牛になった先生
初めて牛歩戦術を見た時は
ショックだった
考え得る戦術があのようなものしかないのか
子供の目から見ても
優れた戦術には思えなかった
まとまって皆が同じ戦術をとっているのだから
その場においては最強と思われているのか
それが賢い大人たちの出した答えなのか
なるべく前に進まないように頑張りながら
それでもゆっくりゆっくり前に進んでいく
そんな消極的な前進が何かを決めるため
何かを決めないための有効な戦術なのだ
壊れた秒針のように挟まった昆虫のように
同じところに止まっているようで
よくよく見ればゆっくりとある方向に進んでいる
一度入ったら決して逆行することは許されない
得体の知れない輪の中に取り込まれた
大人たちの横顔がどこか悲しげに見えた
「嫌だよー!」
本当は行きたくなかった
保育園へと引っ張られる強い力
大きな手をふりほどくことは
とてもできなかった
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