夜 いつものように
改札を足速に抜けると

いきなり耳に 美しい鳥の囀りが
飛び込んできた

私はドキリとした

思わず足を止めて
声の方向を探した

その間
囀りは私をからかうかのように
とまったり　また始まったりした

いた！

駅の名前を照らすスポットライトの
上に声の主はいた
大きさはわかるけど姿はよくみえない

見つめ続けると
よく見つけましたと言わんばかりに
彼はもう一度 鳴いてくれた

本当に美しい声である
独り占めするのが惜しいくらいだ

ふとあたりを見回すと
鳥の声なんか
誰も聞いていない

足速に家路を急ぐ人ばかりだ

みんなどうしちゃったんだろう？
こんなに綺麗な声なのに
こんなに近くで鳴いているのに

聞こえないのかな？
見えないのかな？

私もさっきまで急足だったけど
みんなと違う世界に迷い込んでしまったようで
戸惑った

そしてどうにか
スマホから視線を外して
鳥の方向を眺めている女性1人と

声には気がついて
まだ鳥を探し中のような
男性1人を見つけ

安心した
声をかけたりはしないけれど
あの囀りに気がついた人が他にもいて心底嬉しかった

家に帰ってから鳥の名前を調べた
懐かしい鳥の名前が出てきた
イソヒヨドリ

随分昔、家の周りで見かけた青っぽい鳥のその囀りのあまりの綺麗さに一生懸命調べたんだった

子ども達もまだ小さくて
あのころは平和で幸せだったな

イソヒヨドリは声も綺麗だけれど
背中の色が青みがかっていて
幸せの青い鳥ともいわれている

ここのとこ私はちょっぴりくたびれてるけど、夜の暗闇の中でもイソヒヨドリを見つけることができたんだと思うと、それはそれで誇らしくもある