新製品開発戦略を展開する場合には、いくつかの留意点がありますが、そのうち重要なものを以下で述べていきます。

5.新たな競合との差別化戦略

 新製品開発戦略は、新たな製品・サービスを取扱うことから、新たな競合他社が生まれることになります。上記の例で言えば、それまではガソリンスタンドやタイヤ量販店、カーディーラーが競合でしたが、新製品開発戦略をとったことで、地元の食品スーパーや果物のネット通販事業者も競合になり得ます。

 よって、新たな競合との差別化を図ることが必要です。地域密着型ガソリンスタンドの差別的優位性として確保したいのは顧客との関係性です。日頃から顧客との会話を心がけ、顧客ニーズに沿った対応を心がけるようにしましょう。

「競争さ勝だねば、まいね」

6.まとめ

 今回の記事では、イゴール・アンゾフが提唱した成長ベクトルの中から、新製品開発戦略について具体例を交えて解説しました。ガソリンスタンドが果物販売を通じて事業を拡大する取り組みは、既存の顧客基盤を活用しつつ、新たな収益源を確保する事例です。

 また、経営革新計画の活用により、公的な支援を受けながら事業展開を進めることも可能です。このような戦略を採用することで、ガソリンスタンドはさらなる成長と安定した収益確保を目指すことができるでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?