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社長室ハガキで顧客体験価値を高める

[要旨]

マナラ化粧品を販売する岩崎さんは、顧客からハガキや電話で届く、製品の改善要望を、製品の改良に反映させることで、顧客体験価値を高めています。このような、顧客からの要望を集める活動は、従来はコストと考えられがちでしたが、現在は、顧客体験価値を高めるための創造的な活動であると考え、積極的に取り組むことが妥当と言えるでしょう。

[本文]

今回も、前回に引き続き、株式会社ランクアップの社長の岩崎裕美子さんのご著書、「ほとんどの社員が17時に帰る売上10年連続右肩上がりの会社」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、会社の職場環境が、長時間労働にならないようにするためには、販売する製品が価格競争に陥り、利益を得るために、従業員がたくさん売上を得なければならなくなることのないよう、競争力の高い、差別化した製品を開発しなければならないということについて説明しました。

これに続いて、岩崎さんは、顧客からの要望に真摯に応えることが重要ということについて述べておられます。「自分で言うのもなんですが、私たちってとっても親切で丁寧なんです。(中略)お客様からの意見に耳を傾けるために、社長室ハガキを、製品と一緒に同梱しています。(中略)毎月、500~1,000枚ほど(お客様から)届くこのハガキを、私はもちろんのこと(中略)、美容相談室、製品開発部、カスタマーサービス部、販売促進部など、多くの社員が目を通します。

お返事が必要なお客様には、美容相談室やカスタマーサービス部から、1人ひとりにお返事を書いています。(中略)昨年は、『ホットクレンジングゲル』の容器を改良しました。ホットクレンジングゲルは、チューブ容器なので、出口の端の角部分にゲルが残りやすく、最後まで使い切ることが難しかったのです。そのため、毎日のように、お客様から、『最後まで使えるようにしてほしい』と、容器改良のご指摘をいただいていました。(中略)そして、昨年、とうとう改善でき増した。

容器の出口部分を指が入るほど大きくして、最後までしっかり指でかき出せるようにしたのです。この改良で、あれほど多かった、『最後まで使えない』という声は、なんとゼロになりました。(中略)ここまで改善にこだわるのは、社内にコールセンターがあったおかげです。社員は、自分たちが、コールセンターで、お客様対応をしていたので、お客様から、『どうして変えられないの?』と聞かれるのがとてもつらく、お客様の不便な気持ちが本当によくわかるので、なんとかして改善して差し上げたいと思うのです」(58ページ)

この、岩崎さんの実践している、顧客の要望を製品改良に反映させるという対応は、多くの方が理解される一方で、そこまで実践することは労力が大きいと考える方も多いと思います。ただ、私は、岩崎さんが意識していたかどうかは分からないのですが、この顧客の要望を製品改良に反映させることは、CX(顧客体験価値)の実現であると考えています。そして、化粧品のような嗜好品は、このようなCXを高める対応は効果が大きいと考えています。したがって、ハガキや電話で顧客の要望をきくという活動そのものが、価値の向上になっていると思います。

ただ、顧客の要望を取り入れるという活動は、現在でも、受動的に行っている会社が多いのではないかと思います。確かに、製品によっては、このような活動はなじまない場合もありますが、これからは、顧客との接点を増やすことの重要性は高まっていると思います。でも、現在でも、事業活動は製品をつくることや、商品を販売することが中心であると考えている経営者の方は多いと思います。しかし、顧客体験価値と高める活動であると考えると、単に、価格競争や、性能の向上などといった、従来の狭い意味での製品や商品の枠を超えた部分での差別化を図ることができるようになると、私は考えています。

2023/8/10 No.2430

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